私が聖女候補なんて世も末である。(その行いは美徳だろうが己の意思がなければそれはただの苦行である。①)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は12/18(月)投稿予定です。
「・・・【解除】。」
何か音が聞こえたと認識した直後、ハッと一気に目が覚めたシスターは辺りを見渡す。
「・・・私・・・?」
「シスター、大丈夫ですか?」
少々混乱しているような様子にティリエスはシスターに声をかけると、シスターは僅かにだが戸惑った表情でティリエスを見返す。
「私・・・すみません、何かティリエス様に言われた後から記憶が抜け落ちているのですが・・・私は何を・・・。」
「それでしたら、貴女気を失っていたんですよ?」
隣にいる女装に扮しているレイに声をかけられ、その言葉に眉を顰めた。
「気を失って?何故・・・?」
「ごめんなさいシスター、私が悪いんですの。」
何かされたのかとレイに疑いの目を向けていたシスターはティリエスの謝罪に首を傾げる。
「私と話している時に大きな揺れが起きてシスターは私の方へ身を乗り出していたのが原因でバランスを崩して後頭部を打ってしまったの。それで気絶されたんですわ。」
「頭を・・・?」
言われてみれば最初は気が付かなかったが確かに自分の後頭部を布越しに触ると、小さなコブの感触に鈍い痛みを感じたシスターは彼女の言葉を信じ、レイの警戒を解いた。
「そうだったんですね。理解できました。」
「気を失ってしまわれたので馬車の方に止めてもらおうとしたのですが聞き入れてくださいませんでしたの。ですのでレイラがシスターの様子を見てくれたの。」
「応急処置しかしておりませんので、後できちんと診てもらってくださいね。ふんだっ!」
「ゴホッ!」
何キャラ目指してるのよレイ!
ツンっとレイがそっぽを向いた後、ティリエスが急に咳をしたがシスターは別段変に思う事はなく先ほどより納得を深めたようだった。
「外の者には最短で馬車を走らせるように言ってましたから止まらなかったのでしょう、・・・でも、そうですか、それはありがとうございます。」
感謝してるのかしてないのか判断に困る声色で言うシスターを見ていたが窓の方へ向いている彼女の目が、一瞬だけ見開いた所を見たティリエスも同じように窓の方を見る。
辺境の地にある教会なのでずっと生い茂る木々ばかりだった風景が一変してどこかの村風景がそこにあった。
「ようやくここまで来ました。」
「ここはどこなんです?」
尋ねるとシスターは無表情のままこちらを見た。
「トロモス教会に最も近い村エギー村です。この村は信仰心が高く、私のようにシスターとしての道を歩む方もいます。私もこの村の出身です。」
「そうなんですね。」
でも、その割には・・・。
ティリエスはチラリとシスターの顔を盗み見る。
その眼には全くの熱を感じられる事はなくティリエスは窓の外を見た。
懐かしくすることもしない、なんて。この村がそんなに嫌いなのかな?
馬車の窓越しでせっせと働いている村人を変わる変わる見ていたティリエスにシスターは口を開く。
「ここは規律を重んじる村ですから、ティリエス様もこの村でいつか教わる日を設けましょう、きっと女神の信仰がどれほど大切か理解されましょう。」
「・・・そうですか、その時があれば是非お願いしますわ。」
思わず、『ゲッ!』と顔に出しそうになったがティリエスはなんとか取り繕ったのだった。
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