まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(大好きな皆に恩返ししよう、そうしよう。㉑)
まずは前回のお話しで誤字脱字のご報告して頂きありがとうございます。こっそり教えて下さる妖精様に本当感謝してます。
あと、いつも読んでいただいてる皆さま、土曜日に間に合わず・・・すいません!
「びしそわーず・・・・ですか?聞きなれない名前の料理ですね、ティリエス嬢これはもしかして創作料理でしょうか?」
料理の名前を聞いて思い出すようにその単語を小さく呟いたアルーシャだが、彼女は初めて聞く名前だと確信しある可能性を思いつきそう質問する。
「創作料理・・・。」
アルーシャからそう質問されたのを聞きぽつりと呟けばティリエスはすぐににぱっと明るく笑う。
「はいっ!料理長のギリアが考えた料理の1つです。」
まぁ・・・きちんと言うなら【この世界では】、と付け加えちゃうけどね~。
無垢そうに見える笑みを湛えながらティリエスは心の中ではそう付け加える。
だが彼女の言ったこともあながち間違いではない、これらの実現を可能にしたのはギリアのお陰が大きい。
私が最初に美味しい料理を作ろう!っと、言い出したことだったがここまでの満足がいく料理は正直見込めないと思っていた。
レシピを知っているとしても調味料も材料も前世に比べれば乏しい、あと調理器具だって種類が豊富ではない。なので、今の料理の味をちょっと足してそれに近い味にするという事しか出来ないんだろうなぁ・・・なんて思っていたら、隣で私のしたいことを手伝っていた男は、なんと私の理想を斜め上をやってのけてしまったのである。
彼の調理方法の知識の豊富さに、あとこういう風に出来ないかと問えば調理法を考えてくれる柔軟な頭を持っていたので行き詰っても彼のフォローで早い段階で出来てしまった。
そしてもう1つ彼はまめな性格で日頃から様々な種類の食材を保存していたこと、この日々の積み重ね、これも大変大きかった。
彼が言うには王都で見習いをしていた時、物流の関係もあり多くの料理人は必要以上の多めの食材を注文をしてしまうので食材を結構な頻度で腐らせ、必要な部分を使えばその他のまだ食べられる部分があっても廃棄してしまう調理方法だったのだ。
確かにこれだと良い食材の部分を使い、1種類の食材の量を多く注文している・・・多くあればそりゃ1つの使う食材でも良いものをと選び放題なのだから料理だってそりゃ良いものが出来て当たりまえだ。
だか、平民のしかも貧民層の部類に入る出身だった彼はこの方法が酷く嫌いだったのだ。
ご飯をまともに食べられない日もある、当たり前にあった自分の幼少期の頃とかけ離れた食材の使い方に彼はこんな料理人にはならないと強く誓った。
結果、その彼の心の中にある【食材を余すことなく使い、誰もが美味しいと思う料理を作る】という目標が、季節の野菜や果物が豊作で食べきれない時は出来るだけ加工したり、適切な場所へ保管し長期保存するという食材に対する良い方向へと実を結んだのである。
ビシソワーズ含め多くの食材を使い今回完成した今回の料理の品々は本当、彼が居なかったら・・・どうにもこうにもできなかったよ・・・。ありがとうギリアさん、ここで料理長してくれて!
彼が職を失って困っていた時に父がここへ来てもらえないかスカウトしたのがきっかけで今ここに彼がいるので、お父様様様である。あの時は雇ってくれないと困っていたかもしれないがきっと、こんなに料理出来る人すぐに王都の有名レストランへ売却できたに違いない。
・・・うむ。ギリアさんにはずっとここで料理したいという環境を頑張って整えねば!
新たな誓いを立て、私がついっと彼女達を見つめる。
食べようか・・・だが得体の知れないモノに躊躇しているようだった。
ふふん、さっきと同じ光景ですね。
実は未だ固まっている騎士達も先ほどと同じようにしていたのだ。物怖じしないでそのまま美味しそうに食べ始めたのはグリップさんだけである。
と、丁度良い所にアンがワインを持って2人のグラスへ白ワインを注ぐ。
綺麗な作法で注ぎ終えると、彼女はゆっくりと口を開いた。
「先ほどのお嬢様が仰っておりました、ビシソワーズのご説明させていただきます。
わが領で採れました、ほんのり甘みがありほくほくした食感のある秋にとれるお芋を玉ねぎと一緒にバターという調味料と一緒に炒め、ネギや玉ねぎ人参など沢山の種類の野菜に、そして骨ごと一緒にいれた鶏肉と一緒に煮込み旨味を凝縮させたお出汁をいれ一緒に煮込みながら、芋を滑らかなになるまで潰しさらに濃厚な牛乳を加えひと煮立ちさせ最後に塩と胡椒でほんの少し味を調え冷ました、なめらかで旨味が深い冷たいスープにございます。熱いお料理よりご入浴で火照った体をまずはこちらのスープが優しく冷ましてくれるでしょう、どうぞゆるりをお楽しみくださいませ。」
アンの分かりやすい説明に思わず2人は唾を飲み込んだのが分かった。
「・・・いただこうか。」
「は、はい。」
そう言って彼らはスプーンを手に取り、普通よりほんの少し少なめに掬いほぼ同時に口へ運んだ。
「「?!!」」
初めて食べる感触、そして味だった。
芋の甘みもありけれどなにか別のもったりまったりした味もするそれに沢山の旨味が感じる、それを牛乳が優しく包む・・・さらに牛乳といった臭みは全く感じない。
体験したことのない味が舌の上で踊る・・・。
上司の衝撃といった言葉がフリーズした頭の中を微かによぎった。
そう、正しくこれは衝撃だ・・・そして。
「・・・美味しい。」
彼女がぽつりと漏らした言葉、それに尽きる。
その言葉にティリエスは満足し、小さくお辞儀をする。
「まだ、たくさんありますし他にも美味しいものをご用意していますので、沢山召し上がってくださいね。」
その言葉に今まで固まっていた騎士達が一斉に覚醒したのだった。
いつも読んで頂きありがとうございます。