私が聖女候補なんて世も末である。(その行いは美徳だろうが己の意思がなければそれはただの苦行である。⑤)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は12/27(水)投稿予定です。
うつ伏せになってティリエスはギシギシと鳴るベッドに身を預けると、それを見ていたレイラは珍しくだらけきった彼女に声をかける。
「馬車ではそのような疲れはありませんでしたのに、この建物に入ってから此処へ来るまでに随分疲れておりますわね?」
「・・・貴方、その口調ぐらい元に戻しても良いですよ?」
「今、私はレイラ、ですから。」
語尾にハートをつけていそうな妙に甘ったるい声で言い放つ彼にティリエスはもう突っ込む気力もないのか無言でムクリとおき上がる。
「まぁ、それは兎も角。確かにたったこれだけの移動だけで疲れたのは事実ですわ。・・・あまり考えないようにはしていましたが、此処は私にとって気が休める場所ではないと感じているのかもしれませんわね。」
「へぇ・・・どんな風にです?誰かに見られていた感じですか?」
「いや・・・そんな視線を感じたような様子じゃなくて・・・なんて言えばしっくりくるのかな・・・奇妙というかこう気持ち悪いものを触ったような・・・感じでしょうか?」
なぜそのように感じているのかはわからないとだけ付け足せば、レイラは何か考える仕草を見せ、ティリエスは黙って言葉を待っていたが思わず声を出しそうになる。
考えるのはいいけど胡座をかくのは辞めてほしい、仮にも今綺麗なお姉さんの幻影かけているのに・・・パンツが見えそう。
ギリギリの見える見えないラインで胡座をかく姿に呆れた目を向けていると、レイラはふと思い出したように口を開く。
「そういえば、窓の外を見て驚いていましたね。本当は一体何を見たんです?」
その言葉に、ティリエスはあぁと思い出して口を開く。
「村人ですわ。何気なく遠くに居る村人を見ていましたら、目が合いましたの。」
「目が?」
問いかけにティリエスは頷く。
「えぇ、本当に遠くで輪郭も分からないほどの距離なのに、あの時確かに目が合ったと分かってしまったの。それで驚いたんです。」
「・・・それは奇妙だな。」
今の姿を忘れてポツリとレイラが漏らすと、スッとベッドから立ち上がリ窓の外を見る。
その先には先ほどティリエス達がここへくる道中通り過ぎて来た村が見えた。
「それは・・・気になりますねぇ。」
「調べに行くの?」
何か気になればふらりとどこかへ行くレイの姿を見てきたティリエスは問いかけたが、レイラは首を横に振る。
「いいえ。ただオーガの言う通りあの村も少し調べた方が良いと思いましてね。後で彼に手紙を送ります。」
「そう、それなら任せますわ。」
「さて、とりあえずは相手の出方を見ませんとねぇ。こちらから動いて対策を講じられても厄介ですし。それにそんな事より早く問題を解決する事案が発生しましたし。」
「え?何それ?」
彼が今最も危惧する事が何か分からないティリエスは首を傾げていると彼はスッとあるものに指を指す。
それは支給されたシスターの服だった。
「幻影で華奢に見えるだけで本来とは違います。服は魔力を通しませんから幻影はかけられませんしこのままだと私、服を破いてしまいますわ。」
何故かポッと顔を赤らめて告げる彼に、ティリエスは大きくため息をはいた。
「大丈夫ですわ、きちんと対策を考えていますから。」
彼にそう告げて、ティリエスは手をかざした。
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