私が聖女候補なんて世も末である。(同調しているモノは異分子を感じ取る事にピカイチである。そして即座に敵とみなされる。⑮)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は4/22(月)投稿予定です。
「私もクリメンスも食べ物を貰えてすごく助かるから。」
「まぁ、確かにここの料理は少ないですからねぇ。栄養も偏ってますし。」
毎日食堂で食事を食べているが、思い出せば思い出す程涙が出てきそうなほど質素過ぎるし、自分に至っては毒草ふんだんに使ったものである。色んな意味であの食事は偏り過ぎである。
毒草なんて私達の食事ぐらいにしか混入していないと思うけど、念の為にマルフェさんには言っておく?
でもそうなると毒草食べててピンピンしてる自分達の事を言わないといけないし・・・。
因みにマルフェ司祭達はここでの食事に口をつけず自分達が持ち込んだものを食べている。
表向きは忖度しないように教会を見定める為という事らしいが、恐らく毒殺や暗殺を避ける為だろう。
・・・まぁ、いっか。言えば面倒な事になるなら言わなくて。それに彼等の命を脅かす事はそうそう無いはずだし。
ティリエスはそう結論付けバルバラの方を見ると美味しそうにパンを食べていた。
「うーん!この前もそうですけどティリエスさんが持ってきた物は全部美味しいです!ね!クリメンス。」
バルバラの問いかけにクリメンスは食べながらコクコクと首を縦に振る。
その様子にティリエスはホッとしながらも、そう言えばあることを思い出す。
「そうでしたわ。クリメンスさんに会えたら伺おうと思っていたことがあったんですの?今聞いてもよろしくて?」
急に改って言われたクリメンスは首を傾げながらも自分に頷くのが見え、ティリエスは何かを取り出し目の前にそれを出した。
「前回、ここで作法を教わった際にこれを私に渡してくださいましたよね?あれから比較して読み比べてみましたが、所々違うという事は理解できましたわ。でも、それだけではクリメンスさんが最後に言った『ここが特別』という答えは見つかりませんでしたの。」
そう言うと、クリメンスは食べる手を止めジッとティリエスを見つめる。
まるで何かを見定めるようなその目つきにティリエスは笑顔で対応した。
「それが一体なんなのか?少しだけ気になったのですけど。教えてはもらえないのでしょうか?」
その言葉にクリメンスは何か考え込むとバルバラの方を見やる。
バルバラはクリメンスを見て口を開いた。
「え?・・・答えを教える事はできないけど、これは教えられる??」
バルバラがそう言うと、クリメンスは立ち上がり、本棚の方へと向かう。
指も使って書物を確認しながら追って探していたが、ある書物で手が止まり、それを抜き取った。
そして今度はそれをティリエスの方へスッと差し出したのでティリエスは思わず手を伸ばしそれを受け取った。
これまた随分古い書物・・・・ん?
「これは童話ですか?」
1枚目の捲った項に掠れてはいるが可愛らしい赤ん坊とそれを抱いている女性らしき絵が描かれている。
「あ!懐かしいです!女神様の子だ!あれ!?クリメンス帰るの?!」
近くまで寄って覗き込んだバルバラが答える。それと同時にクリメンスは軽く会釈して去って行く後ろ姿が見えた。
「急にどうしたんでしょう?」
「分からないです・・・、何か用事を思い出したのかも。あ、でももうこんな時間なんですね。そろそろ帰らないと。」
急に出ていったクリメンスに2人して首を傾げたが確かにもうこんな時間だとそろそろお開きを伝える。
「まぁ、いいか。後でクリメンスには言っておきます。ティリエスさんも読んでみてください。私その話が好きで何度も読んでもらったんです。」
「そうなんですね、そんなにオススメなら早速今夜にでも読んで見ますわ。」
バルバラにそう言って図書室を後にした。
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