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題名はまだない。何せこの物語はまだ途中なんで!  作者: ちゃらまる
第2章~誕生編~
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まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(大好きな皆に恩返ししよう、そうしよう。⑨)



さてはて。

お兄様には勢いよく快諾してしまったものの・・・・どうしようかなぁ、う~む。

私は先ほどのお兄様のお願い事について考える。




【よりお肉を美味しく食べたい。】

確かに私は彼の願いに大いに賛成したい気持ちだ。


山々に囲まれた領地であるが故にお肉は貴重な食材である。

というのは建前でよっぽど裕福で余裕のある貴族ぐらいしか家畜されて育った質の良いお肉は提供されないのが現状であり、私の家の様に然程(さほど)の資産である大多数の貴族はお祝いには良い肉を家畜から買う事もあるが、主なお肉調達は狩りで採れた肉所謂ジビエのお肉が食卓に並ぶのだ。



ジビエ。確かに前世だと人気を博した食材であるがここでは全くその恩恵が分からない。

それは何故か?


理由は簡単だ。

ジビエとは結構扱いが難しい食材で殺してから大分経ってしまっていると腐敗が進んで臭みが半端ない。

更に調理法手順が曖昧なのでそれが不正解だと臭い。近いものを例えて言えばレバー臭い。

それ故にとにかく不味い、あと焼き加減も間違えれば肉がモサモサしたりすんごい硬くなる食感に変化してしまうのでこれも全くよろしくない。


理由は狩りの後の処理が悪いからか?なら、早く処理をすれば良い話ではないだろうか?と思うだろうが、実際そんな簡単ではない。


前世でもよく血抜きが遅いと鉄臭い血が回ってしまって肉は美味しくなくなる、とあまりジビエの肉に関して詳しくない人はジビエが臭みを持ってしまう原因のイメージをこう思った人は少なからずいると思うがどうやら実際は違うらしい。


そもそも血抜きを早くしないといけない理由は、1番は勿論衛生面もあるのだがそのまま肉を放置していると腐敗が早く進んでしまうためで、そこに臭みを起こす原因が生まれてしまうのだ。


理由は他の身体の部位より血の方にはブドウ糖や様々な栄養素を多く含んでいるので獣に付着している微生物が真っ先に血を分解し始める為だ。


やっべー、御馳走の泉がここにあるぞ!とわらわら群がる微生物達の図がここに完成するのである。


結果、血が分解される。

分解されたという事は血そのものが腐敗を起こしている状態、ということになりそれが肉に付着してレバーのようなあの嫌な臭いを発するのだ。

なので血抜きは2つの面で早い方が良いといわれるのはそこである。


因みに血は腐敗してなければ殆ど無味無臭らしい。

稀に世界の国の血を使った料理をテレビ番組で見かけたことがあったが癖がないなら確かに食せるよね、納得。


まぁ、その後の保存や調理法によってここで上手く処理しても結局【臭い肉】で終わってしまう。


保存の場合は生暖かいままにしていると管理された獣ではないので微生物も多く家畜の肉よりも早くに肉による腐敗が進む、そして臭みが出る。


調理法に至っては、肉・・・つまり筋肉の中にある脂肪酸の一種のアラギドン酸が100℃以上に過熱されると鉄分と結合して酸化アラギドン酸にかわりこれが臭いレバー臭の原因になるのだ。


なのでジビエを美味しく頂くには、早い血抜き・適切な温度での保存・そして適切な調理法という3つの工程を正しくクリアしないといけない、難しい食材なのである。



ただ先程も言った様にこの世界の調理法が適切でなく曖昧なので結果、ただ硬い臭みが残るジビエの肉料理になり臭みは勿論、子どもの歯は当たり前、大人でも噛めないことが多いのであまり受け入れられないのだ。


なのでジビエの肉はスープの具材にして細かく砕いた状態で提供されることが多いがこう結構癖が強い逸品になるので正直美味しいと感じたことはない、けどもったいないから食べる、といった具合だ。


美味しい肉の味を前世で知っている私にとって現在の食卓に出るお肉料理は正直低評価ではあるが、アイルお兄様の伯爵家の皆様に騎士団の皆様には逆に私の家のお肉料理はどちらかといえば大変好評である。


何故かというと、それはギリア料理長の食材に対する丁寧な仕事のお陰である。


彼は平民という身分でありながら王宮料理長の助手にまで上りつめた人で料理の才はお墨付きである。

料理の知識の飽くなき探求心何より新しい事へ挑戦する度胸が彼にはあるのだと、ある夕食の際お父様が料理に舌鼓をうちながら話してくれたことがある。


だが、その直向(ひたむ)きな彼の料理の知識の豊富さ、更にはすぐに技法を会得する様に他の料理人達に妬みを買う事になり、彼はやってもいない罪で糾弾されその場に追いやられてしまったのだ。

更にはその料理人達の悪どい根回しのせいで王都のどこに行っても雇ってくれない。

途方に暮れていた彼に、私のお父様が事情を聞き彼の元へ行きここで働くことを提案したのだという。

驚きや不安もあったようだが彼は一大決心をし、彼は彼の家族と共に我が領地に移り住むことを決め、そしてそれからこの屋敷の料理長として料理を作ってくれているのだ。


確かに彼は私という子供の為に大人とは違う薄味の味付けや肉の臭みを消すような調理を模索してくれている。

それが解ったのはお兄様の屋敷に遊びに行った時、そこで食べたお肉料理が・・・独特個性あふれる味だったからだ。

だからアイルお兄様はここにやって来るときは必ずお肉料理を口にする。

当然だ、お兄様にとって自分の屋敷の料理に比べたら臭みが少なく美味しいからである。


そして、数段美味しいものをたった数時間で作り出した事実。

そりゃぁ、もっと・・・と欲深くなるのは当然といえよう。


他人に利用されるのを恐れあえて知識を偽装してごまかした私が、美味しいものを食べようと私を利用するそんなお兄様に軽蔑する?


いいえ、寧ろ大歓迎です。


知らない人間に利用されるのは癪に障るし腹は立つが、大好きなお兄様や大好きな皆が美味しいと幸せそうに食べてくれるなら・・・私、利用されても構わない。


結局は私の心持ち次第なのだ・・・私だって人間だもんね。

自分だって発明して楽に暮らせるならそうしたいし、家族にスゲーって褒められたい願望は当然あるもんねー。


だからと言って家族の人達を盲目で見てはいないのでちゃんとその辺は分かっている、うん。

でも勿論家族の人達を贔屓目ではみるけどね!誰もそうでしょう?私だけじゃないはず、うんうん。


それに、お願いしたお兄様だってきちんと分かっている人だ。むしろ私が危ないことに関わると判断すれば即座にお父様の次に私を止めようとするだろう、寧ろ相手を叩きのめす。


要は信頼しているってことだ。


よし、では一緒に考えてもらおう。

今の段階で美味しく食べれるジビエのお肉を!



「因みにお兄様は、今回訓練中の騎士様達はどんなお肉を捕ってこられると思われますか?」

私は早速お兄様にそう尋ねる。


「そうだね・・・うん、多分今は冬場だから鳥類や冬眠している熊といった獣より鹿や猪の獣肉狩って来るんじゃないかな?」

と、アイルは自分の顎に手を添え少し考えを巡らし、1番可能性の高い予想を口にする。


鹿と猪かぁ!ラッキー!ジビエのお肉でも扱いやすい方の肉だ!


私はお兄様の言葉に目をキラリと光らせる。


猪は1月になると雄は発情期に入ってしまうので発情期特有のホルモンで肉の臭みが増してしまう。しかし今はまだ12月初め、その兆候前なので時期的にも問題ない。


全部が雌というわけではないから肉の味に若干ばらつきがあると思うけど、臭みだけはなるべく抑えたいから良かったー。


「では、お兄様。また厨房に行きましょうか。この2つを食べて頂くのにお父様の分のお野菜も用意して頂くことをお話ししたいですし。」

「そうだね。じゃぁ一緒に行こう!」


アイルは私が行動を移すよりささっと、マヨネーズとバターを手に持ち歩き出す。


あんなに張り切るアイルお兄様を見るのは初めてだなぁと思いながら、私は彼の後をテテテッとついていったのだった。




いつも読んで頂きありがとうございます。


裏設定:ティリエスに頼みごとをしたアイル。自分のお願いごとに2つ返事で了承したことや全く渋らない彼女を見て少々心配気味。悪い奴に捕まったらどうしよう、今から彼女に害のなす人間が来た時彼女に見られないように相手のほふる場所や処理後の身体を埋めるならここ等辺で適切な場所は何処だろう。それともアドルフおじ様に伺い助言を聞いてから色々仕込むべきか・・・など、天使の微笑みを絶やさずそんな事を考えています。決して彼はサイコパスではありません、妹が可愛いだけなのです。(何度も言うが嫌だ何この9歳児!)

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