私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。⑧)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は5/28(火)投稿予定です。
「忘れていないというなら、なぜ彼女達はお嬢様の事を知らないふりを?」
レイラも気になったのか、お菓子を食べる手を止めフラスに対し言葉を投げかけると、彼女は困ったような表情を見せた。
「そうですわね・・・彼女達の態度は私は分からなくもないんです。いつしか私達を忘れしまい込んでいたマスターの事に対し複雑な気持ちを持っていますから。」
フラスはティリエスの方を向いて小さく笑う。
「マスターの力が強大になるにつれ私達を使わず大事に仕舞われたとき、私達は捨てられたと感じたのです。」
「!私はそういうつもりでは・・・。」
「勿論、分かっています。マスターは私達を捨てたわけではないということを。でも、それでも私達は複雑な思いがあった事をご理解ください。」
「・・・彼女達は恨んでいるのでしょうか?」
ティリエスの言葉にフラスはすぐ様否定する。
「いいえ、マスターティリエス。彼女達はただ気持ちの整理を仕切れていないだけで貴女の事を恨んでいません。ただ・・・そうですね。彼女達は見た目通りの子供なんですよ。私のように大人には成りきれないんです。」
「?」
「まぁ、そのうち彼女達も折り合いをつけますわ。」
彼女の言われた言葉に理解できず首を傾げるがフラスはただ笑みを浮かべるだけでそれ以上は何も言わずに美味しそうにお茶を飲む。
ティリエスもそんな彼女にこれ以上何を言っても教えてくれないだろうと判断し、何かを吞み込むように多めにお茶を含み飲み込む。
彼女達の態度は元々気になることはあったし、少しだけ知れた事に御の字としておこう。
それより、今の事を考えないと。
一度深呼吸するとそのままティリエスはフラスの方に口を開く。
「フラス、話しを変えますが、頼みたいことがあるの。受けてくれる?」
「勿論、その為に私は具現化したのですから。」
彼女は何も聞かず二つ返事をしてくれた。
現在解毒化できる薬が提供が途切れないように精製して欲しいと頼むと心配されたが、フラスの協力があれば心配はないという旨を伝えると彼女は、それならと俄然やる気を出してくれた。
幸いにも彼女は薬学に精通していたおかげもあり薬草・毒草の栽培にも長けているらしく、このまま拠点の庭の一角を使い栽培してくれる事になった。
これで薬の品薄は解消されたわけではあるが、庭を案内していた際ホルアクティを見つけたフラスが生態の探究心に負け彼を追いかけ回し彼を困惑させた事は割愛させていただくーーー。
「うーん・・・。」
「どうかされたんですか?ティエスさん。」
彼女に薬の精製を任せたことで時間ができたティリエスはどうするか考えていると、他の修道女達の視線を掻い潜りティリエスと一緒に座っていたバルバラはティリエスの様子を心配そうに見つめた。
その視線に気がついたティリエスはバルバラの方を見やる。
「いやー・・・少しだけ息抜きしたいなぁと思ったんですけど。どこが隠れ蓑になるかなぁって。」
「息抜きですか?」
「そうそう、息抜き。」
まぁ、本当は怪しい所を調べたいけどあり過ぎてどこから手をつけるのか考えていただけだけど、彼女を巻き込むわけにはいかないしねぇ・・・。
チラリと彼女をみるとばっちり目が合いニコッと笑って誤魔化した。
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