私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。㉛)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は7/21(日)投稿予定です。
え?あ、どうしよう??
ここから出ていくバルバラの後ろ姿と追いかける素振りも無いクレメンス両者を交互に見ていく。
先ほどの会話の内容に何がどうなのか今ひとつ分かっていないけど。
クレメンスさんにようやく聞きたいことが聞ける、でもバルバラさんも心配。でも、バルバラさんを追いかけたら今度はクレメンスさんに今度何時会えるのか分からない。
バルバラを追いかけるか、それともクレメンスに事情を聞くべきか・・・ヤバい、どっちだ?どっちにすべきだ?
オロオロとティリエスがどうするか悩んでいると、ホルアクティの羽音が聞こえてきたので動かして交互に彼女達を見ていた身体をぴたりと止めた。
ホルアクティがティリエスの眼前で止まる。
「お嬢はん、お嬢はんは出て行った子の方が気になっとるんやろ?」
「え?」
「せやから、用事よりそっちが気になるんやろ?ワイ、あの子と一緒におるから行って来てええよ。」
「でも・・・。」
「大丈夫やで、ちゃんとあの子と一緒に待ってるさかい。」
「・・・・・・レイラ。」
「かしこまりました。」
ホルアクティの言葉に、ティリエスは頷き、レイラに荷物を出すように伝える。
食料の入ったカゴを入り口の机に置いた。。
「ホルアクティ、お留守番お願い。」
「任せんしゃい!気をつけてな!兄ちゃんも気をつけてな!」
「うるさいぞ鶏。お前だけで食べるなよ。」
小言を言い去るレイラとティリエスの後ろ姿が見えなくなるまで見送ったホルアクティは机にポトリと着地する。
「う〜〜んしょっ!」
ごちりとカゴに頭をつけ、そのまま前進する。
「う〜〜ん・・・ワイのぷりちぃオケツが見れる絶好の機会やのに誰も見とらんのがちょっと寂しいわぁ。」
ぷりんぷりんとお尻を目一杯動かし彼にとって不釣り合いな大きなのカゴを押して動かしていく。長机のおかげもあり時折置いてある書物さえどうにかすれば特に障害もなくクレメンスのいる場所の近くまで押す事ができた。
クエメンスのいる奥までやって来たホルアクティはぴょいっとカゴの縁に飛び乗りいつの間にかその場で座っているクレメンスと目があった。
「初めまして!ワイ、お嬢はんの霊獣でな!ホルアクティって言うんや!よろしゅうおたの申します!」
右の羽を上げてホルアクティは自己紹介をするがクレメンスは全くと言っていいほど微動だにしなかった。
「やっぱり、ワイが喋る事驚かんのやねぇ。」
どこか納得したようにホルアクティは呟くとクレメンスは急に睨んできたが、ホルアクティは気にせずカゴの上に被せてある布を器用に嘴で取り去る。
そこには水や食料である美味しそうな野菜やチーズなどを挟んだパンとクッキーが所狭しと中に入っていた。
その中のクッキーを一つ嘴で取るとクレメンスの膝の上に降り立ちそのままポトリとクッキーを置いた。
「とりあえず食べなあかんよ。」
優しい口調だが有無を言わせないとホルアクティはジッとクレメンスを見つめた。
「あの子をずっと守って来たんやろあんさん。せやったら食べて力つけないとあかんよ。自分でも弱っているのは分かっているやろ?」
その言葉にクレメンスは目をうろうろさせて動揺を見せる。
「そうやないとあの子守れないで。」
キッパリと言われたホルアクティの言葉にクレメンスは何か思い当たることがあるのかその場で項垂れる。そんなクレメンスにホルアクティは羽で膝を撫でた。
「大丈夫やで、お嬢はんはあんさんの味方や。大丈夫やで、ちゃんと力になってくれるわ。」
全てを理解しているようにホルアクティは目の前の子を優しく撫で続けた。
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