私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。⑪)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は6/4(火)投稿予定です。
「ーーーーで、何かわかったんです?」
バルバラと別れてしばらく歩いていたティリエスは誰もいないことを確認しながら、半歩前に歩き先導するレイラこと、レイに聞く。
静かに歩いていたレイナはティリエスの言葉にぴくりと反応し止まるとゆっくりと振り返った。
「残念ながら私ではなく、オーガの方で何か進展があったようです。」
彼は彼で可能な範囲で色々調べてくれていたが随分早いな・・・ん?
「・・・貴方何でそんな納得していない顔なの?」
見れば臍を曲げたような顔をしているレイラにティリエスは思わず半眼になる。
「・・・まさかと思うけど、先に情報を集めてきたのがオーガさんだから拗ねているの?」
「・・・・・・・そんなわけないじゃないですかー。」
いやいやーその態度絶対そういうことでしょう?何年一緒に居ると思ってんのー?絶対これ以上何か言うと面倒臭くなりそうだから言わないけどねー。
心の中でそんな事を思っていると、レイラが歩き始めたのでティリエスも付いて行く。
そういえばここあまり来た事がない場所だな。
毎日限られた場所を行ったり来たりとした生活だったので、しげしげと眺めていると不意にレイラが足を止めた。
ノックもなしに入っていくのでティリエスも続いて入っていく。
「あれー?レイラさん、ノックもなしに入ってくるなんてマナーがなってませんよぉ?」
「あ、オーガさんだ。」
寝床に椅子に机、簡素な部屋にいたのはオーガだった。木造の椅子に座ってだらんとしたままこちらを見やる。
レイの他にティリエスがいるのを目にしたオーガは力無く手を上げた。
「こんな格好ですみませんねぇ、ティリエス嬢。」
「珍しいですわね、オーガさんがこんなに疲れているなんて。」
「私だって疲れますよぉ?ただ見せていないだけで。」
「よっ」と小さな気の抜けた掛け声と共に椅子へ座りなおしオーガは此方を見直す。
「さて、何から話せば良いのか・・・。」
「オーガさんが言い淀むほど話す事に悩むという事は、良くないという事ですか?でもこういう時って良い話しと悪い話しと両方揃っているっていうのがお約束みたいなものじゃないんですか?」
小説でよくあるテンプレだ。「良い話しと悪い話し、どっちから聞きたい?」みたいなそういう展開ではないのだろうか?
そんな事を思っているとオーガは疲れてた顔に一瞬だけ笑みを浮かべた後真顔になる。
「まさか。良い話しなんて一つもない、悪い話しばっかりですよ??」
まさかの事態は深刻宣言。
ティリエスは内心「マジかー!」と叫びつつ、レイラが用意した椅子に座る。
ティリエスが座ったところでオーガは深い息を吐いた。
・・・ん?そういえば・・・。
「ロコスさんも見当たりませんね?何処におられるんです?」
最近は一緒に行動していたロコスが居ないことにティリエスはオーガに尋ねる。
「そうですねぇ、彼が不在の経緯も含めて順を追って話します。本当は聞かせたくはありませんが・・・情報を共有しないとここでは何が起こるかわかりませんからねぇ。・・・後で貴女のお父様、いやお母様にも怒られそうですがね。」
怒られるほどの内容なのか。
ごくりと唾を飲み込みながら彼が口が開くのを待つ。
少しして彼は別行動して何がわかったのか、何を見てきたのか話し始めた。
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