私が聖女候補なんて世も末である。(その行いは美徳だろうが己の意思がなければそれはただの苦行である。⑳)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は2/7(水)投稿予定です。
さてとりあえず掛け合ってくれるみたいだし、自分にとっては良い方向になりそうな予感だけど・・・。
朝食の際エルパの良い返事をもらったティリエスはさっきまで気分良くしていたが一転し、今のこの状態の光景に気分が下がっていくのを感じていた。
本当、相変わらず皆黙々と掃除してるし。
今日の掃除場所は礼拝堂であり、ティリエスはそこで箒でゴミを集めながらチラリと他の修道女の様子を伺う。
皆、相変わらず黙ったまま黙々と掃除をしている。
礼拝堂の長椅子、チャーチベンチを拭いている様なんか皆一定の距離とピッタリな動作で拭いていっているし・・・なんか正直不気味。
彼女達が拭いている後ろ姿を見ながら、若干寒気を感じたティリエスはふと隣で黙ったまま立っているレイラに目を向ける。
・・・早々に飽きたな、この男。
初めの頃同様相変わらず持っている道具は塵取りで、そのまま立っているがゴミが集まろうが全くしゃがむ気配などない。
そうこうしている間に、他の修道女がサッとゴミを掃き取り早々に去っていくのをティリエスはただ黙って見つめ、そして胡乱な目をレイラに向ける。
「私がやらなくてもこうしてどこからともなくやってくるんですからいいんですよ。」
いや、せめて少しは掃除しようよ。屋敷ならいつも部屋掃除をしてくれるのに・・・。
屋敷とは随分態度が違うことに小さく息を吐く。ふと、外の方で何か動いた気配を見つけティリエスは礼拝堂の入り口へと顔を横に向ける。
「あの子は確か・・・444番さん?」
向けるとそこで一生懸命草むしりをしている女の子が見え、見覚えのある後ろ姿にティリエスは誰か思い出す。
1人、雑草が生い茂る場所を黙々と草取りしている姿にティリエスは近づいてしゃがみ込んだ。
「1人で大変そうですね。」
「えっ?!聖女様?!」
突然背後から声をかけられた444番は驚いて振り返る。
そんな彼女を横目に、ティリエスもまた彼女にならって草を抜き始める。
「ここは1人では広いですし、私もここを手伝いますわ。ちょうど私のところは終わりましたし。」
「いや、あの・・・でも、・・・・・いえ、あ、りがとうございます。」
やめるように言っても聞き入れてくれないと判断したのか暫く彼女は狼狽えていたが、おずおずとティリエスに礼を言う。
レイラはやはり隣に立つだけだった。
そんなレイラの様子も気になるのか、彼女はチラチラ見ながら抜き始める姿をティリエスは見て、抜きながら声をかける。
勿論、他の修道女が気づかないように小声である。
「今日はここの担当?」
「いえ、その・・・本当は礼拝堂の窓拭きなんですけど、さっきしないでほしいと言われてしまって・・・。」
「そ、そうなんですか・・・。」
戦力外通告を受けていたとは思ってもなかったティリエスは気まずそうにしたが、逆に彼女は嬉しそうに笑う。
「でも、そのおかげで聖女様とこうして一緒に草むしりが出来たので嬉しいです。」
・・・癒やし!
にこにこと笑っている少女を見て、ティリエスは初めて癒やしを見つけたような、そんな感覚に包まれた。
いつも読んでいただきありがとうございます。