私が聖女候補なんて世も末である。(同調しているモノは異分子を感じ取る事にピカイチである。そして即座に敵とみなされる。⑲)
いつも読んでいただきありがとうございます。何時もより遅い投稿申し訳ありません。次回は5/2(木)投稿予定です。
「全く、大人って皆勝手だわ!」
オーガ達と別れ廊下を歩くティリエスが珍しくプリプリ怒っている事に、レイラは笑みを固めたまま一歩後ろを歩く。
言葉の怒気もそうだが、後ろ姿を見ても明らかに彼女がイラついているのが目に見える。
・・・怒られるのは嫌ですし、このまま黙っている方が賢明でしょうかねぇ。
「・・・言っておくけど、その中にレイラも入っているからね。」
我が身可愛さに黙ってそんなことを思っていたレイラの耳にティリエスのぼそっと漏らした声が入ってきた。見れば足を止め顔だけ後ろに振り返りジトッと此方を見ている目が合う。
そんな彼女を見てレイラはとうとう困ったような顔を見せ、さてどうやって宥めようか頭を働かせた。
本当はもう少し黙っているつもりだったが・・・・。
黙っていても飛び火したのだだからもう黙る必要はないだろう。
「大人は皆勝手な者ですよお嬢様。何せ周りの人間に同調を要求し相手を思い遣っていると言葉を言っていても腹の中では己の主張を優先させるように企んでいるんですから。でも、私はそうではありませんよ、お嬢様優先です。」
「・・・もうちょっと本音を包み込んでもらえないかしら?あと、そんな顔で言われると胡散臭いだけですわよ。更に言えば貴方も大人じゃないの?」
「あら、心外ですわお嬢様。私は貴女には嘘は言いませんよ?」
そう言っているがどこか楽しそうにこちらを見るレイラに思わずため息が出る。
「でも企むことあるじゃない。」
「まぁ、それは否定しませんけど。」
いや、否定してよお願いだから。面倒事に首突っ込みたくないんだよ。
堂々と言うレイラに再度ため息をした後、更に身体ごとレイラの方へ振り返る。
「私から見れば大人しくしてさっさとここから帰ろうと黙っている私を利用しようとしている大人達の図が見えますわ。オーガさんや聖女様達と、それでも彼らと違うと言い張る貴方とどう違うのか教えてください。」
「そうですねぇ・・・。」
やや考えてレイラが口を開く。
「貴女を利用して企むという点では私も彼らと同じでしょう。でも違う点もあります。私は貴女が言うさっさとここから帰るようにする為に動いているんです。」
言い切ったレイラにティリエスは思わず目が丸くなる。
「毒入りスープは害はないので黙っていれば問題なかったでしょう。ですが別の事で残念ながら現状貴女の言う大人しくしてたら帰れる選択がもう残っていないという事です。」
「なっ・・・んでそう思うの?」
思わず大きな声を出したティリエスは廊下や周りに誰もいないことを確認し話しを続ける。
「オーガは兎も角、聖女ですが、私にはどうも他にも何か隠し事をしているように見えるんですよ。それでいてその隠し事というのは何か探していること。本来の聖女として役割であるここの不正を見つける事ではなくもっと、深い何かを・・・です。」
「え・・・えー・・・。」
そう言うとレイラはとても良い顔を見せ、ある壁に手をかける。すると、ガコンと大人一人通れるような隙間が出来、そこから地下へ続く長い階段が見え、ティリエスは思わず凝視した後で未だにっこり微笑むレイラを見る。
「というわけで、私聖女様を尾行してみたんですよねぇ。どうします?お嬢様。」
レイラが楽しげにそう問いかけた。
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