私が聖女候補なんて世も末である。(同調しているモノは異分子を感じ取る事にピカイチである。そして即座に敵とみなされる。④)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は3/27(水)投稿予定です。
ティリエスは儀式を手順通りに始めた。
祭壇に上がった聖女様の前にティリエスは手順を思い出しながら祭壇に設置していた聖杯に聖水を注ぐ。
後は聖女の前で聖書の一部を読み上げ一歩下がり聖女の前でゆっくり跪き頭を下げて待てばいい。
そうすれば儀式は聖女自身が行いここを退室すれば儀式はひとまず終える事になる。
もー本当。一時はやりたくないやりたくないってばっかり思ってたけどやればあっという間だったな・・・それにしても。
やっべー、美人すぎないか?聖女様。
黙って俯いたまま先ほど見た聖女の姿を思い出す。
薄い水色の髪とその瞳には清廉な印象を受けたし、何より顔が作り物のように綺麗でその笑みもまた綺麗すぎるが故に引き立つ。レイがレイラとして扮している姿も美人ではあるがなんというか種類が違う。
人としての美しさといえばレイラの姿で神秘的な美しさと言われれば聖女だと思ってしまう。
でも・・・最初は圧倒されて思えなかったけど今一度彼女の姿を思いだすと、誰かに似ているような・・・会ったことがあるような?・・・でもあれだけの美人と出会って忘れることってあるか?
もう一度見たいと思わず頭を上げそうになった自分の頭を慌てて下げ続けると、頭上では聖女が最後に周りの人に謝辞を述べている声が聞こえてきた。
そして、音もなく誰もが一斉にさらに深く頭を下げたのが気配でわかり、その気配でティリエスもそのまま両腕を前に掲げた。
そして、また人の歩く音と鈴の音が聞こえ、その音がだんだん遠ざかり開いた扉から去っていく気配を感じ取った後、また静寂に戻った聖堂でティリエスはゆっくりと頭を上げ両手を下ろし深く息を吐いた。
聖女達一行がいなくなった・・・つまり儀式はうまく行ったということである。
思わずその場に座り込みそうになったのを堪えゆっくり立ち上がり振り返ると、周りの神父達、修道女達もゆっくりと頭を上げ閉められた扉の先を見つめている後ろ姿が目に映った。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
近くに控えていたレイラがやって来たのでこくりと頷いた。
「えぇ、なんとか。変じゃなかった?」
「大丈夫でした、聖女達一行はお嬢様を見てどこか関心していましたよ。」
静かな空間で他の人間に聞こえないように小言で話し合っていると、急に扉が開いたので2人もそちらを見ると意外な人物に驚き一瞬にしてその人物を冷ややかに見つめた。
そうこうしているうちにそのやってきた人物がティリエス達の前にやってくるまでそう時間は掛からなかった。
やって来たその男はティリエスの目の前で軽く礼をする。
「これはこれはティリエス様。先ほどのお務め、素晴らしかったですよ。」
にっこりと笑ってそう言ってきた人物、ここの教会の司祭であるブジョラに対し、ティリエスは冷ややかな笑みで会釈する。
儀式の時は頭を下げていたから分からなかったが、何処かでブジョラは見ていたらしい。
「そう言っていただけて嬉しいですわ。でもいらしていたなら声をかけて下されば良いのに、ブジョラ様は今までどちらに?」
帰って来たんならさっさと来てお前がやればよかったんじゃないの?と皮肉な心を込めてそう言うとブジョラは笑みを深めた。
「私も聖女様と同行していたんですよ、他の者から貴女が代理を務めると話しを聞いた時は驚きましたよ、えぇ本当に。そのように完璧であれば直ぐにでも聖女として勤めも安泰でしょう。」
「それは早計じゃないかブジョラ司祭。」
何勝手な事をと静かに怒っていると懐かしい声が聞こえティリエスはその後ろにいる人物に目をやる。
「え?マルフェ様ですか?」
「やぁ、ティリエス嬢。また会ったね。」
ティリエスに名前を言われた司祭マルフェはニコッと彼女に笑みを浮かべ答えた。
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