物語の主人公は新たな課題に頭を悩ませる。(パン職人は探せた!だがまだまだ主人公の課題は終わらない!?⑤)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は6/7(水)投稿予定です。次回でこの章は終了になる予定です。・・・・長かった、ただその一言です。
「どういう意味?」
「彼女、ティリエス公女の武術に関する知識の量は多く、何より的確な人材育成が出来る、何なら戦術や経略を教えれば将来軍師という心強い存在になるでしょう。ここの膿を出した今変革をすべきです。それを行うのには彼女の力が必要です。」
ネルリの普段見せない熱の入った言葉にアレスは小さく息を吐く。
こちらに目がいかなかったとはいえ、王族に寄生し翻弄していたあの女の存在で正直ガタガタなのは分かっている。
金を削減され、本来であればレベルが高かった騎士として採用される人物は質を落とされ採用しやすくなったことで正直数年前とは比べものにならないほど質が落ちた。
障害が無くなった今、彼女がこうも強く言うのも当然だろう。
アレスはネルリを見やる。
「あのね、あの子はただの5歳の女の子なんだよ。それ以上でもそれ以下でもない。」
「閣下!まだそんな風にとぼける気ですか!会議の時でも各隊長にそう仰っておられましたが、数名の敏い者達は何かを感づいておられます。遅かれ早かれ、公女様の存在に気がつくでしょう。ですから早いうちにーーーー!」
ネルリの言葉に数秒黙ったままだったアレスは今度は大きなため息をした。
そして、ギロリと目を変えてネルリを睨みつけると、彼女の方がビクリと震える。
「さっきから何?ボクの言うことがそんなに聞けない?」
「い、いえ・・・そのようなことは・・・。」
「じゃあもう良いよね、この話し。大体、大人の都合で子供を振り回す何てことボクは嫌なの。それにーーー。」
そう言ってアレスはほんの数日前の光景を思い出して確信する。
あの子は自分から騎士に関わるなんてことはきっとしないだろう。平然とした態度をとっているように見せかけて、本当は腫れ物を見るような目でやり合う光景を見ていたのだから・・・。
「・・・閣下?」
途中で言葉が途切れた彼が気になり声をかけるとアレスは首を横に振る。
「何でもないよ。自分達の事は自分達で解決ぐらいしてよ。理解した?」
「はっ!申しわけ御座いませんでした。」
頭を下げ謝るネルリはふとこのパンを作った彼エヴァイスの顔が浮かぶ。
閣下は軍についてを避けるように指示しここを除隊するエヴァイスもまた除隊後は彼女の北の公爵領地へ移り住むことになっている。そんなにあの子には何かがあるということだ。
閣下も・・・エヴァイスも特別気にかけている少女。
ネルリの謝罪の言葉を聞き、アレスはまた食事を再開する。そんな閣下にネルリはギュッと小さく拳を作り静かに見つめる。
けれど、閣下。私は諦めたくはないのです。
才能があると言われ私を拾ってくださった貴方の居場所を、ようやくここを強固に出来る機会がやってきたのなら私はどんな風に思われても成し遂げたい。
小さく息を吐きそんな思いを胸にしまい込むとネルリはあることを思い出す。
そう言えばもうすぐあの方が帰ってくる予定だったはず。
軍事に明るく、何よりこの国の王太子である人物。
今は学業でここを離れているが騒ぎを聞きつけ早めに帰省予定が組まれていたはずだ。
彼女が領地へ戻ってしまう前になんとかして説得しよう、その為に彼に相談してみるのも良いだろう。
ネルリは密かにそんなことを思いながら頭を上げ彼にお茶を飲むよう勧めた。
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