私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。④)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は5/17(金)投稿予定です。
「・・・で?」
パタンと扉を閉めながらレイラはティリエスの方を振り向く。
ティリエスは拠点に置いてあるソファに腰を下ろし質の良いクッションに顔を埋めながらレイラの問いに唸り声を上げた。
オーガ達と別れ、相変わらず行く先々で監視の目を感じながら過ごす中、彼らに何か策を講じると伝えてから何処か上の空な彼女をじっと観察していたので、その策自体彼女にとって何か問題なのだろうかと推測する。
と、彼女がゆっくりと顔を上げ重いため息を吐いているのをみてレイラは向いの方へと座った。
暫く待っているとティリエスは意を決して何かをその場で出現させたのでレイラは不思議なものを見るように目をぱちぱちさせた。
「それは確か・・・・。」
彼女の掌に収まっている高価とも思えないただの麻の袋にレイラは目を丸くさせる。
「この袋は私の意思で出現させることができる空間収納と似たもの。前に話した別空間収納、亜空間収納と私はそう言ってます。」
「あの時は詳しく聞きませんでしたが、この中には一体何が?」
「この中には過去、いえ別の世界に居た時にシナウス達の居る箱庭で私が収集した物全てがここに収納されているんです。食材や薬草といった物からこの世界で見せてはいけない物まで色々です。」
「ふーん。」
「これもどういう原理でここに存在できているのか不明な点は多いですが、とにかく私の所有物が収納されています。」
「そうか・・・ん?これはもしかしてあの双子も持っていませんでしたかねぇ?」
レイラはようやくこの袋が彼女達レッドとブルーが他の仲間が宿るアイテムを出現させた時に見せた袋だと理解する。
「そうです、これと彼女達も持っているあの袋と繋がっています。何故彼女達がこれを所持しているのかそれも不思議ですが・・・。」
「成程、つまりこれは世に見せてはいけない物が詰まった代物ということですか。しかし、何故それをここに出したんです?」
「今朝のオーガさんの話しを聞いて、少し心許無い状態ということがわかりました。ですから助力してもらおうと思ったんです。」
「まさか、あの双子らみたいな奴がここにまだ居ると?」
彼女の意図が分かったレイはジィッと開いていない袋の入り口を見つめる。
実際の彼らの力量を見たことはないが彼女達と対峙した事で纏っている魔力の量が多いことは肌で感じ取っていた。
存在自体が規格外と思えるほどの魔力量と不思議な空気を纏った者、それらを考えれば彼女達は何かしらで特化している存在だいう可能性は高いだろう。
そんな存在がこの異様な力を発している布の中に収まっているというのは、確かに彼女達の力を何かしら借りれば心配は無くなる・・・かもしれないとそう思い至る。
だが、その割には中々中身を取り出さない彼女の様子にレイは不思議に思っていると彼女は重いため息を吐いた。
「何をそんなに憂いているんです?」
「いや・・・、彼女達を使えば良いと頭では分かっているんですよ、彼女達のように人に転じてなければ私もこんな風には悩みませんが、あれ等は人の形に転じている可能性が大きい。」
「??それなら別に協力させればいいでしょう?何をそんなに渋っているんです?」
「渋っ?!・・・い、いやでも、貴方も知っているでしょう?」
「何をです?」
「彼女達が・・・私を見ている態度・・・。」
「・・・・・あ〜・・・。」
今まで彼女と関わってきた時の事を思い出し、レイはそういうことかと納得した。
「そう言われれば彼女達は貴女の事を嫌ってましたねぇ。」
それを言うとティリエスは唸りながら頭を抱えた。
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