私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。㉘)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は7/14(日)投稿予定です。
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「いい加減、捕まえないといけないと思うんですの。」
ずぃっとティリエスは顔を近づけてレイラに凄む。
レイラはといえば、拠点のソファで涼しい顔で視線を本の文字からティリエスの顔へと向けた後、また読んでいる本に視線を落としパラリと小説の頁を捲る。
「捕まえるというのは、もしかしてクリメンスの事ですか?」
「勿論、その通りですわ。」
本に視線落としたままの彼の問いかけにティリエスは気分を害する事なく頷く。
「お嬢様、もう諦めたらよろしいのでは?だってすでにあれから数日経ちましたが、会うつもりが無い様子であれば、それはもう私達に会いたくないんですよ。」
嫌われましたねぇとそう言いながら、またレイラは頁を捲る。
「嫌われていない!・・・と思いますわ・・・私は。」
「・・・ん?それは私だけ嫌われているという事でしょうかねぇ?」
「兎に角!私の時間も限られてますしいい加減聞きたいこと聞きませんと!」
レイラの問いかけを無視しガッツポーズをしていると、パタパタと羽音が聞こえ頭上を見やる。
「ええで、お嬢はん!何事もやる気が無いとあかんよ!」
「ホルアクティ、今日はもう外で遊ばないの?」
「ある程度見てきたし、ずっと風景も変わらんし・・・なんや快適なのに飽きてもうた。」
ストンと机の上に着地する。
心なしか元気のないホルアクティにティリエスはそっと彼の身体を両手で包み込んで掬い上げる。
「ごめんね、拠点の入り口の位置の固定でホルアクティには無理強いしてしまいましたわ。」
「えぇんや、ワイも居れると思って引き受けたんやし。」
彼にはもう2ヶ月以上ここに居座ってもらっている。できれば外に連れていってあげたいけど・・・。
「それなら、私がここにいますから一緒に出かけられてはどうでしょう?」
彼の負担に心を痛めていると、背後から声がかかる。
大きなカゴには様々な植物、おそらく薬草だろう、フラスはそれを床へゆっくり下ろす。
「残念ながら私は非戦闘員ですし、後方支援しかできません。ですがマスターと私は繋がってますから、ホルアクティ様の役割を担うことができると思いますわ。」
確かに、彼女がここに居てくれれば問題はなさそうだけど。
「いいの?そうなるとこの子みたいに気軽に外に出ることはできなくなるけど・・・。」
「はい、夜のうちに外の薬草はある程度採取できましたし、薬を作るのにここに居る方が多いですから。それに、今回の事が済めばここより沢山外に出られるようになりますし。楽しみに待てますわ。」
「そう、それなら頼めますか?フラス。」
「えぇ、任せてください。」
「というわけだから、ホルアクティも一緒に外に行きましょうか。」
「やったー!!おおきにフラスのお姉さん!」
「いえいえ。喜んでいただけて何よりですわ。」
喜んでいるホルアクティにレイラ以外微笑ましく見ている。
「もし、危ない人が来てもお嬢はんをワイが守るさかい!」
「頼もしいですわ。」
「せや!ワイの必殺技で目にもの見せてやるで!」
「必殺技ですの?すごいわホルアクティ。じゃぁいざという時はお願いしますわ。」
「任せてな!」
ほのぼのとティリエスはそう伝えるとホルアクティは勢いよく返事をした。
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