私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。⑯)
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何でマルフェ司祭がここに??
突然の彼の登場にティリエスは目を丸くさせる。
それもそのはず、彼ら聖女と共にやってきた関係者達の食事は自分達で用意し食事をしていたからだ。
表向きは各教会に公平を期す為であるが、実際は暗殺などの隙を与えない為だ。
その為、マルフェ司祭自身前に食事を一緒には出来ない事を話していたはず、なのになぜ彼はここでさも当たり前に配膳を手伝っているのだろうか?
「なんでここにいるのか不思議な顔をしているね?」
「え?えぇ、正直なんでこちらに居られるのかとそう思っていますわ。」
包み隠さず愚直に答えたティリエスにマルフェは笑う。
「まぁ、理由は・・・まぁ立ってはなんだし座ろうか。僕もお腹空いてきたし。」
そう言うや否や、マルフェはささっと自分の分を準備し出てきたので、そのまま3人は奥の方の机にそれぞれ座った。
向かい合わせに座ったマルフェが自分の服の袖から何か物を取り出し机に置く。
置いた物が懐中時計だったことにティリエス達が気がつくと、一瞬で何かが纏ったのが分かった。
「認識系の魔法が付与されているんだよ。これで僕たちはただ黙って食事をしているようにしか見えない。」
その言葉に周りを見やると、確かに普段と変わらずこちらを見ているが警戒心を上げたようには見えない、彼の言った事は本当だろうとティリエスは判断する。
「教会で保管されている錬金術の代物だよ。教会には至る所に解除魔法がかけているから普段より持続性も短いし効果も弱い。でも大きな声で喋られると解けてしまう可能性は出てくるけど、普通にしてくれれば問題ないよ。」
「へぇ、すごい代物なんですね。」
本当はもっと色々持っているよとティリエスは言いそうになるのをグッと堪え、当たり障りの無い返事をするとマルフェは持ってきたスプーンを手に持つ。
「さぁ、まずは食べようか。折角のスープが冷めてしまう前に。」
そう言ってマルフェが食べ始めたのを見て、ティリエスもそれに倣い野菜の具材が多いスープへ向き合う。
スープの中にあったにんじんをスプーンで掬い取り口へ運んだ。
「!・・・・。」
久しぶりの味にティリエスはじぃんと心に染み渡るのを感じながらゆっくりと咀嚼する。
自分達でこれより美味しいものを食べて来てはいるが、ホッとする味にティリエスは飲むこんだ後の余韻も堪能する。
「どう?美味しい?」
「えぇ、とても・・・美味しいですわ。」
「それはよかった。これは僕達に食料を提供してもらっている地域から頂いたんだ。」
「そうだったんですか・・・どうりで美味しいわけです。」
「うん、新鮮だからね。さぁとりあえず食べよう。話しはそれからかな。」
その言葉にティリエスは同意し、スプーンを口へ運び、ティリエスはお腹いっぱいになる程盛られていたスープをあっという間に平らげていった。
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