私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。㉙)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は7/16(火)投稿予定です。
「ホルアクティ、巡回の人間にバレたくないから、声は落としてね。」
「了解やで。ふーん、ここがいつも話に聞いていた教会の中かいなぁ・・・なんや、前見た所よりえらい趣があるやないの?夜やからの?いやぁ・・・ちょっとワイ、鳥肌になるわぁ。」
「既に鳥肌だろうが、この鶏。」
いつも彼女達に渡す食料とフラスから何種類かの薬と毒薬を受け取ったティリエス達は拠点から部屋を出てすぐ、ホルアクティの言葉にティリエスは歩きながら彼の言う教会の事を思い出す。
「ホルアクティが言っているのは、メヴィウス領の教会の事ですか。懐かしいですね、確かにあそこの教会も美しい所でしたね。」
懐かしいな、あそこも大分治安良くなっているって聞くし、今度は家族皆で旅行行きたいなぁ。あと、エール好きのタンド卿に是非どんなエールが飲みたいのかアドバイス欲しいし。
「あそこはなんやどこ言っても空気が美味しくてキラキラしとったわぁ。」
「へぇ、じゃぁ今は?」
「今か?今はなんや・・・ドロドロしとってなんや重く感じるわぁ。なんか出るんちゃうん?ここ。」
あっけらかんと答えるが思いの外対象な事を言うホルアクティに彼を肩に乗せているティリエスは言葉を詰まらせる。
「鶏は鶏でも霊獣ですからねぇ。霊獣は清浄な場所や穢れな場所には敏感だと確か伺ってますから、そいつの感覚はあながち間違っていないでしょう。」
「そうですか・・・私は今魔力や感知を遮断するコンタクトレンズつけていますから、普段よりその辺りは疎くなっているんでしょうね。」
「それでしたら外されるのは如何でしょうか?そうすれば探索魔法系は使えるでしょう?」
「外す?」
レイ・・・貴方、貴方の女装姿を私に耐えろと?常に腹筋に表情筋に力を込めろというの?・・・何の拷問??
外せるわけないだろうが、とジト目で彼に視線を送っていたが、ふとあることに気がつく。
「どうしたんです?」
「探索は使えませんが、他の感覚は鋭くさせているんですの。・・・やっぱり、今気がついたんですが、見回りがいませんわ。」
「え?」
レイラもそう言われ辺りを注視する。
「確かに、ここではそろそろ巡回している修道女がそろそろやってくるはずですからね。」
「誤差なく正確にね。でもほら、誰もこっちにくる気配もないでしょ?」
「急にどうしたんでしょうね?何かしらの変化がありましたか?」
彼の言葉にティリエスはうーんと唸る。
正直言って思い当たる節は無い。でも、これは絶対大きな変化だとティリエスは根拠は無いがそうだと確信する。
「その辺りもクリメンスさんならご存知かもしれないですね。」
「?どうして彼女が?バルバラでも良いのでは?」
「恐らく彼女は知らないと思いますよ。」
「どうしてそう思うんです?」
曲がる先に誰もいないことを確認しつつ、レイラは問いかける。
「クリメンスさんとバルバラは仲が良い、これは事実です。でも、だからなのかいつも質問すると彼女はいつもクリメンスに聞きます、それか彼女が考える前にクリメンスさんが行動しています。彼女が頭の回転が弱い方なら私も何も思いませんでしたけど、そうじゃない。」
彼女は確かに要領悪くよくスムーズに出来ない節がある。でも、それは変に緊張して意識してしまっていたせいだ。現に私といる時は彼女は教会のことならよく知っている、決して頭の悪い子ではない。
「だから、不思議なんですよ。どうしてクリメンスさんがわざわざ会話の前に出てくるのか、喋れないのに。」
「もしかして、お嬢様はもう理由をご存知なのでは?」
「理由ですか?」
まぁ、確かにある可能性は考えているけど・・・確証は無いし、非現実的要素も否めない。
「それを固めるための訪問ですわ。彼女、何か知っていると思いますから。」
いつもの汚い埃まみれの図書室の入り口に立って、ティリエスは答えた。
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