私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。⑦)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回はすいませんが5/26(日)投稿予定です。
地味な紺色のワンピースに見た目は細身の女性40代といったところか。
宙に浮いたまま目を閉じている女性の風貌を観察していたティリエスは一歩踏み出す。
すると更に彼女が纏う眩い光は萎んでいき、彼女がゆっくりと地に足をつけた時にはただの女性が目を閉じて立っていた。
雰囲気かな・・・どこかお母様にも似ている。
顔を見て母がこの年齢になればこんな顔立ちになるかもしれないとそんな事を思いながら未だ目を閉じたままの女を見ていると、ぴくりと瞼が動きゆっくりと目をあけた。
髪の色と同じ緑色の色彩の眼と目が合う。
「・・・・・・・・・・。」
彼女はゆっくりと周りと自分の手を見、そのまま自分の顔や様々な身体の部分を触っていく。
・・・無表情で自分のお胸触っているのを見るのはちょっと目のやり場に困る。
いつしか彼女の手が感触を確かめるようにもにゅんと遠慮なしに自身の胸を触る彼女に思わず咳払いをすると、本人もハッとしたようで服を正した。
「すみません、マスター。人間の姿で出会うのは初めてでしたので自分の身体に興味を持ってしまいまして。人とはこうも不思議な感触ですのね?」
礼儀正しく謝罪する彼女を見て、どうやら彼女達のように自分は嫌われていない様子にどこかホッとしつつ、ティリエスも謝罪を受け取る。
「最初の質問ですね。マスター、初めましてではなくお久しぶり、ですね。」
「!ということは以前の事も貴女は覚えているんですね。」
「はい、貴女様に見つけてもらい共により良い高性能な薬を作ってきた・・・話しはできませんでしたがあの忙しく働き己を高めていったあの頃の事をまるで昨日のように覚えております。」
懐かしむようにそう呟く彼女に聞きたいことが次から次へと出てくるので何から聞くべきか迷っていると、後ろから食器の音が聞こえた。
「再会を懐かしんでいる所申し訳ありませんが、一度座りませんか?お茶もご用意できましたので。」
そう言ってカップとポット、そしてお茶菓子が乗せている皿が置かれている銀色の盆を持ったまま見せてきたレイの言葉にティリエスも賛成しソファに座るように彼女にも促した。
「まぁ!良い香り。・・・・、物だった姿の時は匂いや味は分かりませんでしたからこれも新鮮ですね!これは・・・クッキーという物ですね。甘くてサクサクしてますわ!」
「気に入ってくれて良かった。・・・では改めて自己紹介をしますわ、私はティリエス。以前の名前と違いますのでその辺りはお願いしますわ。こちらはレイ、今は訳あって女装をしてもらっています。今はレイラと名乗ってますわ。」
「了解しました、マスターは現在の名はティリエス様、今はレイラ様ですね。私の名はフラスコなのですが、きっと道具と同じ名であると混乱しますからフラスとお呼びください。」
「分かったわ、フラス。それでフラス、早速なんですが、貴女はどうして以前の私のことを覚えているんですの?貴女のように現れた道具達は私の事を覚えていませんのに。」
今までの事と今回の事を思い出しながら一番の疑問を口にしたティリエスの顔をじっと見てフラスは小さく笑った。
「マスターティリエス、それは大きな間違いですわ。皆貴女様の事を忘れてはいませんわ。」
予期していなかった言葉にティリエスは目を丸くしたままフラスを見た。
いつも読んでいただきありがとうございます。