私が聖女候補なんて世も末である。(同調しているモノは異分子を感じ取る事にピカイチである。そして即座に敵とみなされる。㉒)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は5/8(水)投稿予定です。
「・・・えぇ、まぁ。」
やって来たブジョラ司祭は、何やら辺りを見渡す。
・・・やべ、早速部屋の違和感に気がついたか??
どこか落ち着きのない彼に対し、やっぱり弁償一択なのか?父アドルフにはなんて説明すれば良いのか?この世界に分割や利子という概念はあったか?など弁償代を頭の中で勘定し正直ビビりながら思っていると、彼は今度は自分達のお茶を見て一瞬だけ眉毛がぴくりと動いたので、ティリエスは不思議に思った。
「失礼、これを持って来たのは?」
「?修道女ですが?このお茶を飲んで待っているように言われましたけど、司祭様も来られていないのに2人で飲むのは気が引けまして、・・・ねぇレイラ?」
レイラに同意してもらいながらそう言うとブジョラは「そうですか。」と淡々に返事をする。
無表情な顔に平坦な声。
お茶を飲んでいないことが計算外で不満を押し殺しているのか?
そんな事を思っていると、目の前のカップ2つ共司祭の手に渡る。
「お茶が冷めましたね。新しく淹れ直して来ましょう。」
ゾッ!なんか殊勝な態度で寒気が?!
司祭がカップを手に持ったままその場に離れたのでティリエスは思わず似つかわしくないブジョラの行動に鳥肌が立つ。
今まで見てきた彼の様子からして人を顎で使いそうなのに・・・。
「もしかしてまたアッチの飲み物だから自分で淹れようとしたのかしら?」
「さぁ?案外普通のお茶を淹れてくるつもりなのでは?」
レイラの言葉に「まさか!」と思わず大声を出しそうになるのをグッと堪えた。
「いやいやいや、それはないんじゃないの?もしかしから温くなると効果が半減するとかじゃない?だから淹れ直してくるのではないのかしら?」
「・・・なら、淹れ直したお茶を鑑定してくださいよ。普通のお茶なら先に飲んでください、私もその合図を見て飲みますから。」
良いかげんのど乾いたんですよねぇと呑気に呟くレイラに対し、ティリエスはそんなバカなとそう思っていた。
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・・・本当にただのお茶淹れてきたし。
さっきのカップではなく、新しいカップにお茶を淹れて来たブジョラ司祭にティリエスは信じられないと彼をこっそり二度見する。
そんな彼はティリエスの不躾な目に気がつく事なく茶を飲んでいる。
ティリエスも彼にならってお茶に口を付けたのでレイラも続いてお茶に口をつける。
「久しぶりの紅茶ですわ。」
「・・・私の趣味の一つでして。唯一の楽しみですよ。」
ここに来てまともなお茶が飲めたことと紅茶の味に感動し口を漏らすと、意外にもブジョラ司祭が他愛無い話をして来たことに驚く。
「・・・紅茶でしたら、我が領地にもございましてよ。」
「ほう、それはそれは・・・一度は飲んで見たかったですねぇ。」
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・本日、ここへ呼び出した事ですが、貴女達に釘を刺しておこうと思いましてねぇ。」
ブジョラ司祭がカップを置き、こちらを見やる。
「あまり聖女達を信用なさら無い方が良い。」
「どうしてですの?」
「・・・でないと、貴女は・・・・・・・。」
不自然にブジョラは言葉を閉ざし沈黙するがしばらくしてまた口を開く。
そこにはいつも知る人を見下し蔑む顔をしたブジョラがそこにいた。
「くっくくく・・・。選定までもう1ヶ月半ですねぇ。ちゃんと聖女様から教えを学んでください。遅かれ早かれ貴女はここから出られないんですから。」
「・・・お話しも終わった事ですし、レイラお暇しましょうか。」
紅茶を飲み干し立ち上がったティリエスはそうだと思い出したような顔をする。
「そうそう、ブジョラ司祭。お茶を嗜むのでしたらこちらをどうぞ。」
そう言ってティリエスは服の中から容器を取り出すと、その白い塊を2つドボンドボンと遠慮なしにブジョラのカップの中に入れる。
「私の領地で取れた砂糖というものを四角に固めたものです。好みはありますがお茶にも合いますし、何より甘いので疲れが取れますの。本日のお茶のお礼ですわ。」
そう言うとブジョラ司祭はしげしげとお茶と砂糖が溶けていく様を見つめ、彼もまたそれを飲むと一瞬だけ目を見開く。
「・・・これは。」
「お口にあったようでなりより、差し上げます。・・・では。」
そう言って、2人はその場から後にした。
「・・・随分、気前がよろしいのでは?」
レイラの言葉にティリエスは振り返るとうーんっと困ったような顔をして頬をかく。
「・・・まぁあれはまた作れるのでそれは良いです。・・・よし、レイラ。」
「はい?」
「私レイラの言うとおり動いてみるよ。確かに動いた方が早く帰れるかもしれないし。」
「それは・・・とても良い事ですねぇ。」
上機嫌で言葉を返すレイラにティリエスは言葉を続ける。
「でもまだ情報が足りない。ここの事を私は知らなすぎる。」
「・・・かしこまりました。」
怪しく笑ったレイラにティリエスは若干の寒気を感じながらイーチャ司祭の元へと向かったのだった。
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