私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。③)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は5/15(水)投稿予定です。
「あぁまだいました、おはようございますティリエス嬢。」
「あれ?オーガさん、どうしたんですこんな朝早くから。」
廊下へと続く扉を開ければオーガと少し前から彼と共に行動しているロコスの姿があった。
彼らとは昼どこかで会う約束を取り付ける予定だったが、朝から待っていると言うという事は、何かしら進展があったかトラブルが起こったかどちらかだ。
と、オーガの持っている手のひらサイズぐらいの空の瓶を見て悟る。
これはトラブルがあったな。
ティリエスは彼らの背後に誰もいない事を確認し口を開く。
「これって確か3日前に渡しましたよね?もうなくなったんですか?」
「えぇ、本来ならこの前の量だともう少し持つんですが、何故か不味いものを入れてくる量が大幅に上がりましてね。私の小食という設定でも対処が難しくなってきました。」
毒の量が増えたって事?3日で解毒薬がなくなるくらいに?
ティリエスはオーガの言っていることに驚く。
ティリエスとレイラの無毒化するのと違い、オーガの場合ある程度の毒を服毒し慣れさせた身体である為ある程度毒の耐性はあれど耐性以上の毒を大量に含むと彼の命は危うくなる。なので彼は小食というイメージを相手に植え付けさせ最悪の事態を回避してきた。それでも彼が対処出来ないと判断した際は渡した解毒薬を服用してもらっていたのだが、その少量の食事で対処できなくなってきているという事はかなりの毒の量を混入しているという事。
「それで私の作った薬が勢いよく減ったという事ですか?」
「えぇ。私で今は3粒、彼は耐性がないので5粒服用しないと危ういですから。」
成程、確かにそれだとすぐに無くなるのも頷けるとティリエスは空の瓶を受け取りレイラに渡すと、すでに次の解毒薬が入った瓶を受け取り彼に渡すと、彼は大事そうに懐に仕舞う。
「恐らく消耗戦でしょう。」
「消耗戦?」
「えぇ、私達が解毒薬を使って対処している事を向こうは既に気がついているのでしょう。それと同時に私達の物資は限られているのでこれもいつか無くなると思っているんでしょうねぇ。そして無くなったところで何かしらこちらの出方を待っているのか、それとも息の根を止めたいのかそれはわかりませんが、まぁよくないですねぇ。」
「それってもしかてこの前の監視の目が増えたのと関係しているんでしょうか?」
「十中八九そうでしょうねぇ。」
彼の言葉にティリエスは考える。
実害ほとんどないしさっきまで毒の犯人を見つけなくてもまぁいっか!なんて思っていたけどあくまで彼らが安全に過ごせると思っての事だったから害出てきているなら・・・どうしよっかな?やっぱり探した方かいいか?
薬は問題なく作れるけどこうも頻繁になってしまうと確かに材料は心許ないし、何より彼らを不安に思わせてはいけない。
せめて材料だけでもどこか外で調達するか拠点で栽培するかしないとダメかもしれない。
でも外に行くには人手もそうだし外出の出入り出来るように手配してもらう仲間もいないし・・・あ。
「オーガさん、ちょっと私なりに対策できるか考えてみますわ。」
あることを閃いたティリエスはオーガにそう言って早速今夜でもある事を試そうと考えながら、監視の目が届く前に彼らと共にここを後にした。
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