私が聖女候補なんて世も末である。(同調しているモノは異分子を感じ取る事にピカイチである。そして即座に敵とみなされる。⑬)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は4/17(水)投稿予定です。
成程な。良いように使おうとして私を使おうと。なんて奴だ。
男が都合の良い時だけ人、それも女を利用するなんて・・・なんかダメ男みたいな発言になったな・・・ん?待てよ?それじゃぁもしかして。
「私を使って時間稼ぎするのは理解しました。それでは私が授業を受けていると思わせている間は調べるために時間をお使いになるという事ですよね?」
となると、元々かったるいなと思っていた勉強が免除されるということになるってことか!
思わぬところからサボれるかもしれない口実になるかもしれないと、内心小躍りしながらティリエスはマルフェ達の言葉を期待の目で見つめる。
「そうだね、そういうことで君を利用させてもらおうと考えてはいるよ。」
やったー!!この時間何をしようかなぁ、3時間もあれば拠点で凝ったお菓子作りしてもいいし、昼寝してもいいし。いや、お母様のおかげで最近薬学に精通してきたしいっそうのこと新しいポーションとか作ってみても良いなぁ。この世界にはポーションやそれぞれに合った状態異常回復薬はあってもエリクサーとかいうなんでも治せる上級な代物は存在していないみたいだし、研究すれば何かヒントが生まれるかも!
「でも、勉強はきちんと受けてもらうよ。」
「え?!」
なんでだ?!
空き時間を利用してあれやこれやを思い描いていたティリエスは夢から覚める思いで聖女に扮しているマルフェを見つめる。
マルフェはにっこりと笑ったままこちらをみていた。
「だって、教わっていないと貴女に教えてないことが分かれば用済みと言わんばかりに帰されるかもしれないし、下手したら何か探っていたということも分かってしまうからね。それだけならまだしも」
貴女も協力者と思われて今以上に監視の目が強くなるんじゃないかな?
「・・・・・・・・・・・・・・。」
に、ニコニコして言う台詞じゃない!巻き込むつもりないって言いながらバレたらすごい巻き込まれるじゃん!私!
現在置かれている状態を完全に理解したティリエスはマルフェの綺麗な笑みに寒気を感じ顔が引き攣るを感じる。
思わずレイラの方を見ると彼は黙ったまま見てるだけで何も反論がない様子に思わずキュッと唇を噛む。
レイ・・・分かってて黙ってたな。
元々首を突っ込みたいと言っていた彼のことだ。彼はこういう事に自分より聡い、こうなることは予測できていたはずだし回避もできたはずなのにそれをしなかったというのが何よりの証拠だろう。
これが外堀・・・、おかしいな。私だってファンタジー系の恋愛小説で相手に外堀を知らず知らず埋められていく過程を読んで、「良いぞ、もっとやれ。」なんてニヤニヤ笑って胸を躍らせていた時もあったけどさー。
・・・同じ外堀でも、なんだこれ。ただただこれからやらされる事を想像して恐怖しか感じないんだけど。
「なので、貴女の命を守る為だと思って頑張ってお勉強しましょうね?」
ドンっ!とテーブルの上にどこからともなく現れた書物をイーチャ司祭が置く。
少し離れた場所にある机の上に置かれても分かるぐらいのその多さに、ティリエスは目眩を覚えたのだった。
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