私が聖女候補なんて世も末である。(同調しているモノは異分子を感じ取る事にピカイチである。そして即座に敵とみなされる。⑧)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は4/5(金)投稿予定です。
目の前で不敵に微笑むマルフェに対しティリエスは不躾に何度も彼を頭の先から足の先まで見る。
着ている服が一瞬にぶかぶかになった・・・ということは。
「マルフェ司祭は実は女の人なんですか?!」
「あっははは!」
ティリエスの言葉にマルフェは声を出して笑う。女性特有の可愛らしく声高に笑い、しかしこの世界の女性であればこんなに口を大きい開け笑うはずが無い、そんな姿を見せたマルフェにティリエスは目を丸くさせた。
「ごめんごめん、まさか、女装を通り越して性別詐称していたと思われるとは思わなくて。」
「えぇと、違うのですか?」
まさかここに魔法で女装している奴を見て比べたからとは流石に言えない。
「僕はれっきとした男だよ。」
「ではその姿は一体・・・背も縮んでますし体躯も変わってますしそれに・・・。」
ティリエスはさっきまでなかったマルフェの胸の膨らみを思わずじっと見つめる。
・・・B、いやこれはCはあるな。
女性の象徴であるそれを密かにサイズ予想していると不躾に見ていたのが気になったのか腕で軽く胸を隠すようにした。
「そんなに見られると僕でも照れちゃうよ。まぁ、冗談はここまでにしよう。僕は男だけど、教会の宝物庫に保管されているこの指輪は嵌めた人の性別を変換することができるんだよ。大昔の錬金術の遺物だそうだ。」
「性別が変わる・・・それって後で何か後遺症とかはないのですか?」
本来の身体を作り変えるなんて、何か危ないような気もするんだけど?
「まぁ、確かに文献によれば本来なら見た目だけで女性機能は存在しない身体がこの指輪で長時間嵌め続けて本当に女性のように子を成せた事例があったから、短時間の使用を義務付けられているね。といっても長時間ていうのが年単位を指すから故意に嵌め続けない限り自分の害にはならないけどね。」
安全だけど安全基準に則ってのことですか・・・まぁそれなら大丈夫か。
「というかそれここで聞いていい話しなんですか?」
「うーん、機密事項だし本当はダメかもしれないねぇ。」
「え」
「でも、ティリエス嬢が黙っていれば大丈夫だから。」
げ、しれっと秘密を共有された。そういうのやめて欲しいんだけど、いらない情報無理矢理教えないで欲しいよね。
教会の機密事項をしっかり聞いてしまったティリエスはげんなりしつつもマルフェをほんの少し睨む。
いつの間にか指輪を外し元の姿に戻ったマルフェはお茶を飲み干していた。
「さて、今回来たのは現聖女達の中では僕が一番身が守れるのと君をどうにか穏便に帰すための模索をしにここに来たんだよ。」
「先ほどとは違う意見ですね?お嬢様を教会の手中に収めたいという魂胆だったのでは?」
レイラの言葉にマルフェは困ったように首を傾げる。
「確かにそう言ったけど、さっきも言ったように無理矢理は僕達も考えていないんだよ。それに穏健派は君の家に過去不遜な態度をしたのにも関わらず、今まで多く援助してもらっている事。さらには僕達に対しいつも中立を保ち続けているその高潔さには教会の真っ当な考えを持つ人間達には感謝している。だからティリエス嬢の強引に起こした今回の件について穏健派中心に多くの教会の人間達が強硬派に対立している。だから僕がここに要請されたわけなんだけどね。」
自分のことだから大きないざこざになってほしくないけど。
「でも、教会の方にも私達を尊重してくださる方がいるのは心強いですわ。」
「君からそう言ってくれると僕達も心が少し軽くなるよ、ありがとう。」
「いいえ、そんな。・・・ではイーチャ司祭もマルフェ司祭と同じで同行を要請されたんですね。すごく遠かったのではないのですか?」
イーチャ司祭の年齢のことを考えティリエスがそう言うとイーチャは穏やかに笑う。
「大丈夫じゃよ、それにワシも少しここには用事があったのでの。」
「用事ですか?」
「うむ、何ちょっとしたモノを探しにの。」
イーチャの様子にティリエスが首を傾げると、マルフェがポンと手を叩いた。
「そういえば、そろそろお腹すかない?」
そう言われたティリエスは準備が忙しくてほとんど口に出来なかったことを思い出した途端、盛大に大きな腹の音が鳴り真っ赤になった。
いつも読んでいただきありがとうございます。