私が聖女候補なんて世も末である。(その行いは美徳だろうが己の意思がなければそれはただの苦行である。㉗)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は3/2(土)投稿予定です。
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スープを模した毒草の煮汁(毒作用 中)→マジルを主に煮出した煮汁。主にマジル草が主であるが内臓機能や味覚を麻痺させる毒草も何種類も一緒に混入しているため相乗効果が見込める。致死量には至らないが副作用として意識混濁・頭痛・吐き気の他、人体の様々な内臓機能の低下を起こさせる可能性がある。具材はほぼ無く煮出した毒草が浮かんでいるおり葉や茎の部分を含めば刺激的な味と強い痛みが伴う。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
バージョンアップしてるじゃないか、毒素強すぎて最早説明がスープを模倣していることになってるし!おい!いくら何でもこんなの出す??!
思わず、本日の夕食を作った修道女達を睨もうと振り返りそうになるが、変に勘ぐられてはいけないと踏みとどまりグッとそこは我慢する。
複雑な心境のまま、ふと見れば自分の前に座るレイラがその変に緑色に濁っているスープを掬い口に含んで暫く、まるで思考が停止したように咀嚼せず口に含んだまま動かない。
そんな姿を見せられ思わずティリエスは背筋に悪寒が走る。
・・・あれを私も食べるの?お皿並々に入っているコレを?
思わずそのスープと言われて出させれたその物体をマジマジ見る。
気のせいか熱々でもないのにボコリと泡だったのは見間違いであって欲しいと思う。
「・・・・・うーん、前回より刺激はあって面白いですけど正直味はダメですねぇ。」
とうとう評価し始めたし。ボソボソ声でもバッチリ私には聞こえているんですが?
「まぁ死にはしませんからねぇ。」
「貴方よく食べられますね、少しは躊躇しませんか?」
周りに人がいないことを良いことに小声でそう返す。
ティリエスも意を決してスプーンで掬い、レイラのように口に入れる。
あまりのそれにやはり全身に悪寒が走り、思わず現実逃避しそうになる。
そんなティリエスの様子にレイラは可笑しそうにしたが、さっと慣れた手つきで防音魔法をかける。
「それで、バルバラという子に誰かを紹介されたと?」
何とか飲み込んでやり過ごしたティリエスは、苦虫を噛んだような顔のままこくりと頷く。
「えぇ、バルバラは基本1人でしたからご友人の存在には驚きましたわ。」
「確かに、ここにとって彼女もイレギュラーな存在ですし、集団生活を余儀なくされるここでは異質ですしねぇ。でも、その言われた条件は呑むつもりで?」
「えぇ、その方が私にとっても都合がよろしいし、そのつもりですわ。」
会う時間は昼間ではなく夜の消灯後そして1時間のみ。
場所は誰もやってこない彼女達が指定した場所のみ、さらにその場所は他の人には決して教えないこと。
最後はたとえ紹介する友人に昼間会ったしても絶対に声をかけないということ。
以上が彼女バルバラが出した条件だ。
「そのご友人はどうやら事情がありまくりな条件ですねぇ、本当にお会いなさるので?」
その条件にレイラは面白そうに口を開くとティリエスは勿論と肯定する。
「ここの方でしたら私、バルバラを信用できますので。会うのは明日ですし、こちらからお願いするのですから何かお菓子をご用意しましょうか。」
こんな毒盛る人達より断然でしょう?
そう意味ありげな視線をレイラへ向け、また苦い表情のままそのスープを口の中に放り込み、ティリエスは現実逃避した。
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