私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。⑲)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は6/23(日)投稿予定です。こっそり誤字脱字教えてくださった名の無き妖精様、ありがとうございます。
ティリエスはさっさと食堂から自分の部屋へと入ると、すぐさま粗末に備えられた机の方へと向かう。
そんな彼女の行動を黙ってみていたレイラことレイだったが、ティリエスの後ろ姿を見ながら自分はベッドへと座った。
「それで、何かわかった・・・いや、何が気になったんです?お嬢様。」
「気になることはまぁ色々あるけど、レイ。なんだかおかしくない?」
「何がでしょう?」
声色を変えて話すのを止め、レイはティリエスの質問の意図を聞き返す。
相変わらずティリエスは机の方に視線を送りながら話しを続ける。
「さっきの話しが本当なら、マルフェ司祭に援助を頼んだのはブジョラ司祭ですよね?」
「そう聞きましたねぇ。」
「そうだとおかしくないです?だって何かを隠しているのであれば、マルフェ司祭と容易に接触できる私達。ここの教会の事情を関わらせれば関わらせるほど向こうにとって都合の悪いものが浮き彫りやすくなって勘付かせる可能性も高くなるじゃないのかしら?」
「・・・確かに。彼らの目線と私達の目線とでは良い意味でも悪い意味でも違いますからね。」
マルフェ司祭のように元々教会の事情に詳しい者だとすぐに事情を知れば問題点に気がつくだろうが、そういう人でも残念ながら落とし穴はある。
組織に長く居座っている為に起こる、組織の当たり前の常識が染み付いているせいで判断が鈍る、気づくのが遅れる場合だ。
現に彼は書類で人数を把握し、現場を見て相違点がなければ書類の記述を鵜呑みにしてしまい今までの習慣から見逃しになる。私達からの違う情報を聞いてようやく相違点に気がついたのもそれが原因だろう。
まぁ、掃除することがない高位神官だとそういったものに疎いせいもあるかもしれないけど。大変なんだよこんな大きな建物を常に綺麗に維持するのってさ、魔法使えない人なんか特に。私の屋敷掃除はメイドさん達がある程度生活魔法使えるから少人数でも綺麗にしてもらえるけどさ。
「私とレイは信仰心は彼らほどではないし、教会に心酔している訳でもない。だから一般の考え方しか出来ない。でもだからこそ一般から見ておかしいと思う事に疑問は持ちます。けれど疑問を持ったからといってここではそうだ、と言われてしまえばそれ以上は追求できない。マルフェ司祭のように話しを聞いてくれる関係者がいない限り私達の思った疑問は有耶無耶にできるでしょう?」
「成程、ですからどうしてブジョラ司祭がここにマルフェ司祭を関わらせるようにしたのか気になったんですね。」
「その通りです。なんで今になってそれを起こしたのか、何か問題が発生して助けを請わなければいけない状況になったのか、それとも逆に知られても問題ないからそうしたのかは判断できませんけど。」
「それはマルフェ司祭共が私達にすり寄り油断させるため嘘を言っている可能性も考えている、ということでしょうか?」
彼らが敵対しているのは嘘で私達を騙している・・・か。
「そうですね、以前だったらそれも否定出来なかったですけど・・・その辺りは事実でしょう。それに、彼らは私達の敵ではないというのは先ほどの会話で分かりましたから警戒しなくても大丈夫でしょう。まぁ彼らの言う探し物を見つけるために私達を利用してますけどね。」
「それはほっとくつもりですか?」
「うん、私達に害がなければ。それよりもマルフェ司祭が言っていた事について聞かないと。彼は私に重要なことを教えてもらいましたから。」
「?彼は何を言ってましたっけ?」
「まぁ、それはクリメンス、彼女に会ってからにしましょうか?」
そう言って徐に借りた本を持ち振り返る。
「次は図書室へ行きましょうか。」
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