私が聖女候補なんて世も末である。(同調しているモノは異分子を感じ取る事にピカイチである。そして即座に敵とみなされる。⑦)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は4/3(水)投稿予定です。新作の方は今週土曜日4/6投稿予定です。
「今までの話しを聞く限り、教会の中では私達家族の事はそれだけ有名だったのですね?」
「えぇ?今更だよそれ?!」
「これマルフェ。」
思わず返した言葉にイーチャはマルフェを叱る。
「でもさイーチャ司祭・・・いや、あの人ならありえるか。」
反論しようとしたマルフェは思い直す。
あの人、彼女の父親アドルフならそれぐらいやってのけると理解しているからだ。
ティリエスは彼らの様子に何かを察しながらお茶を一口飲む。
香りからしてハーブティーだろう、甘いリンゴのような香りにホッとした。
「・・・思えば父は私が王都へ向かうまで領地に留まるようにしていましたわ。きっとその中に教会のことも含まれていたんでしょう。」
「アドルフ様は慎重で且つ用意周到なお方じゃて。しかし、今回は防げんかった。本来なら、ティリエス様の王位継承権の剥奪はわしら教会の耳に入ることのない。意図的に誰かが漏らしたんじゃろう。」
「そうですね・・・私の領地には教会はありませんから外部の仕業でしょうね。」
その誰かに心当たりのある人物にティリエスは思わず眉を顰める。
今度会ったらあの王子引っ叩いてやろうと心に決めながらイーチャ司祭の方を見た。
「それより驚きましたわ。まさか今回の聖女様御一行にイーチャ司祭とマルフェ司祭も一緒に来られるなんて。」
「まぁ色々揉めはしたけどね。それに今回の訪問は僕達が考えたからね。」
「え?そうなんですか?」
イーチャの代わりにマルフェが答える。
「そうそう、聖女様達も暇じゃないのにね。」
「聖女様達?聖女様って1人じゃないんですか?」
「まさか。聖女はあくまで教会の象徴の一つ、女神の代理人としての扱いだ。その役割がたった1人でできる訳がない。それに神と対話だけでは人との共存は難しい、私達は神だけではなく人間とも対話しないといけないからね。だから聖女は数人存在しているし聖女の筆頭を教皇として力のバランスを図っているんだよね。」
「だから数人いらっしゃると・・・では数人居られるなら今回私が候補として任命されなくても良かったのではないのでしょうか?」
正直教会からすれば私は信仰心の薄い異分子。
そんな人間が中央にくれば少なからず教会の中で波紋が生まれるはずだ。
考えや教えを統一させたい教会ならわざわざそんなリスクは避けたいはずだろう。
自分の言葉に賛同すると思っていたマルフェ達の顔を見ると、彼らは複雑な顔をしてこちらを見ていたのでティリエスは目をぱちぱちさせた。
「え?もしかして皆さん、私が聖女になった方が良いと考えていらっしゃるんですか?」
いや、やめてくださいよ。前々から思っていたけどどう考えても私が聖女候補とか世も末だと思うぞ?
「君は嫌かもしれないけど君にその気があるなら聖女を勤めて欲しいかな、と思うよ僕は。それだけ君は教会にとって魅力的だから。でもだからといってこんな無理矢理は反対だけどね。」
「うーん・・・そう、ですか。」
マルフェの曖昧な答えにティリエスも曖昧に答える。
知り合いだったから味方だと思っていたけどもしかしたら全てが味方ではないのかもしれないと考える。
悪い人達ではないが、ごめんね。聖女になる気はさらさらないんです。
「・・・あ、そういえばここにやって来た聖女様は?彼女にお世話につかなくてこんなにゆっくりしてても良いんですか?」
話しを逸そうとティリエスは2人に向かってそう言うと2人は顔を見合わせて急に笑う。
突然笑うのでティリエスが困惑しているとマルフェが何かを取り出した。
「それは大丈夫。君の目の前にいるから。」
「それってどういう・・・え?!」
マルフェの言葉にどう言うことか聞こうとしたが思わず話しの途中で驚く。
マルフェが取り出した指輪を右の中指に嵌めた途端、先ほどの聖女の姿になったからだ。
「これが、聖女の正体だよ。」
どう?驚いた?と優雅に笑う目の前の聖女にティリエスは困惑した。
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