私が聖女候補なんて世も末である。(その行いは美徳だろうが己の意思がなければそれはただの苦行である。⑥)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は12/29(金)の夜投稿予定です。申し訳ありませんが次々回ですがお休み期間は投稿は難しいので1/5(金)を予定にしております、ご了承ください。
ティリエスが手をかざし数秒待った後、彼女のその手に袋が握りしめられた状態で現れ、その光景を見たレイラは目を丸くさせた。
「・・・それはもしかして、お嬢様がおっしゃっていた別の空間収納で?」
察しが良いレイラの言葉にティリエスは頷く。
「えぇ、この中には私が集めたアイテムが収められていますわ。」
「ふむ・・・お嬢様がこれを出さなかった理由がなんとなく分かりますわねぇ。」
手に持っているその袋に顔を近づけてしげしげと観察しながらレイラは呟く。
「この袋からはとてつもない魔力が渦巻いていますねぇ。」
「そうなの?」
「お嬢様は所有者ですし、正直お嬢様の方が魔力も魔法もたけていらっしゃるから影響はないのでしょうが。魔法をある程度熟知した者には異常なものを肌で感じ取るでしょうねぇ。逆に魔法使う事をほとんどしない領民達の方がまだこれを普通に見ることはできるでしょう。」
ふーん・・・という事は。これはやっぱり人にホイホイ見せたらまずい代物という事か・・・突然現れるから人目に晒さないようしてきたけど・・・うん、今後も気をつけよう。
見せないようにしようと思った瞬間、魔塔にいるメンバーを思い浮かべたティリエスだったが小さく首を横ふる。
今はそんな事より自分達の安全の為の拠点作りだ、急がねば。
「で、これを出してどうされるのかしら?」
「残念ですが、私達の荷物は最低限しか持って来られなかった上、レイがレイラとして幻影魔法を使い常に変装と周りを警戒をする状態では空間収納まで手が回せないでしょうから、今回は私がサポートしますわ。」
そう言って躊躇なく布の袋に手を突っ込むと何かを取り出す。
「それは・・・鍵ですか?」
取り出した彼女の小さな右手にあったのは二つのアンティーク調の鍵が乗せられていた。
「今から拠点へ行く為の準備をしますわ。」
「分かりましたが、これをどう使うので?」
ティリエスから渡され受け取った鍵をしげしげ眺めているとティリエスが部屋の扉の前に立つ。
「ちゃんと手順通り見ていてくださいね。」
レイラにそう声をかけると鍵を持った手を扉の鍵穴へと差し込むとそのまま捻る。
合うはずのない鍵穴と鍵のはずがカチリと音が鳴り鍵がかかる。
それを確認したティリエスはまた捻ると今度もまたカチリと鍵が開いた音が聞こえた瞬間、鍵はぐにゃりとまるで溶けた金属のように変形したかと思えば、サラサラと砂のように変化し更に小さくなりほんの少しの金色の粒子へと変わればティリエスの人差し指の爪の表面にまるで意志があるようにに向かっていく。それらは集まり何かまたもぞもぞと動きおさまったころには彼女の爪の上に金の鍵の模様が刻まれていた。
レイラは瞬きを忘れその手を凝視していたが、ティリエスの視線に気がつき彼女の顔を見る。
「貴方もやってみて。」
言われたのでレイラも同じように鍵穴に鍵を差し込み同じように行動する。そして自分の人差し指にも彼女と同じマークが施された。
「これは私達の座標、目印ですよ。」
そう言って彼女がレイラの手を引っ張り扉のノブを回し開ける。
「・・・嘘だろ。」
開けた瞬間、目の前の光景を目にしたレイラは目を見開く。
本来なら廊下が見えるはずの光景が、立派な部屋の風景になっていた。
驚き固まっているレイラにティリエスはシスター服を持って手を掴む。
「ほらほら、早く入りますわよー。」
珍しく戸惑っている彼を強引に連れてティリエスは扉を閉めた。
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