私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。⑮)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は6/13(木)投稿予定です。
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オーガから話しを聞いて5日後、ティリエスは相変わらず閉鎖的な空間の中日々増えていく監視の目にげんなりしつつも水面下では大人しく過ごしていた。
今日もあの毒入りスープか・・・流石に飽きてきたなぁ。
「お嬢様、もう食べるのを辞めにしたらどうです?あいつらはいちいちお嬢様が完食しているのかどうかなんて気にもしてませんでしたでしょう?」
ティリエスの隣を歩くレイラは心の中では憂鬱に感じているティリエスに向かってそう提案する。
「この前スープをこぼした件でしょ?確かに何も言わなかったですけど・・・。」
そう、彼女たちは私達の行動を監視する一方、食事云々に関しては何も反応しないという事実が分かったのだ。
それは2日前、食堂でいつものように配膳の食事を運んでいる際、彼女は何かにつまづいた拍子に思いっきり食べ物をぶちまけてしまった。
あまりの勢いでぶちまけたので広範囲に多大な迷惑をかけてしまったティリエスはわたわた慌てていると、周りにいた修道女達が黙々と掃除をしてくれ、必然と空になった配膳皿は下げられる。
なのでティリエスはその後また新しくよそって来た食事を渡されるだろうとそう思って、その場に立ち尽くしていたのだが、一向にそれを持ってくる気配はなかった。
これには首を傾げ、試しにレイラも彼女達に勘付かれないよう中身を捨て空にした後、配膳皿を返却するといつものように片付けられる。
先ほどスープなどを盛った修道女が皿を受け取ったので私達がまだ食べ終えられる時間ではないことなど、少し考えれば分かるはずなのに・・・彼女達は全くそのことに注視しなかったのである。
この事から彼女達は食事の有無は注目していないことがわかり、ティリエス達は食べなくても疑問を持たれないということに気がついたのだ。
レイラに頼んで秘密裏に処理してしまえば別に怪しまれなので、食べないという提案をレイラはしたわけなのだが、ティリエスは首を縦に即座に振らず考え込む。
「いや、どうしてそこで悩むんです?貴女の身体に害はないとはいえ美味しくないでしょう?」
悩むティリエスの姿にレイラはどうしてそんなに悩むか理解できないでいるとティリエスは、考え込みながらも口を開いた。
「いやー・・・なんというか勿体無い事はしたくないなぁって。」
「はぁ?」
ティリエスの答えにレイラは心底意味がわからないという顔をした。
そんな顔されても仕方ないじゃん、前世では出されたものは完食する、これが当たり前に育って来たんだし。
施設にいた頃、お腹は満たせても好きな物が気楽に食べられるような場所ではなかった。
それゆえ、食べ物を決して粗末にしないように。そう、常日頃行動し言われたことでそれが今でも染み付いているのだ。
ご飯を残すの絶対ダメ、使えるものは工夫して使え、物は大切に。
もはや魂に刻まれた言葉である。
「まぁ大丈夫だよとにかくこのままで。それより、ロコスさんはまだ戻って来ていないんですか?」
小言言われる前に話しを変えたティリエスのその言葉にレイラは首を縦に振る。
「そう・・・一体どうしたんでしょうか?」
「さぁ、もしかしたら慎重に行動した故なのかもしれませんし。」
未だ帰ってこないロコスを心配していると食堂の前につく。
いつもの光景が広がる中ティリエスは迷いなく歩くと配膳列の最後尾につく。
「あれ?」
「どうしました?」
そしていつものように待っているところでスープを渡され、そして受け取った後すぐにいつもと違うことに気がついた。
・・・毒草がない?
そこにはいつも毒々しい葉が浮かんでいない、ただの野菜スープにティリエスは驚いた。
「ごめんね、今はこれぐらいしかないんだ。」
「あれ?マルフェ司祭??」
ひょこっと調理場から顔を出した人物にティリエスは驚いた。
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