私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。⑤)
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そうなんだよなぁ、嫌われているんだよなぁ私、なんでなのか聞いたことはないから未だ謎なんだけど。
レイの言葉を聞いて顔を伏せて唸りながら、ティリエスは独りごちる。
彼女達が姿を現した瞬間から自分には冷たい。
自分の存在は知らないが元々所持者であった自分が道具達の態度を見て、少なからずショックは受けてはいるのでこうして悩んでいるというわけなのだが・・・。
「そんなに悩むのでしたら、それ以外での方法を取るのはいかがですか?お嬢様なら良いアイテムを他にも持っていらっしゃるでしょう?」
彼の問いかけにティリエスは顔を上げ首を横に小さく振る。
「ダメですわ。確かに栽培管理の錬金術アイテムも薬剤による精製器もあります。ですが、栽培の方はここが切り離された別空間の世界ですから、成長過程を早める能力を持たせた栽培管理アイテムをこの場所で展開すればそれぞれ特性が邪魔しあって時間の流れや空間のズレが生じてここが危険な場所になってしまいます。薬の精製器でもそうですが、これらは誰かが管理や調節しないとできません。ですけど私が四六時中ここに籠るわけにもいきません。仮に拠点を護っているホルアクティにお願いするわけにも行きませんし。」
その前にあの子が繊細な作業はできない気がする。
遠くで「へぶしっ!」と勢いよくくしゃみをした音が聞こえる。
おそらく庭の池で遊んでいる彼、ホルアクティがくしゃみをしたのだろう、その音を聞いてティリエスはやはりそうかと自分の仮説を確信へと変えつつため息を吐いた。。
迷信であっても噂に出てきた対象者が直後にくしゃみをするときは大概そうだと決まっているのだ。
「まぁ確かにあの鶏がそんな器用な事できるはずありませんものねぇ。」
レイも納得して呟き、ならもうその道具達に頼むしかないのではと言葉を返された。
「やっぱりそうなるよねぇ・・・。」
「やけにお嬢様はしぶりますけど何故です?嫌われているという事実が嫌なんですか?」
「いや、別に私はそんなに落ち込んだりとかそういうわけではないんだけど・・・向こうが嫌なんじゃないかな?私の下で使われることが。私にだって嫌な環境で仕事するのって苦痛感じたような事、そういうの経験がないわけじゃないからさぁ。そういうの理解できる部分このまま呼んでも良いのかなぁって。」
ティリエスがウジウジしていた理由を聞いてレイは呆れる。
そんなことで悩んでいるのか・・・なんでたまにこう仕様もない事でウジウジするのだろうか?
「それは、お嬢様らしくありませんねぇ。別に構わないでしょう?そんな嫌な人間だと思う人間に出会うなんてまぁまぁ多いんですから。そんなの気にしても仕方ありませんし、それにそちらの配慮をするよりも私達はとにかくオーガらの生死の事を優先にすべきでは?」
「あ。」
「それを忘れていたんですか?ダメでしょう忘れては。お嬢様ってたまに脱線しますよねぇ。でもそう言われたら決まったんじゃないのでは?」
「・・・・そうだったね。薄情だな私。」
「それだけ、貴女はまだ危機感を感じていないという事です、喜ぶべきですよ。」
「でも、危ない事には違いないから・・・彼女達には申し訳ないけど。」
彼の言葉を聞いて、ティリエスは袋を手に突っ込んだ。
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