私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。㉜)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は7/23(火)投稿予定です。
どこ行ったんだろ・・・意外とバルバラさん足早い・・・あ、居た居た。
一方その頃、ティリエス達はバルバラの後を追いかけ、不自然に開いていた扉に気がつき中を見れば部屋の隅で蹲っている彼女を見つけた。
顔は見えないが啜り泣く声は聞こえるので、恐らく泣いているのだろう。
ティリエスとレイラは互いに顔を見合わせた後、彼女に近づいた。
「バルバラさん・・・大丈夫ですか?」
ティリエスはしゃがんで彼女に呼びかけると、ようやくティリエス達の存在に気がついたようで彼女は振り返る。
案の定の涙で顔がぐしゃぐしゃになっていた。
「ディリエズざんっ・・・!」
「うーんまぁ、大丈夫じゃないということは分かりましたわ。取り敢えず、落ち着きましょうか・・・私達の部屋に行きましょうね。」
泣き止まないバルバラが断るかと思ったがよほどいっぱいいっぱいだったのか、彼女はしゃくりながら小さく頷き私達についてきた。
部屋に着きランプに火を灯した後、動かない彼女の手を引きベッドに座らせると、ホルアクティに事情を伝えるようにレイラに言付けを頼む。
最初は渋る彼だったが鍵を自分が来るまで開けないように約束をして、ようやく部屋を後にした。
「全く・・・レイラも心配性ね。私が変なことをすると思っているのかしら?」
保管しておいたお茶を注ぎ、いまだにグズグズ言っているバルバラにお茶を差し出す。
無言だが彼女はお茶をそのまま受け取る。
そんな彼女を見ながら自分も彼女の隣にお茶の入ったカップを持ちながら座った。
う〜ん・・・正直に思っちゃうと部外者の私がどこまで彼女達のことに首突っ込んでもいいのか・・・聞いてもいいのかちょっと考えちゃうけど・・・まぁ、言いたくなかったら言わないだろうし・・・いっか、聞いてみよ!
「実は・・・ほんの一部だけなんですけど、バルバラさんが何かクリメンスさんに詰め寄るような言葉を聞こえてしまいまして・・・何があったのか聞いてもよろしいでしょうか?」
お茶を飲んで先ほどより少し落ち着きを取り戻したように見えるバルバラに声をかけるとバルバラは黙り込む。
そんな彼女に別段急かすこともな同じようにお茶を啜るティリエスはホッと息をついた後チラリと隣の彼女を見る。
うーん・・・まぁ、そんなすぐに話してもらえるわけないかぁ。
「グスっ・・・ティリエスさんに変な話しをしちゃうけど・・・それでも良い?」
え?寧ろ話して下さるの?
「えぇ、私でよければ聴きますわ。」
思いの外、すぐに話してれる姿勢を見せてくれたバルバラに少しだけ驚いたが、ティリエスはすかさず頷くと彼女は少しだけ安心した顔を見せた後、乱暴に涙を片手で拭った後表情を固くした。
「最近になって分かったんです、私に記憶がないって言うことが。」
「記憶が・・・ですか?」
「はい、全てではありませんが・・・私、2年より前の記憶がほとんど思い出せないんです。」
キュッとカップに力を込めてバルバラは絞り出すようにそう言い切った。
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