私が聖女候補なんて世も末である。(同調しているモノは異分子を感じ取る事にピカイチである。そして即座に敵とみなされる。⑨)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は4/8(月)投稿予定です。
4/6追加 告知 新しく投稿します、「白蛇騎士様、私に執着しないでください。」はシリーズ作品として投稿しますので、こちらも生暖かく読んでいただければ幸いです。
「ちょっと食事がてら聞いてほしいんだけどね。まぁ、話せることだけだから全てじゃないけど。」
「え?」
「お嬢様、こういう時は聞かないほうがいいですよ。ややこしい話しと相場が決まっているんですから。」
「まぁまぁそう言わないでよ、昔話をするだけだから。」
用意してもらっていた食事がてら、教会の内情を知らないティリエスの為にマルフェ達は答えられる範囲で教えてくれた。
まず教会には先ほどから出てくる派閥がある。
穏健派・中立派・そして強硬派。
それぞれを行き着く先は神を崇め奉ることではあるが、それぞれに思想が違いそれゆえに対立しているのだそう。
まるで貴族社会と同じだ。
それを纏めて上にいるのが数人の古株である枢機卿そしてその頂点にいるのが教皇であり聖女達は教皇直属の部下という立ち位置の為、どこの派閥に与することなく教皇の目となり耳となり動く立場となるーーー。
「でも、ある時から聖女の役割は曲げられてしまったんだよ。」
落ち着いた顔でマルフェは話しを続けた。
本来なら一番の公平な目で見る役割となる立場の人間が、時代とともにその役割を変化させそれぞれの聖女達の思想はその派閥先の思想に似た聖女が就任するようになり、酷い時期では教皇と派閥の間で暗躍するような聖女も出てきていたのだとか。
「あの時は大変だったよ、でもそれでも僕も根っからここにいる人間だからイーチャ司祭たちと共に奮闘したわけ。」
腐敗していく教会にいち早く危惧した現教皇やマルフェ司祭達が、マルフェ司祭が名を変え聖女として就任することになってすぐ、聖女達の中を一度綺麗に掃除をし膿を出した、らしい。
どんな風に内部の膿を出したのか気になるところではあるが、兎も角、その掃除のおかげで派閥より教皇に忠実な聖女達が比較的集まりある程度機能しているとか。
だがそれも2年前に崩壊した。
「2年前ですか?」
「うん、勿論君のこともあったからだけど個人的に、イーチャ司祭と僕がここに来た理由がそれなんだけど。」
そう言って彼はそのある事を口にした。
ある日、強硬派で聖女を務めていた女性が1人亡くなる事件が起きた。自殺ではなく明らかに他殺された姿でだ。
当時強硬派には2人の聖女。
強硬派は何かと問題を起こす派閥だったので、教皇が命じてのことだった。
亡くなった聖女はマルフェと付き合いの長く友人である聖女、もう1人の聖女は聖女として長い年月役割を行っていたどちらも信用における聖女だった。だが友人の聖女がもう1人の聖女の行動に疑問を持ち、ある時からその聖女の行動を監視する役割を担っていたのだとか。
あの聖女は得体のしれない何かを隠している。
その聖女をマルフェ達は問い詰めるつもりでいたのだが、それより先にその聖女は行方をくらませ、そして監視をしていたその聖女が亡くなる事態となったのだ。
だがマルフェは彼女が亡くなる直前にこの教会の事を言っていたのを覚えていた。
亡くなった彼女曰く、ここには何かあると。
彼女の言う何かがあるという事実をで突き止められず確証もない、加え彼女が亡くなった場所は随分ここから遠い場所にあった古びた教会の中だった。
でも、それでもマルフェはここが無関係だとは到底思えなかったのだ。
「何度もここに行く機会を伺ったけど、強硬派に邪魔されてね。そうしている間に2年も時間が過ぎてしまったよ。でも、ようやくこれでここを調べられる。」
そう言って礼を述べるマルフェに最後の食後のお茶を飲みながらティリエスは複雑な思いで彼を見つめた。
いつも読んでいただきありがとうございます。