私が聖女候補なんて世も末である。(同調しているモノは異分子を感じ取る事にピカイチである。そして即座に敵とみなされる。⑩)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は4/9(水)投稿予定です。
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・・・いや、重たいじゃん。あんな話し。
「ですから言ったでしょう?聞くもんじゃないと。」
「私が何を考えているのかよく分かりましたね。」
「今の貴女の顔を見れば分かりますよ、誰でもね。」
久しぶりに誰かが用意した食事をたらふくご馳走になったティリエスは、お腹をさすりながらげんなりな表情を見せていた。
拠点に戻った途端、そんな顔のティリエスにレイラの変装を解いたレイは向かい合わせに座ると食後の酒を飲む。
お腹もいっぱいなせいもあるが到底何かを口にする気が起きないティリエスにとって、レイがつまみながら優雅にワインを飲む様に唖然とする。
「貴方も、よくあのような話しを聞いた後で美味しそうに飲めますね?」
「飲めますよ、私には関わりのない事ですし。それに話しは2年前の出来事、もう過去のことでしょう?」
「それは・・・そうですけど。」
でもだからといって親しい人が殺されて解明も糾弾もできずに2年も沈黙するしかなかったなんて、随分悔しい思いをしていたはずだ。
自分がそんな立場になったなら・・・と考えてしまう。
「お嬢様は優しいですねぇ。自分に置き換えて相手の心情まで汲み取ろうとするんですから。」
「優しいと言いながら、なんだか少し棘のある言い方ですね。」
「そう聞こえたのなら申し訳ありません。」
そう言ってレイはワインを一口飲む。
「でもそれを置き換え考えたとしても、何もなりませんから。それに貴女がそのように考えなければならなくなるような事、私が必ず阻止しますよ。ですから無意味です。」
そんな堂々と言ってのけて・・・出来たら凄いけどさ、心配になるのって普通じゃない?
「えー・・・お嬢様の顔を鑑みるにこれだけ言ってもそんなに些細なことが気になると・・・それなら、今後のことを考えるというのは?」
「今後の事?・・・例えば?」
「それはズバリ、その事件を手伝ってあげるというのはどうです?」
「え?」
「お嬢様はそれを聞いて憂い必要のない心配している。では、あえて首を突っ込んで解決すれば解消されるのでは?」
「そんな簡単に言って・・・でもイーチャ司祭やマルフェ司祭の様子から見て、釘を刺されたんだと思いますよ。首を突っ込むなって。」
だから、敢えてこちらが探る前に種明かしするように理由を淡々と話したんだとティリエスは今回の食事会で理解しているし、面倒ごとに関わりたくないのが本音だ。
それに、自由に歩くことができないこの状況下で手伝って余計に何か起これば彼らの足手纏いにもなるだろう。
「私は無事に家に帰ればそれで良いんですけどね。」
「えー?お嬢様それ本気ですか?少々腑抜けになったのでは?」
「腑抜けって随分私を・・・待った。」
ティリエスはある言葉が頭を掠め、じっとレイを睨むように見つめる。
そんな彼女を見てレイは軽くニコッと笑った瞬間、理解した。
「貴方、もしかして退屈だから首突っ込もうと私に勧めてません?」
「・・・・・・・。」
沈黙は肯定じゃんか!
呆れた理由にティリエスはため息をする。
「貴方の暇つぶしの為に司祭様達は動くんじゃないのですよ?」
「それは分かってますよ。でも、手伝えばお嬢様の願いが叶うかも・・・いいえ、そう確信してます。」
「そう思うのはここの教会が怪しいから?」
「お嬢様も流石に教会という特異な場所であっても、ここは異様だと頭では分かっているでしょう?」
確かにその言葉に否定できない。
ここに来てまだ3週間ぐらいしか経っていないが、おかしいことは理解している。
だって意識混濁する毒草入りのご飯提供するか普通?無いだろう普通に。
・・・仕方ない。
「レイ。」
「はい。」
「もう少し深くまで調べられる?」
その言葉にレイはにっこりと笑みを浮かべた。
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