私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。⑰)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は6/18(火)投稿予定です。
「さてと、さっきの質問だね。僕がどうしてここにいるかなんだけど、実はブジョラ司祭からの要請でもあるんです。」
「え?!ブジョラ司祭がですか?!」
ここでの食事らしい食事を堪能したティリエスはその名を聞いて正直驚く。
認識阻害を使っていると分かっているが、思ったより大きな声を上げたので周りを警戒しながらこちらを見ている修道女達に変化はないか目を配らせる。
こちらを見ている修道女もいるが最初の頃の様子と変わり無いので、自分の声が聞こえたわけでは無い様子にホッと息を吐いた。
「まぁ、君の反応もそうなるよねぇ?僕も最初は驚いたさ。何せ僕らと彼には相容れない関係だったはずだし。」
「え?そんなに相容れない状態だったんですか?」
思いがけない言葉にティリエスはぽろっと言葉が出る。
その言葉にマルフェににっこりと笑みを返された。
おっとー・・・この笑みはなんだか黒いものを感じるぞー。
今まで彼らとの間に何が起こったのかわかりっこ無いが、彼の今の笑みでその溝は結構深く大きいものだとティリエスは理解する。
「まぁ僕達のことはいいんだよ。それに、考えは違うし溝も深いけど君を聖女として祀り上げることが出来ればいいなという利害は一致している所では団結できそうだし。」
・・・え?今さらっととんでもないことを言いませんでしたかこの人。
愛容れない関係と言いながら、私の聖女として迎え入れる話しは協力体制が出来るらしい。
何それ、怖っ!っていうか忘れてたな聖女の件。
今更だが、自分がここに置かれることになった理由を思い出して頭を抱える。
聖女の認定有無まであと1ヶ月ちょい・・・この問題をどうするのかも考えないと・・・あぁ、一気に頭痛くなりそう。
「大の大人達が啀み合う仲でも団結する事ができるって素晴らしい事ではありませんか?」
「・・・・・・・・。」
いや、美談のように言われても困るし。
ここで肯定すれば自分が聖女になるという意味にも捉えかねないのでティリエスは沈黙を守る。
と、急にこつりと爪で机を叩く音が聞こえた、犯人はレイラだった。
「話しが脱線してますけど。」
「あぁ、そうだったごめんね、久しぶりにティリエス嬢とお喋りできるから話しが脱線してたよ。それじゃぁ話しを戻すんだけど、ブジョラ司祭がいうには今ここは食糧難みたいでね。今のいる人数を食べさせるには到底足りない。だからその援助を頼みたいって。近くの教会に要請すれば、可能な食料を分けて貰えるはずなのに。」
「そこは過激派ですから、とか?」
「いや、派閥は関係ないよ。まずは食べないことには何もできないでしょう?そこを疎かにはさせないように橋梁体制はきちんとしてきたはず。加えてアメジスト商会のお陰で教会も前よりも楽させてもらっているから教会からの配当金も少なくないはずなんだけど・・・。」
それなら、一体どこで金を使い込んでいるのか疑問が出るけど。そこはどうやら追求できなかったんだろうね。
彼の腑に落ちない顔を見てティリエスはそう判断する。
「だから、僕の伝を借りて食料を提供する事になった。ほら、僕って顔が広いからね。」
「はぁ・・・まぁ顔が広いかどうかともかく、それでも結構人数でしょう?」
彼女達の番号からしておそらく400人以上がいるこの大所帯を賄うのは大変だ。
そんなことを思っているとマルフェは首を傾げた。
「そうかな、確かに多いけど200人弱って所だからまぁなんとかなるけど・・・。」
「え?それだけ?」
「うん。だから僕も受け入れたんだけど・・・。」
マルフェの言葉にティリエスが今度は首を傾げる番だった。
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