まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(大好きな皆に恩返ししよう、そうしよう。⑬)
まさか、ここでヨーグルトが既に出来ていたなんて!
ギリアの手にあるヨーグルトをキラキラした目で見つめる。
前世でもヨーグルトは偶然出来た代物である。
ヨーグルトの元になる生乳の容器に偶然出来た環境常在菌、つまり容器に発生していた乳酸菌と反応して発酵し出来たとされている。
勿論、牛乳の中にも乳酸菌は存在しているが別の場所から更に菌が加わることで混合結合して、初めてヨーグルトが出来るようになる。
ただ、そこから発酵する温度が最低でも40℃の環境が4~6時間は必要になるので今のこの時期では到底できないはず。だから正直ヨーグルトの発明は夏にしようと目論んでいたため、正直ヨーグルトが入手できたのは本当に幸運であった。
でも、なんで出来たのか・・・?
顎を右手の人差し指でトントンと叩きながら牛乳・・・今はヨーグルトが納まっている自分より随分大きな遮光瓶をじっと見つめる。
・・・・・あ。
あることを思い出す。
「ギリア。ここの厨房もしかして地熱、温泉が保存庫の近くにありませんか?」
「温泉ですか?確かに外の一角に温泉からと思われる高温度の蒸気が昔からあるので、寒い時にはそこでよく暖を取ります。保存庫からだいぶ離れていますし、別段保存庫が変に温まることはないですが。」
「・・・あ!」
2人のやり取りを聞いていたルイが急に声を上げたのでギリアとティリエスは横に振り向いて彼に顔を向ける。ぐるんと勢いよくこちらを向かれたのでルイはびくついて肩を竦める。
「あ、あの・・・も、申し訳ありません急に声を上げてしまい・・・。」
「いいえ、ルイ。何か気が付いたことがあれば言ってください。どうしてこれが出来るようになったのか私は知りたいのです。」
目がとても真剣だったのかそれともつり目で怖かったのか、私を見るや否やルイは少しぎこちなく口を開く。
悪かったな、凄みのある3歳児でよぉぉ。
「は、はい。実はこの牛乳なんですけど、丁度保存庫の1番目の出入り口に置かれるんです。昔は2番目の出入り口まで運んでもらってたんですが出荷する親父が数年前から腰を痛めたので、1番目の方に置いてもらっているんです。それで暇を見て俺といった見習いが奥へ仕舞うようにしているんで・・・今思えば何か関係があるんじゃないかって。」
「親父・・・ということは貴方のお父様ですの?」
「は、はい。家業には3つ上の兄が継いでいるので俺はここで料理見習いしてます。兄は親父の代わりにより力仕事が必要な仕事を受け持っていたので必然とそのように・・・・。」
ルイから今の話しを聞いた2人は今までのことを照らし合わせてみる。
「3重扉の最初の扉付近に置かれているのなら温泉の熱の影響を受ける可能性はあります。それにこれが出来始めた頃を考えると原因はそれかと。」
成程成程。ということはこれはれっきとした同じ品質の牛乳から偶然が偶然を呼んで発酵食品が生まれたのか。
腰を痛めている親父さんにはこんなこと言ってはいけないのだろうけど・・・・。
おっちゃん怪我の功名!まじ感謝!!ウェーイ!ヨーグルトゲットだぜっ!
頭の中はファンファーレが鳴って小躍り状態だが表情に出さず、私はルイに向かって微笑む。
「話してくださってありがとうございますルイ。お父様のお身体が不調な事に心痛みますが、貴方のお父様のおかげで偶然にもこれが手に入ったことは大変感謝してます。」
私は彼のお父さんの腰痛を心配しているがしれっとそのおかげで感謝していることを述べる。不謹慎ですがそれはほら、小さい子供ですから。私。
「い、いえ!寧ろ俺らが感謝してます。いくら原因を調べても分からなくて領主様に品質の悪いものを納品しているんじゃないかって親父も兄貴も正直参っていたので、お嬢様が喜んでくれたこと今夜にでも話します!」
私の言葉に驚いた後そう言ってようやく、ルイは嬉しそうに笑ったのだった。
「それで、今お肉を柔らかくしているのね?」
「はいお母様お父様。お食事がすみましたらまたギリアの所へ行って研究をしますの!」
あの後、乳製品で肉を漬け込む作業を終えて私と両親、それからアイルお兄様が第2回試食会兼昼食をとっていた。いつもの塩漬けの加工肉のスープにフラットブレッドである硬いパン、そして今回は蒸した野菜と例のマヨネーズとバターである。
ただ、今回違うのはいつものスープにはすこしバターを加えコクを出しているので美味しくなっている。
更に、いつものゆで野菜ではなく厨房の外一角に存在する温泉の蒸気がでている場所を見せてもらった。やはり間近で見るとかなりの熱量を感じ、丁度良い穴を見つけた私は前世でも有名な温泉の蒸気で行う蒸し料理が出来ると閃いたので早速実行したのである。
ただでそこに熱源があるのに利用しないなんて勿体ない、無駄に魔石を使わなくて済むし一石二鳥である。
その機転が項を奏し野菜の味は1段も2段も濃くなり野菜本来の甘みを引き出すことも成功したのだ。
ギリアも目を白黒させて、その味の違いに大変驚いていた。
ニコニコと私の話しを聞いている母と、初めてマヨネーズとバターを試食した父は味が衝撃だったのか今現在も固まっている―――、そんな両親に私は興奮を抑えつつこれまでの経緯を話していた。
アイルお兄様も優しく笑っているがその傍らせっせと料理を口にしていた。
お兄様は見た目によらず大食漢だな・・・。
じっと見ていたら、父が急に我に返り彼に負けじと食事を運び始めた。
大丈夫だよ父、まだまだたくさんあるからね。
「でも、さっきよりお野菜が美味しくなるなんてティリーは本当美味しいものを見つける天才ね!」
「本当に聞いた話し以上の味だ。とても美味しいな・・・食べるのが止まらない。今夜の肉料理も待ち遠しくなってしまったな。」
フフフ。もっと美味しいものを発明するかね楽しみにしててね。
賛辞を述べられてポッと頬を赤らめつつ、私はどんどん好きにしても良さげな評価をもらいそのことに味を占めつつふと、あそこで野菜を蒸そうとしたとき。私はそこで衝撃的なことがあったのを思い出していた。
いつも読んで頂きありがとうございます。もしかしたら次回は日曜日投稿になるかもしれません申し訳ありません。
裏設定:伝書バトもとい伝書フクロウで手紙を送ったアイル。内容は彼女に言われた要件と美味しい料理を考えていることを記し、最後には如何にそれが美味しものかその絵も描かれてました。が、彼は絵心がなく壊滅だったので手紙の内容は理解してもらったが絵の方は首を傾げられています。ただ、この絵を他の騎士達に見せたらグリップさんだけには何故かその絵の内容が理解でき子供の様に食べたいと駄々をこねた様子。彼にどう分かったのかと聞けば「感覚。直感。」とのこと。(彼は何事も天才肌です。そしてアイルと同じように絵心は壊滅なのです。)




