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題名はまだない。何せこの物語はまだ途中なんで!  作者: ちゃらまる
第7章〜教会編〜
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私が聖女候補なんて世も末である。(その行いは美徳だろうが己の意思がなければそれはただの苦行である。㉜)

いつも読んでいただきありがとうございます。次回は3/16(土)投稿予定です。


同じ修道服を着ているが線が細いせいか座ってお辞儀する様はまるで人形のように見え、ティリエスは内心本当に人間なのか疑いそうになる。

アイルお兄様も美しい人間に類するが、お兄様の場合生に溢れ煌めく美しさと例えるならクリメンスはどちらかというと儚げな憂いを持ったどこか消え入るような妖精のような美しさである。


髪の毛もサラッサラしてるし、もしかして地毛でそんなに?それともお手入れしているから?


ティリエスがそんな事を思っているとクリメンスが黙ったままちょいちょいとバルバラを手招きするので不思議そうにバルバラはクリメンスに寄って行くと何やら彼女の掌をとって指で何か書き始めた。

そのまま口で言えばいいのにと思ったが彼女の細い白い首にはくたびれた包帯が巻かれている事から声が出ないのかと理解する。


「えっとティリエス様なら大丈夫だと思ったの。それじゃ、駄目・・・だった?」

不安げなバルバラに何か言いかけるように咄嗟に口を開いたクリメンスだったが、何か諦めたように目を伏せ首を横に振る。

「クリメンスさんにとって何か不味かったでしょうか?」

「え?あぁいえ、名前を教えるのはまずいんじゃないのかって。ここでは名前で呼び合っちゃいけないから。」

「あぁ、ここのルールでしたか。私は名前の方が嬉しいですし、気をつけますわ。因みにクリメンスさんは何番と言われているんですか?」


ティリエスの問いかけに気を取り直したクリメンスが3つの数字を手で教える。


「5・・・3・・・4、534番ですわね。分かりましたわ、覚えておきます。先ほどのやり取りでもそうでしたけどもしかしてクリメンスさんは声が出ないのでは?」

クリメンスは躊躇もなくこくりと頷きそっと喉をさする。

「クリメンスは昔怪我をしてから声が出ないの。だから1人作業することが多くてあまり会えないんだけど、よくここで本を読んでいるの、ね!」

バルバラの言葉に同じようにコクンと頷く。

2人を見ていると隣にいたレイラがいつも間にかバスケットを出して手に持っていた。

空間収納から出したそれの存在を思い出し、ティリエスがレイラから受け取る。


「そうでしたわ、せっかくお時間作ってもらったお礼になんですが、少しだけ日持ちするお菓子とパンをお持ちしたんです。よかったらどうそ。」


本当は拠点で作ってきたものであるがそこは黙ったままバルバラに渡すと2人してバスケットの中身を覗き込む。

覗き込んだ2人の目が一瞬にして輝いたことにティリエスはホッとした。

好みがわからない人に渡すのって、なんでか毎回緊張するんだよね。


そんなことを思ってまたバルバラの方を見ていると何故か先ほどまで輝いていた顔が一気に暗い顔に変わり、ティリエスは固まる。



え?!・・・もしかして嫌いなものがあったりした?!


バルバラの変わりように一気に不安になったティリエスの方へ申し訳なさそうにバルバラがバスケットを差し出す。

「ごめんなさい、これは・・・その、受け取れないわ。」

「あぁ?「ヒィ!」」

「こらレイラっ!ごめんねバルバラ。でも・・・あの断るのは、その何か嫌いな物がありましたか?」


レイラの態度を叱り、恐る恐るティリエスが聞くとバルバラが首をぶんぶんと横に振る。

「すっごく・・・すっごく美味しそうです!でも・・・でも、駄目です。食べちゃ駄目なんです。」

「ん?えぇっと食べちゃ駄目って・・・どうして??」

「教会では・・・その、贅沢したら駄目だって。神に使えるものはそうであるべきだって、そう・・・教わったんです。それが徳になるんだって、教わりました・・・だから食べちゃ駄目なんです。」


突き返された理由をだんだんと萎んでいく声でそう言ったバルバラはひどく残念そうな申し訳ないような顔で顔を伏せる。

ここへやってきたからと言ってティリエスさんは貴族の出。こんなこと絶対失礼なことなのに・・・もしかしたら嫌われるかもしれない。


そんな事を思っていると自分の頭上から大きなため息が聞こえ、それがティリエスのものだと分かるとじわりと涙が出てくるのが分かった。

どうしよう・・・もう嫌われちゃったのかな?


「全く・・・呆れた教えですわね。」

そうしたのは自分なのに傷つくはおかしい泣いちゃ駄目だと我慢していると、意外な言葉にバルバラは顔をあげる。

どこか遠くを見るティリエスの顔がそこにあった。

そしてバルバラと目が合う。


「そんな教えクソ食らえですわよバルバラ。」


はっきりと言い切ったティリエスにバルバラは涙が引っ込んだのが分かった。

いつも読んでいただきありがとうございます。

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