まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(大好きな皆に恩返ししよう、そうしよう。⑩)
・・・土曜日投稿にま、間に合った!
「お、お待ちしておりました、お嬢様!」
「・・・・・・??」「・・・・・・。」
なんか、最初に比べどうもものすごい対応が良くなっているけど・・・どうしたのお兄さん。
あと、ものすごい緊張してるみたいだし顔色悪いけど大丈夫か?
彼の立つ足元を見るとどうやら彼は馬鈴薯の土を水で洗い落とす作業をしていたようで手を真っ赤にしていた。忙しいはずなのに私達が厨房に向かって早々、最初に尋ねたあの青年が私達を見るや否や直立不動になり蒼白い顔のまま私達にそう言ってきたのだ。
と、いうか・・・アイルお兄様を気にしているような・・・?
時折ちらちらとアイルの方を見つめる視線に私は一瞬首を傾げながら今度はアイルを見ると、彼はいつもと変わらずニコニコと笑みを絶やさず彼を見ていた。少年2人の様子に私ははっとする。
このお兄さん・・・もしかしてアイルお兄様に一目惚れした?
だからこんなにアイルお兄様を気にされているのでは?
彼が蒼白いほど緊張しているのは好意を寄せているお兄様を目の前にしているからではないからではないだろうか・・・?
あと、純粋に同性に対しての恋心に自覚したばっかりで戸惑っていらっしゃるのでは?だとしたらこのお兄さんちょっと今色々キャパオーバーだから・・・休んだ方がいいじゃないのか?大丈夫か?さっきより顔が白いけど・・・気絶しない?
「ギリア料理長を呼んできてくれないか?相談したいことがある。」
彼女がそんな風に思っているのを他所に、アイルが青年にそう言うと彼は情けない声を発しながら踵を返して厨房の中に入っていくのを見送る。
やだ、あのお兄さんアイルお兄様に声をかけられてびっくりするほど声ひっくり返っている・・・そんなに急いで走っちゃうなんて・・・お兄様のお願いを叶えようとなんて健気!・・・ん?
と、頭上に影が出来たので私は思わず見上げるとじぃっとアイルお兄様が私を見つめていた。
「ティリー、違うからね。」
「・・・・?」
「全く、それ、全然違うからね。」
「・・・・・。」
そっかー・・・違うのかぁ。
アイルお兄様に否定されて私はすんなり納得する。
・・・・・ん?でも私何も口にしてない?それに・・・お兄様も何が全く違うのか口に出してないのに・・・なんで私は思っているそれが違うと思ったのだろう?
「お待たせしましたアイル様、お嬢様。どうかされましたか?」
お兄様との先程のやり取りを深く考える前にギリア料理長が現れ私の思考はそのまま料理長へと意思が傾き、私はそれ以上を考えることをしなかった。
「成程、お肉の臭みの改善とより美味しくする方法を考えようという事なんですね?」
私達は料理長に彼らの休憩室へ案内され、椅子を用意してもらったあと暖かいお茶を用意してくれた。
厨房は水場が多く冬の寒さも相まって身体が冷え始めていたので、私達は素直に彼の好意に甘えることにした。
こくりと一口お茶を飲んだ後私は彼の質問にこっくりと頷く。
「ギリア料理長も何かしらの調理方法を考えているのは知っています。でも、その・・・・「正直美味しくない。」いや・・・あのそんなはっきりおっしゃられると・・・。」
私が言葉を濁しいい淀んでいると調理しているギリア自身がはっきりとそう言い切り私の方が心が焦る。
そんな私を見てギリアは私の心を読んでか優しく微笑んでいた。
「お嬢様、本当のことなんでそのようなお顔をされなくていいです。私の未熟な腕のせいで心ゆくまでおもてなしが出来ず本当に恥ずかしい。」
「ギリアは恥ずかしくない、僕の家の料理と比べとても工夫され美味しい。だから毎年ここに訓練する僕の家の騎士団たちはここの料理を食べたくて来たくていつも接戦なんだ。恥ずかしいと思う事はない。」
きっぱりと言い切るアイルにギリアは恐縮しながら小さい声で感謝を述べ頭を下げる。
「因みになんですが料理長はどんな料理法でお肉料理を行っていたんでしょうか?」
彼の料理は私にとっても1番美味しいと思えるものだ。繊細な料理をするそんな彼が行っているジビエの調理法は一体どんなものか、私は彼に直接聞くことにした。
彼は特に渋るわけでもなく分かりやすく私達に教えてくれた。
彼が王宮に勤めていた頃はいつも国の認定された農場から献上される肉。勿論どんな風に料理しても美味しいものが出来る。だがここではジビエ肉が当たり前勿論彼は初めてといえる食材に困惑し、最初の頃は散々な味を出してしまっていたのだという。
彼はそこで愕然とした。質の良いものでしか美味しいものを作り出すことが出来ないでいる自分の料理の腕に失望したのだ。
だが失望以上に同時に悔しかった、だから彼なりにその日からジビエの肉について研究していたらしい。
そしてある時、肉の臭みを消す方法を模索していた際肉を焼いた際に出てきた肉汁をなめた時異様な臭みを感じたのだ。
【もしかしたら肉の臭みはこの肉汁ではないか?】
そこに着目した彼は、肉をまず長時間水に着け肉汁を落としてから焼くようにし、更に焼いている最中は油を落としながら焼く加熱方法を考え出した。
結果、それが今のところ臭みをより消す方法として有効だったためその調理法で試みているのだと、そう経緯を話してくれた。
「この料理法だと普通に焼いて提供するよりも臭みが大方改善されました、けれど・・・。」
「お肉が硬くなってもさもさしてしまうんですね?」
「!その通りですお嬢様。ですから結局スープの具材として提供するしかなかったんです。あの料理法だと硬くて食感がとても悪くなるというのがデメリットなんです。」
彼の話しを聞いて私は成程と納得する。
つまり彼の場合癖のある肉を癖のない肉に変化させようと試行錯誤した結果この方法にたどり着いたようだ。
確かに、この肉汁を落とす方法は前世でもしていた方法ではある。
けれど肉汁はそもそもその肉本来の旨味と言える存在だ、これをしてしまえば臭みは確かに改善されるが美味しさはかなり激減する。
それにジビエとは本来その獣独特の風味に個性な香りを楽しむお肉、安定した味を提供できる家畜肉とは全く違うのだ。
でも、そのことをずばんっと言ってしまうと彼に反感を持たれるのではないだろうか?けれど、ここで提供されるお肉の存在自体を根本的に考え直してもらわないと彼にはきっと理解してもらいない。
さて・・・どういえば納得してもらえるのだろうか・・・?
「私は出来ればお嬢様、なによりここへ働かせて下さった旦那様や奥様の為にもより美味しい料理が提供にしたいのです。何か方法があるのなら教えてください。」
え。マジで?
私は彼の申し出に思わず考えていた頭を止めきょとんと彼を見る。
アイルではなくピンポイントで私に直接言ってきた・・・ということは。
「料理長もしかして先ほどの行っていた作業、ずっと見ていらしてたんですか?」
「ずっと・・・ではありません。ですか、あの2つの画期的なものを見せられて料理に携わる人間が驚かないわけがありません。」
そっかぁーバレてるんだ、えーどうしよ教えても良いものなんだろうか?
ぶっちゃけこれ、上手くいけば商品開発で売り出せるかもしれないって思っているからなぁ・・・。
ちらりと頭を過ったのはレシピ盗作の可能性をここでちょっと考える。もし彼にあれこれ教えて自分の手柄にされたら正直困ると思ったのだ。
「ねぇ、料理長。もしその方法を会得して自分のものに出来たらお前は・・・どうするつもり?」
と、アイルが何も言わずにスッと立ち上がりニコニコ笑っている表情から一変して真顔でギリアをじっと見つめ静かにこう質問した。
・・・・やだ、魔王。
思わず、彼の気迫に唾をも飲み込めないほどになり私はその場で固まる。
ギリアはといえばじっとアイルを見つめていたが、彼の言葉を聞いて理解したのか子供に向けるとは到底思えないような怖い顔でアイルを見つめ返した。
見つめるというより睨みつけた、という表現が正しいかもしれない。
「私は全身全霊でお仕えするのはここルーザッファ公爵家。死以上の苦しみから救っていただいた主人への忠誠心を侮らないで頂きたい。・・・・俺を見くびるな。」
ドスの利いた声でそう言う彼をアイルはじぃっと見つめていたが、ふっと顔を上げて私の方をみる。
そこにはいつものにこにこと笑う彼の姿があった。
「ティリー、大丈夫。料理長は合格、満点だよ。」
いつもの調子で言う彼に私も体の力を抜く。
「・・・わかりました。それじゃぁ一緒に考えて下さいますか?ギリア料理長。」
私の言葉に嬉しそうに微笑み私と握手を交わすギリアを見ながら、内心思った。
・・・・お兄様を怒らせないようにしよう、っていうかもしかしてパーティーで注意された子供ってさっきのモロに受けているんだろうか・・・やだ、絶対おしっこちびっているよ可哀そう。
兄と親しんでいる彼の一面をほんの少し覗いた私は、怒らせないようにしようと心に留めることにした。
「ところでお嬢様、さきほど作られたあの白いソースのようなものは何ですか?配合は?使用方法はどんな風に使うのですか?それと――――。」
えぇーーギリア料理長さっきの全然気にしてないの!なんてタフ?!
しかももうマヨネーズとバターのこと聞いてきたよ、あれか!この人料理に対して一直線か!!
今度はギリアの堰を切ったような質問攻めに私は呆気にとられたのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
裏設定:ギリア料理長は昔、ある料理人に自分の考えたレシピ内容を捕られたといわれその証拠を突き付けられ騒ぎを起こされました。実際に考えて考案していたのは彼自身で王宮料理長も分かっていましたが、以前からあった平民という不平不満な空気に触発され他の料理人を諫めることが出来ず何も手を打つことが出来ないまま、結果その騒ぎの責任をとるという形で彼は辞めさせられています。故に何かを奪われる(料理に関して)ことに彼は嫌悪しています。因みに彼がここで働けるように手配したのは王宮料理長がアドルフに直接お願いした為です。ギリアは今でもアドルフと王宮料理長にとても感謝しています。
(と、裏設定書いていたら日曜になってしまった・・・( ̄∇ ̄;)ハッハッハ)




