私が聖女候補なんて世も末である。(その行いは美徳だろうが己の意思がなければそれはただの苦行である。④)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は12/25(月)投稿予定です。
レイラの言葉でエルパは早速2人の部屋へと案内をする。
途中、食堂やシスター達の朝から祈りを捧げる簡素な礼拝室、浴室など色々と説明を受けながら辿り着いたのは随分奥に位置する宿舎だった。
宿舎は随分と簡素なのね。
古びた建物のようだが掃除は行き届いており不潔感など感じさせない廊下を歩いているとふと窓を見てあることに気がつく。
「ここの窓はすべて鉄格子がつけられているんですね。」
「えぇ、村のご好意で修繕もちょくちょくするんですけどここの建物は古いでしょう?丘の上に位置してますから時折突風も吹きますから直接の風の力を緩和させる為に着けられたんです。」
「へぇ、そうんなんですね。」
そう言いながらティリエスは随分遠くだがここから村が見下ろせることに気がつく。
遠すぎて村の人が小さく見えるが何かの作業をしているのは分かる。
何気なしにティリエスはとある1人の村人であろう人の姿を見ていると驚いて思わず窓の外から離れた。
「お嬢様?」
「どうかされました?」
急な行動にレイラとエルパは首を傾げながらティリエスに問いかけるが、ティリエスは首を横に振る。
「・・・いえ、ただ虫が飛んで来たように見えただけですわ。」
「まぁそうでしたの。まだ寒い時期ですから虫はあまり飛んでいるところを見たことはないのだけど・・・。」
ちょっとせっかちな虫さんねとエルパはのほほんと答え、ティリエスも本当ですねと愛想笑いを浮かべて相槌をし3人は再び歩き出すとエルパはすぐにある扉で止まる。
「さぁ、着きましたよ。」
そう言って、何部屋もある一番奥の突き当たりの扉を開けると左右対称に簡素なベッドが二つと机が二つにそしてベットの隣にあるティリエスの身長より少し小さな棚の上には服が畳まれてあった。
「ここでの生活ではここで支給されている衣服や下着、それに生活用品は平等の支給ですからご自身できちんと管理をお願いしますね。不安でしょうから付き人様と相部屋とさせてもらいますが、ティリエス様もここへ入られた身、自分のことは自分でできるよう少しずつ覚えていってくださいね。」
「はい、分かりましたわ。」
「宜しい、では付き人様、付き人様はティリエス様を補佐する役目としてここへ来たのでしょうが、なるべくティリエス様がここでの生活を早く覚えるために、妨げにならない程度な補佐をお願いしますね。」
補佐するなと言ってもきっとそれは貴女の立場上難しいと思いますからと、なんともここで初めての歩み寄った心遣いにティリエスも、そしてレイラに扮しているレイもまた内心驚いたが、レイラとしてにっこりと女性の仕草で微笑みを浮かべる。
「承知いたしました。傍で見守りますが必要以上な手助けは控えるよう務めますわ。」
その言葉にエルパもまたにっこり微笑むと、ここでの時間割や日程などを教えると部屋へと出ていく。
彼女が出て行き扉がしっかり閉まったのを見てティリエスは大きなため息とその場で大きく脱力した。
レイラは持っていた小さなカバンを机に置くと、ベッドの上に座る。
見た目通りに座ると今にも壊れそうなほどギシギシと音が鳴るが、レイラは気にせずベッドの強度を確かめる。
「あまりにも粗悪品な代物ですね。きっと寝心地は最悪ですわ。」
いや、気にするとこそこ?とティリエスは相変わらずマイペースな彼に思わず更に力がぬけ自分もベッドの上に座った。
ティリエスはそのまま力無い手でかざし魔法を唱える。これで中の会話は外から見えることはないだろう。
「とりあえず、今は気を緩めましょうか。あぁ・・・本当、ここ息詰まりますわねー・・・。」
ティリエスはそう言って何かを吐き出すように大きな溜息を吐いた。
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