私が聖女候補なんて世も末である。(同調しているモノは異分子を感じ取る事にピカイチである。そして即座に敵とみなされる。⑤)
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思ってもみなかった人物の登場に、ティリエスは目を丸くしてマルフェを見つめていたが彼は彼女に目を合わすことはなく、笑みを浮かべたままのマルフェはブジョラの方をじっと見つめたまま微動だにしなかった。
・・・笑み浮かべて動かないって、なんだか逆に怖いんだが・・・あと圧がやばい。
笑みを浮かべているがマルフェから放たれる妙な圧を感じるその空気にティリエスは身が縮こまる思いをするが、その圧を一身に受けているブジョラ自身は涼しい顔のままマルフェの方を見ていた。
「おや、戻ってこられて一体どうされたんです?聖女様を放っておいては問題になりましょう?」
「聖女様にはイーチャ司祭がついてますから問題ありません。それにここは教会、聖女様に害をなす人間が居るはずないじゃないですか。なぜわざわざそのように?」
笑顔でなかなかな一言を言うな、この人。
暗に言えばここには害する者が居るのかと言っているのと同じである、というか笑顔でもう喧嘩ふっかけてるよなこれ。
「・・・いいえ、まさか。ここは誰もが救われる聖なる領域。そしてその象徴である聖女様を害するなんて・・・なんとも心外ですな。」
何か癪に障ったのか彼の背から苛立ちが見え隠れしているのをティリエスはチラリと横目で確認する。
まぁ‘、聖女候補を留める教会なのだからその言葉は聖職者にとって心外だろう、ただ目の前の彼がそこまで信仰心が厚いとは思わなかったが・・・。
だんだんと空気が重くなっていくのをただ傍観していると、不意に急に多くの視線を感じ後ろへ視線をやってギクリと顔を強張らせた。
いつの間にか後ろで立ったまま静かに扉を見てた他の聖職者達全員の視線がこちらへ向けている。
しかもその視線はマルフェ一身に向いていた。
音もなく振り返り瞬きもせず好感も嫌悪も表さずただ一点を無表情で見つめているその光景に、ティリエスはなんだか寒気を感じ思わず両腕をさすった。
「あれ?ティリエス嬢寒いんですか?」
「え?えぇ、少々この衣装薄着ですから、少し寒くなりましたわ。」
恐らくこれだけの視線が向けられているのだから彼自身も気がついているはずなのに、何事もなく心配して声をかけてきたマルフェに心が鋼すぎるだろうとそんなことを思いつつ、ティリエスは彼に話しを合わせた。
「それはいけないね。ちょうど僕たちの部屋でお茶を振る舞う予定だから一緒に行こう。」
「え?」
「ブジョラ司祭も構わないよね?この子がすべきことは終わったのだから、あとは君がすべきだろう?」
聞いている割には有無を言わせない言葉にブジョラは振り返りチラリとこちらを一度一瞥したがすぐにマルフェの方を向く。
・・・表情見たの一瞬だったけどイラついてんなブジョラ司祭。
「えぇ、そうですね。あとは私が請け負いましょう。」
「だって。じゃぁティリエス嬢一緒に行こう、あと後ろの女性も・・・えっと。」
「レイラと申します。」
「じゃぁレイラも一緒に。」
そう言ってマルフェはティリエスの手を取り歩き出したのでティリエスはそのまま歩きだす。
え?!もしかしてこの状態で行くの?ちょっと・・・これマジ勘弁してほしい。
周りの視線がこちらへ向いたままで居心地悪くなったティリエスだったが不意に気になったティリエスは思わず後ろを向く。
いや・・・なんで貴方が一番怖い顔してるのよ。
後ろを見た瞬間、こちらを苦々しく見ているブジョラの顔が霞み明らかに怒り狂っているレイラの顔の方が迫力があり目がそちらへ向いたティリエスは呆れながら聖堂を後にした。
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