私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。⑩)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は6/2(日)投稿予定です。
ーーー女の形をした女神の子は、男と出会い唯一の愛を知る。
そして、彼女は母である女神に希う。
どうか、男と共に人の世を生きそして死を迎える事を。その中で2人の生きた証を残していくことを許してほしい。
自分達と違う時間を過ごし、子を残し、そして永遠に会うことも叶わなくなる。
その願いに対し女神と他の姉妹、兄弟達は話し合った。その中で永遠の別れを惜しむ姉妹・兄弟達に女に思い止まるように説得を試みたが女の決意は固くそれはできないとこだと悟った。
それなら、あの子の願いを聞き届けようではないか。
1人の子が彼女の願いに賛同した。翼を生やした牛の頭をもつ屈強な身体の子が最初にそう言った。
別れは確かに寂しい、だが彼女の決意がそう願うのであれば叶えてやりたい。
聞いていた他の子の賛同もあり、彼女は男の元へいくことを許された。
旅立つ女に女神はこう言った。
人の世に降り立てば私を感じることはもう殆どないだろう。けれど、感じなくとも私は空から水から大地から、私は貴女も彼もそしてこの先の子らも見守り続けよう。
女神に感謝していると姉妹と兄弟達が女の前に集まる。
もうこれで本当の別れである。
だから私達から祝福を授ける。
どうか役立ててほしい。
姉妹と兄弟達からいくつかの能力を授かった女は最後に皆と抱擁を交わした。
そして男の居る元へと下る。
お前が死を迎えた後会いにくる。その時までどうか元気で。
女神の言葉に頷き、それ以降振り返ることはしなかった。
こうして女は男と共に人の世で暮らし、命が尽きるまで2人は愛し合った。
「ーーーーーで、2人は夫婦となってたくさん赤ちゃんを産んで幸せいっぱいに暮らしました、めでたしめでたし。っていうそんなお話しなんですよ。」
「へー、確かにそれだと何だかロマンチックですわね。」
話しを聞きながらティリエスは座り込んでいる周りの草を無遠慮にちぎりながら生返事をする。
・・・いや、なんだその御伽噺。この前と話しの内容・・・まぁ最後の結末は同じだが、中身がまるっきり違う。
確か他の女神の子達には反対されていたはずだったよね?殺されそうになるぐらいの反発くらっていたよね?
バルバラの話している話しだと別れを惜しみながらも女の女神の子に尊重して祝福したって事になっている・・・え?どっちが本当なの?
もしかしたら彼女の聞いた話しは残酷な部分を隠し伝えたものかもしれない。
そんな事を思っていると何かを思い出したようにバルバラは口を開いた。
「そういえば、最後にこうも教えてくれたんです。女神の子の祝福は2人の子の子孫にも受け継がれていて、それを無闇に使ってはいけないんだって。」
「へーなるほど・・・この御伽噺って継承説もあるんだ。でもバルバラ、その話し誰から聞いたの?」
「はい!この話しはですねぇ・・・この・・・・?」
「?バルバラ?」
バルバラの言葉にティリエスは尋ねた途端、バルバラの様子がおかしい事に気がつく。
「お嬢様ー?」
彼女に気を取られていると不意に後ろからの声に驚いたティリエスが振り返る。
自分を探しに来たレイラがそこに立っていた。
「あら?どうかされました?」
「い、いや、バルバラが「私がどうかしましたか?」・・・あれ?」
見れば何時もの彼女がそこにおり、ティリエスは戸惑う。
「え?私さっき・・・見間違いだったのかしら?」
「それよりもそろそろ他の人に居場所がバレそうですよ。」
「え?!それはいけない。」
何せ息抜きに教会の外で談笑していたのでバレるわけにはいかないのである。
修道女達の目もあるし・・・仕方ない。
「バルバラ私は戻りますね。」
「はい!また!」
元気よく送り出すバルバラを背にティリエスはレイラとともに建物の中に入っていった。
「私・・・この話、誰から聞いたんだろう?」
バルバラの小さな呟きは誰の耳にも入らなった。
いつも読んでいただきありがとうございます。