私が聖女候補なんて世も末である。(同調しているモノは異分子を感じ取る事にピカイチである。そして即座に敵とみなされる。⑰)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回はすみませんが4/27(土)投稿予定です。
「あぁ、すみませんねぇ。最近はこの者と、一緒に行動していたので既にご存知と勘違いしておりましたよぉ、すみませんねぇ。」
「あらぁ、こちらこそすみませんねぇ。最近忙しくて一緒にお食事できませんでしたからねぇ。」
互いが互いに黒い笑みを浮かべる。
実はここ最近、ティリエスが聖女、もといマルフェ達と行動を共にしたことでオーガと会う時間が作れなくなりずっと会えずにいたのだ。
昨夜会う約束をしていたのだが、それも断りバルバラ達に会っていたのでオーガとは1週間ぶりと言う事になる。
オーガさんが不貞腐れているのは作り置きのご飯ばっかりだったからなんだろうなぁ。
滅多に心の内を見せない彼ではあるが、今回は分かりやすいほど彼の思っていることが透けて見えた。
今度プリンを作ってくれると言っていた約束、忘れてませんよぉ?
もう、だから今朝謝ったじゃんか、いい加減機嫌を直してくださいよ〜。
2人で以心伝心していると先にオーガが普段の彼に戻る。
「冗談ですよ。紹介しますね、彼はロコス。私の身の回りのお世話をしてもらっています。」
「ロコスさんですね、初めましてティリエスと言いますわ。」
そう言うとロコスは遠慮がちに会釈し顔をさらに隠すように顔の布を手で弄る。
チラリと見えた手の甲は昔にひどい火傷を負ったような痕が見え、ティリエスは何故顔を隠しているのか悟る。
「彼は昔の傷で声が出せないんですよ。」
「そうなんですね。」
「えぇ、ですから彼には紙とペンを渡していますのでそれで会話するように言っています。幸い、彼は文字が書けますのでね。」
ガタイが良いから農夫かなと思ったけど、文字が書けるならもしかして騎士とかの身分だったんだろうか?
「彼が珍しいからってそんなに見ないであげてくださいよ。これでも緊張していらっしゃるんです。」
彼をじっと見ているとオーガに小言を言われ素直に謝る。
確かにずっと見つめられるのは嫌に違いない。
「まぁ、そんなことより。聖女様は如何でしたか?」
「お優しい方ですよ、勉強の方でも私の事を見てくださってますし、すごく物知りな方ですわ。」
これ言っている事全部イーチャ司祭の事だけどねとティリエスはいけしゃぁしゃぁ嘘をつく。
聖女であるマルフェはいつもどこかへフラッと消えるので彼から教わったことは今の一度もない。いつも教えてもらっているのはイーチャからだ。なので、嘘を本当のように言うにはイーチャの事を聖女だと偽って言うしかない。
聞いてはいないと思うけどこんな往来の場所でうっかり本当のことを言って変に探らせたくないしね。聖女は四六時中私にベッタリだと思わせておいた方が何かと都合が良いはずだ。
そう思っているとオーガは一瞬だけ薄目から眼を開けたあとまた薄目に戻る。
「そうですねぇ、そのようにしていた方が良いですよねぇ。」
言っている内容の裏について大概把握できるオーガが何故か言葉にして自分に言い聞かせていることにティリエスは首を傾げる。
「ちょっとね、最近多いんですよ・・・視線が。」
そこまで言われて、食堂にいる人間の一部がこちらを向いていることにティリエスはようやく理解した。
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