私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。㉞)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は7/27(土)投稿予定です。
「で、でもここは勝手に外出出来ないですよ?」
「それなんですよねぇ。」
バルバラの戸惑った声にティリエスは直ぐ様答える。
ここの夜の巡廻が忽然となくなったが、これがずっと続くのか分からないし、出た途端バレたらどうなるのか見つかれば拘束があるのか、まぁ正直嫌な方向になる可能性はあまり考えたくない・・・が。
「でも、バルバラさんの記憶がないと思った時期が何時の時に起こった事なのか調べるのであれば、最初にいた場所から調べるのが良いのではなくて?闇雲にあちこちを探せば記憶も混乱するのではないでしょうか?」
「言われたら・・・そうかもしれない。」
思い当たることがあるのかバルバラは素直に答える。
「まぁ、きっかけもふとしたことで起こることが多いですし、こればっかりは手探りですけどね。」
「あ!それなら私自身覚えがあります。」
バルバラがハッとしたように思い出す。勢いがあったのでカップのお茶がチャプっと揺れたがこぼれる事はなかった。
「そうなんですの?」
「はい!実はティリエスさんが女神の子のお話しをしてくださいましたよね?」
「えぇ、確か少し前に伺ったお話しですわね?」
彼女の覚えている内容と本の内容の違いに変だなと思ったあの日のことを思い出す。
「あの時、誰かから聞いた話しなのに一体誰にこの話しを聞き覚えたんだろうって思った時、私思い出せなかったんです。その時に私の記憶が変なんだと思いました。」
「そうだったんですか。」
成程、私との会話がきっかけだったのか・・・ということは、あの本がきっかけか。
無言で渡してきたクレメンスの顔を思い出していると扉がノックなしに開けられ、ティリエス達は同時にびくりと肩を揺らした。
「遅くなりました。」
「・・・ちょっとレイラ、ノックぐらいしてもらえます?驚きますわ・・・あら?。」
振り向いて不満を言っていたティリエスだったがレイラが肩に抱えている人物に目がいった。
レイラは雑にその人物をもう一つのベッドに下ろし横にした。
「クレメンス?!」
横たわっている人物の名を呼びバルバラはカップをサイドテーブルにこぼれることを気にするそぶりもなく乱暴に置いた後、クレメンスの元へ駆け寄った。
「彼女はどうかしたんですか?」
「どうやら、ひどく疲労していたようで向かった時にはすでに意識がありませんでした。」
「そう、ご苦労様。ホルアクティもありがとうう。」
パタパタと飛んで降りてきた己の霊獣であるホルアクティに礼を言うと、彼はつぶらな瞳をウィンクさせた。
「で、何か話しは進んで?」
「いやぁそれなんですけね、どうも少し厄介かもしれません。」
「へぇ・・・その厄介。聞いてみませんとわかりませんからお話ししてもらえます?」
ティリエスの難色を見せた様子とは打って変わり満笑で問いただすレイラにティリエスは若干嫌なことが起こりそうだと内心震えた。
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