まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(大好きな皆に恩返ししよう、そうしよう。⑪)
明日から連休ですね。早めに投稿出来たらしたいです・・・(願望)。
「素晴らしいっ!このマヨネーズという物を使えば単調な味の素材ににコクが生まれ、バターに至っては多くの可能性が生まれる風味だ!」
ギリアは子供が新しい玩具を見つけたように目をキラキラさせて説明がてら新たに作ったマヨネーズとバターを見つめる。
人目を気にすることなく喜ぶ彼をみてそれだけ今回作り出したものは彼の心を掴んのだと私は十二分に理解する。
開発者冥利に尽きますと言わせるほどのもう大興奮である。
「では料理長、これを使った料理を考案してくれますか?」
「はいっ。きっとアドルフ様も気に入って頂けるでしょう!お任せください!」
「なら、私も楽しみにしていようか。」
ギリアの良い返事にアイルとティリエスが満足そうに笑っていると、背後から聞きなれた声が聞こえ私はバッと後ろを振り向く。
「お父様!!お帰りなさい!」
「ただいま、ティリエス。リリスから聞いたよ、凄いものを作ったそうだね?」
抱き着いた私をアドルフはしっかり受け止めると嬉しそうに私に微笑む。ギリアは改まった礼をしようしたがアドルフはそんな必要はないという風に一早く気が付き私を左手で抱きとめたまま右手で彼に制止をかける。
「私が食してから判断するという話しを聞いているが、リリスやアイル2人が太鼓判を押すほどだ。ギリア、時間は限られるがラディン郷騎士達に今回作ったこれを使った料理を考案してくれ。」
「っ!承知しました!」
「お父様!お父様も食べてくれるますか?」
「あぁ、昼食に頂くつもりだ。ところでどうして2人ともここにいたんだ?リリスからは昼食後に訪れる予定だったようだが・・・?」
「実は、今度はお肉料理についてお話ししてました。」
「肉料理?」
私がにこにこ顔で言い切ったのを見て父は驚いたようで、思わずといった様子でアイルとギリアを見ていた。
「僕が言ったんです、お肉をより美味しくする調理法を考えようって。」
代わりにアイルがアドルフに説明をすると父は少し目を見張って抱きとめている私を見つめる。
本当にそんなことを考えられるのか?3歳児なのに?
という眼である。
父よ正しくそれが普通のリアクションです、ですが私はもうしちゃおうと心に決めてしまったのです。・・・・見逃して!
私は取り敢えず無邪気に笑う子供の笑顔で誤魔化した。
素知らぬ顔して大人に見逃してもらおうという子供あるあるのあざとい笑みである。
ニコニコ笑う私を暫く見つめていた父だったが、私の頭をぐしゃぐしゃと少し乱暴に撫でると私の身体を放した。
父の顔を伺うと特に、不機嫌になった様子はなく逆に何か挑戦的な表情をしていた。
「良い。何事も経験だティリエス、好きにやってみなさい。但し刃物作業は必ずギリアにさせること。火の前にも必要以上に近づかないこと。これらを守れるね?」
「・・・はいっ!ありがとうございますお父様!」
条件を出されたがしても良いという許可をもらったので私の心は浮足立つ。
「ギリア。戻る道中で鹿を仕留めたものがある、良ければそれを使い娘の気の済むようにさせてくれ。」
「かしこまりました。」
父は仕事を片付けてくると言い残し、その場から去っていった。
子供だからと却下されてもおかしくないのに、寧ろ後の事は考えずにやってみたら良いと後押しする心の広さ・・・。
父マジ格好いいっ!惚れてまうわ~。
父の背中をうっとりと見つめながら私は右頬に手をやる。
もし、私が結婚することになったら絶対お父様みたいな男性と結婚したいなぁ・・・そんな男性いないかもしれないけど。
まだ見ぬ未来へ夢を膨らませていると、ギリアが荷物を抱えて戻ってきた。
「お嬢様、質の良い若い雌鹿です。」
厨房の台へ袋から取り出すと大きな塊が幾つか出てくる。どうやら仕留めた後すぐに的確に処理をしたらしく、その肉からは腐臭も汚物などの臭いもしない唯の肉の塊だった。
恐らくこの雪の寒さのおかけで良い具合に冷蔵保存が出来たのも幸運だった。
「流石旦那様、とてもきれいに捌かれてますね。猟師だと正直ここまで綺麗に処理はなかなか出来ないです。」
「そうなのですか?」
「はい。ここら辺の猟師でも血抜きや汚物処理の方は問題ないのですが、ご覧・・・あ、ご覧になっても大丈夫ですか?」
ギリアはその時になって子供にこのような生々しいものを見せるべきではないことを思い出す。
しまった、という顔をした彼にティリエスは笑う。
「大丈夫です料理長、見せて下さい。」
残念ながら、前世では鶏を捌いたり何かとグロいものを捌いたり色々しててもけろりんだから大丈夫よ~。女の子がこういうので乙女のように小さく悲鳴をあげれたら可愛いんだろうけど、現実に悲鳴をあげたのは鶏の方だったし。
真顔で黙々と作業していた自分の姿を思い出し、存外自分は図太い神経の持ち主という事を再確認する。
彼女の声にギリアはほっとして話しをすすめる。
「では、こちらをご覧ください。肉の切り口がどれも綺麗に切断され、それでいて鹿の部位ごとにきちんと分かれています。猟師の場合だとこうはいきません、早く運べるようにということを最優先しますので同じ肉の大きさで切断してしまい部位ごとではない。しかも切り口はボロボロとなっているので見栄えも悪いです。」
ギリアの言葉に私は相槌を打つ。
確かにまるで前世に存在したスライスカッターといった機械で切断したようなむらっ気が無い切り口に、自分の父の包丁さばきが凄い事を理解する。
・・・・うげ。
十分に凄い事を理解した私が視線をギリアに向ければ彼は肉をまるで芸術をみるような恍惚とした表情で見つめており、私は若干引き気味になる。
やっぱり、料理に関して彼は少し変態らしい。
でも、彼のお陰でお肉調理が出来るし少しぐらいは大目に見よう。
「では、料理長。今から早速取り掛かりましょうか!」
彼の今の表情には目を瞑り、私は努めて明るく彼にそう言ったのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。