私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。⑱)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は6/20(木)投稿予定です。
「えっと、その人数はこの教会の食糧配給希望人数ということですわよね?全員ではなくて。」
「ん?いいえ、教会の人数は今言った人数が全員と聞いたけどな・・・、何かこれは変な事なの?」
「変・・・、変と言えば変ですわよね?レイラ。」
そう言ってレイラの方を見ると、レイラもまた何かを考えていたようで顔を上げる。
「えぇ、私達が来た当初はもっと大人数でしたよ、400人はいたはずです。」
「え?そんなバカな!」
マルフェがあり得ないと口を開く。
「教会側の方で確認している人数は確かに200人程だよ?それに現在保管しているここの教会の名簿もそれぐらいの人数分しかなかったんだ、間違えるはずはないよ。君達が慣れない環境で見間違えたとか多い人数と錯覚したんじゃない?」
マルフェはある可能性を口にし2人に問う。
「確かに、慣れていない環境だったというのは認めますが・・・。」
でも、ここに来て最初の頃に張り出されていた清掃の振り分け表の人数を考えるとやっぱり400だと思うんだよなぁ、何だかんだここめちゃくちゃ広いし・・・。
「その可能性も残念ですが低いですね。」
心の中で否定をしているとレイラがキッパリマルフェ司祭の言葉に否定する。
「私はありとあらゆる危険からお嬢様を守る為に動かなくてはいけない。その中には人数の把握も然り。なのでその辺りのことは最初に調査済みです。」
「そんなの可能なの?」
「えぇ、私は聴覚もそうですけど気配にも敏感なんです、自分から半径250メートルであれば建物や壁などの障害物は関係ありません、把握は絶対に外れない、例えどんなに気配を消しても分かります。ただ隠蔽系の魔法を
使われると少し感覚が鈍りますが、まぁそれでも探し当てれますよ。」
え・・・何その超身体能力。初耳なんだけど、いや・・・そんなドヤ顔見せられても。
「それは随分凄いことだよね、流石君のお父上が君を守る為に託した人材だよ。でも、もしかしてレイラさんって暗殺者かなんかだったの?」
「いいえ、そんな者になった覚えはないです、ねぇ?お嬢様?」
「うん、私はそうだと聞いてますよ?」
「ほら?ねぇ?」
「・・・なんだか含みのある言い方だけど、まぁいいや。なら、それが本当なら中央には人数を偽造した事になるけど・・・そんなデメリットになることするのはなんでだろうね?」
「?と、言いますと?」
「中央は信徒が増える事には賛成なんだよ。受け入れ可能な人数であれば支援もその分多く支給する。さっきも言ったけど、君の家で以前より余裕はあるからね。だから人数を本来の人数より多く申告する逆の不正ならわかるんだけどね、これは逆のことをしているしさらに言えばここの教会の財源を食い散らかす事にもなりかねない。そんなリスクを負う必要がどこにあるんだろう?」
「ちなみにここで把握した人数だとその配給問題としてはどうなんですか?」
「問題ないよ、他の所より1人に当たる支給量は若干減るかもしれないけど、食糧不足にはまず陥る事はないね。」
「そうなると、なんで人数を誤魔化したのか分からないですね。そのまま正直に言えばいいのに。」
「そんな理由は簡単ですよ、お嬢様。」
レイラの言葉に2人はレイラに顔を向ける。
「本来いるはずの人数を把握されると困るからですよ、それしか考えられない。」
「それは僕もそう思う。人数を把握されるから困る事がここでは起こっているんだ。」
「なんで困るんでしょうねぇ?」
「さぁ・・・でも、よくない事だと言うのは分かるよ。身内にも明かす事が出来ないんだから。」
マルフェは苦虫を噛んだように苦い表情をして言う。
ティリエスはそんな彼を見ていたが、彼が立ち上がる。
「早急に調べてみるよ、何かわかるかもしれないし。」
「何か手伝いましょうか?」
ティリエスがそう申すとマルフェは首を横に振った。
「気持ちだけ受け取っておくよ、でも危ないからね。それに教会の資料って内部にいても貸出厳禁なんだよ。外部に漏れると困るから、原則保管されている部屋のみの閲覧だし他の書物も例外はないんだよ。」
「え?そうなんですか?」
「うん、じゃぁ僕は行くよ。何か分かれば教えるよ。」
そう言ってアイテムをしまい、席を立ったマルフェを見送った後、ティリエスも立ち上がる。
「じゃぁレイラ、私達も行きましょうか。」
「?何処へです?」
「自分の部屋。」
そう言うとティリエスも動き出した。
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