私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。㉖)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は7/9(火)投稿予定です。
出会う度に思うけど、エルパさんていつもニコニコ笑った笑顔でやってくるよなぁ。毎日いい事があるんだろうか?憂鬱なことは無いとか?・・・そんなわけないか。
「こんにちは、何だかお久しぶりな感じがしますね、エルパさん。司祭様の件は済んだのですか?」
「えぇ問題はありませんでしたよ、ただ今回聖女様の遠征で各村の皆さんにはご迷惑をかけましたから、お礼参りも兼ねて村々を訪問する事になりましてね。それでこんなに長く教会を空ける事になってしまって申し訳なかったですね。昨日帰ってきたんですよ。」
「そうだったんですね。」
「えぇ、ティリエス様にも随分と負担をかけてしまいましたね。後で村の方から頂いたお菓子がありますの。貴族の方から見れば質素でしょうが、ぜひ召し上がってください。」
「ありがとうございます。という事は村の方も変わりない様子だったという事ですか?」
「ん?えぇ、そうね。皆さん変わりなさそうでしたよ?何か気になることが?」
「あ、いえ。最近暖かくなってきたいるのでこういう時体調を崩しやすいことが多いって母から聞いてましたから。」
「まぁ、ティリエス様は本当に優しいのね。」
「いえ、そんなことは・・・。」
ニコニコ笑ったままのエルパにティリエスは謙遜する。
でも、それじゃぁエルパさんがその麓の村に行った時は普通に村人が居たってことか・・・。それから居なくなったのかな?理由はわからないけど。
というか知らなかったな。エルパさんは聖女が来る前に村へ行っていたのは知っていたが、それからずっとこの人は教会の外にいたなんて、もうすでに帰ってきていると思ってた。
聖女の来訪でここの決まり事であった礼拝や掃除などの時間がなくなったせいもあってエルパにはあれからすれ違うように会えないでいたと思っていたが、今の話しを聞くにエルパが今までどこにいたのかティリエスは理解する。
「聞いてますよ、なんでも聖女様から直々にお勉強を受けているのだとか。」
「えぇ、まぁ・・・。」
本当はイーチャ司祭から教わっているだけどね、一応聖女から指導されているとしとかないと。
「聖女様から直々なんで恐れ多い事ですが、学び事が多く、奥が深いと思いましたわ。」
「まぁ、奥が深い・・・ティリエス様はよく勉強をされているんですね。」
えぇ・・・こう見えてマジ勉強させられてヒーヒー言ってます。
一日一冊学び終えるスピードで神学について教えてくるイーチャ司祭がスパルタすぎる件について、思わす遠い目になりそうになるのを堪えた。
「そうなのね。レイラさんも一緒に学ばれているという事でしょうか?」
「そうですね、お嬢様のそばにいるのが私の勤めでもありますし、知識を知る機会があるのは良い事ですから一緒に話しを聞いています。」
嘘つけ、本をカモフラージュにして趣味のラブロマンス小説読んでいたじゃん。しかも神官と見習い修道女の格差と教会云々の許されない恋物語。なんで教会に居る時にそんなピンポイントな話しをチョイスするのかその辺理解できないけど。そんなことより勉強していないよね?寧ろ聞いていないよね?貴方。
レイラのしれっと息するように嘘をついた内容に突っ込みながら思っていると、「素晴らしいです!」と拍手しながらエルパがこちらを見ていた。
「こんな風に真摯に取り組んでくださっているなんて。もうこれは誰から見ても聖女様になっていただきたいと思いますよ。」
いや、それはやめて欲しいですそんなことを思わないで。私は聖女になる気全くないですから。
変わらずニコニコと笑っているエルパにティリエスは冷めた目で見る。
「それじゃぁ、ティリエス様。お菓子楽しみにしてくださいね。」
るんるんっと鼻歌でも出そうな陽気な様子でエルパは去っていく、そんな姿を見届けた後ティリエスは思わずため息を吐いた。
「困るな、あんな風に期待されると。」
「本当ですねぇ。でもまぁ、色々勘違いさせてた方がいいでしょう。」
「?どういうこと?」
「思い込んで自分の行動してもらえば、それだけ警戒されていない証拠ですから。警戒されていたらあんな鼻歌でそうな様子は見せないでしょう?」
「まぁ・・・確かに。」
レイラのいう事に納得しながら、ティリエスは彼女とは反対の廊下を歩き始めた。
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