まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(大好きな皆に恩返ししよう、そうしよう。⑳)
きりのよいところにしたかったのてで今日は少し短めです。
これは一体どういう状況だ?
瞬時にいつもとは全く違う仲間にヴォルは状況を把握するため考えを巡らす。
何時も騒がしく肉を奪い合いゲラゲラと笑って食事をすることが多いのに、誰一人話そうとしない。
こいつらが大人しい・・・微動だにしない姿を見るなんてなんだ?どういう・・・ん?そういえば、スプーンを持って皆殆どが何かを食べている跡があるな?
意を決して中へ入り近くに座る仲間の目の前に置いてある皿の中をそっと見る。
白い・・・液体?スープか野菜と肉が入っているスープが当たり前だが、具材がなく白く濁ったスープ・・・これは初めて見るな。
初めて見る皿の中身にヴォルがじっと見ていると反対側にある本館側の扉がゆっくり開いた。
「あ、ヴォル卿。ラディンおじ様、ヴォル卿も来られました!」
「ああ・・・ヴォル目覚めたか、首は痛くなってないか?」
「首?別に異変は何も・・・それよりこれどうなっているんです?」
これといわれた光景を問いかけられラディンは苦笑を浮かべた。
「何、ちょっと衝撃を味わっているだけだ。」
「衝撃って・・・・。」
時間が止まったように誰も動かないこの状況にヴォルは困惑するばかりだ。するとぞろぞろと本館側からアドルフの少し後ろをリリスにアイル、そして―――。
「おい、なんでお前がそこから出てくるんだよ。」
思わず目上の人がいる中気を付けていた素の状態でその人物に低い声で問い詰めるように声をかける。
一番最後に入ってきたのはなんとグリップだった。しかも、両手で並々と注がれている例の白いスープの皿を器用にこぼさず運び、彼の口には木の棒もといスプーンをもごもごとくわえている。食堂とかで確かに使うし違和感はない・・・無いが目上上司の御呼ばれにましてや公爵家なのだから木のスプーンじゃなくて銀のスプーン用意してるだろ・・・お前銀のスプーン何処へやりやがった!
と、いうよりさ・・・。
流石に無礼講でもあれは駄目だろ!誰か叱れよあいつをさ!!
「お!ヴォウ!ほえっ!へちゃくほふまふっ!」
「何言ってんのか分かるか!スプーンくわえて何してんだお前!」
怒って言う彼を気にせずグリップは自分の座っていた椅子へ素早く座ると咥えているスプーンを口から手へと持ちかえる。
彼はへらりとヴォルに笑いかけた。
「これすぐになくなっちゃったからさー待つのが面倒でとりにいってたの。料理人の人達びっくりしてたー。」
「そりゃ、大の男が食べ終えた皿もってやってきたらびびるだろ!ここは食堂じゃないんだぞ!」
「まぁ、そこまででやめてあげてくれ。」
当たり前の光景にヴォルは呆れて返事を返すとアドルフがなだめた。彼に言われれば辞めるしかない、ヴォルはまだ不満がある口を無理やり閉じる。
「ヴォル卿もご苦労だった。彼の行動と理由が分かるからとにかく食事をしよう。入り口にいるのはガロス卿だね?君もこちらへ。」
アドルフの声に今までその場で留まり成り行きを見守っていた彼女はハッとして中へと進んでいく。
そして、公爵夫妻の前で左胸に手を置き軽く会釈する。
「公爵様、公爵夫人この度はお招き感謝いたします。」
「堅苦しい挨拶は今日は無しだ。ガロス卿もご苦労だった、私達が出来るもてなしを受け取ってくれたら嬉しい。」
「さぁさぁ、こちらへどうぞ。ヴォル卿もこちらへお掛けくださいな。」
いわれた2人はそのままおずおずとテーブルの上に真新しい食器が置かれた場所へと促され2人は並んで座る。
頃合いを見ていたメイドが彼らの前へことりと机の上へ例の白い何の具材もないスープを目の前に置く。湯気の立たないスープに2人は困惑した。
「初めてみる料理ですね、これはなんという料理なんですか?」
アルーシャが不思議そうにのぞき込んでお皿を見ながらもってきたメイドに質問をする。
だが、それに答えたのは持ってきたメイドでもこの場に居ない料理長ではなく、小さな少女だった。
「そのスープの名前は【ビシソワーズ】です。」
小さな少女ティリエスが少し誇らしげにそう言ったのだった。
いつも読んでいただきありがとうございす。
裏設定:グリップは最初勿論銀のスプーンを使ってましたが、調理場にやってきて鍋毎使用済み銀のスプーンで食べようとしたため、旦那様たちにもよそうのにばっちぃだろうが!とキレた料理長がその場でへしゃげたので使えなくなりました。
あまりの剣幕にグリップもしょげつつその場でちゃんと謝ってます。(でもきちんと謝ったので沢山スープを入れてあげてます。)