如何にして私はここにやってきたのか(本人だってよくわかっていない。)④
・・・・・・・・・ってそんなわけないっじゃーーーーん!!!
誰に言うわけでもないが私が声に出して言う。
ただ指をくわえてじっと待つだけだなんて、そんなの私がするわけない。
悪いけどいろんなことに関して施設内1、2を争うほど私は往生際が悪いので有名なんだよ。
【やらないよりやってみろ、足掻け。】
それが子供頃からの私の座右の銘である。
彼女が彼の処置を下しているのを見て私はすぐに行動を移した。
死にそうになっている人を見て、何もせずおろおろする気なんか毛頭ない。
そんな暇があるなら自分の出来ることをする。
やらずに後悔だけはしたくないからね。
彼の傷は今は彼女に任せて、私は洞窟の外に出る。
まずは彼らの身の安全の確保からだ。絶対に追ってに見つからないようにすること。
それらが今最優先事項である。
なら、と私はゲームで培ってきた知識という名の魔法を思いつく限り使うことにした。
探索
これは私にかけておく。半径5キロ範囲なら自分以外の人種であれば生命体の動向が探れるようにしておく。これはどうやら私がこういうものに対して探索したいと思うとそれが対象になるらしい。
よし、この辺りには追ってきたような人の反応はない。
ぎりぎりあそこで魔法をかけたのがやはり良かったみたい。
時間の猶予が出来たことに少し安堵し続けて魔法を使う。
障壁
まず物理の衝撃を防ぐ魔法を洞窟一帯にかけておく。あらゆる物理攻撃つまり小から大まで防御できる。私には八角形のガラスが張り巡らされたように見えるが勿論術者本人、術者以上の実力者しかみえることはない。
術者と術者が守る者にしか出入りが出来ず対象外の人間は入ることはできない。
吸収
周りをコーティングするように緑のジェルのような膜で障壁全体に覆われる。
これはいわば毒性のある攻撃・散布された場合その毒を吸収する魔法。命の危険に伴う可能性のあるものはこの緑の幕に吸収され無害にされる。術者以上の実力者しかみえることはない。
術者と術者が守る者にしか出入りが出来ず対象外の人間は入ることはできない。
反射
今度は紫のジェルのような膜が吸収と同じように張られていく。魔法攻撃をそのままそっくり術者に返す防御魔法だ。もちろん小から大まで。
もちろん以下略。
否認
そして最後にこの場所が見つからないようにこの洞窟一帯をすっぽり隠すように展開する。これでこの場所一帯の認識を阻害する。つまり今回はここは洞窟があるという概念を抱かせないようにする。更に先ほどの様々な防御魔法もより視覚からも見せないようにもする。
ゲーム知識が役に立つなんて、ずっとしててよかったな私・・・・・。
思いつく最大級の護りを施した後私はぽつりと漏らす。
だがすぐに次の問題に気が付く。
この魔法の有効時間が全く分からない、途中で効果がなくなりもし見つかりでもすれば本末転倒である。
・・・・・・・・・・・あ。
そこで私は気が付く。
そういえば、これ私の夢じゃん。
なんでだろ。現実の風景じゃないのになんでか現実みたいで忘れるんだよね・・・・・・この前も忘れてたし。
まさか私の中で封印していたダークサイド症候群(つまり平たく言えば厨二病)がまた目覚めようとして・・・・・・・いやいやいやいや、そんなことは置いておこう。誰に見られるわけでもないけど恥ずかしいじゃん夢の中で暴走してるって・・・・・・・こほん。
気を取り直して。
私が持続時間を考えたらその通りになる—――――――よし。
魔法は必要性を感じ終わるまで魔法の継続と効果は続く!
うん、そういう事にしよう。
『ド―――――――ン!!!』
途端どこがで大きな音が聞こえ急なことにビクッとなる。
っぇえええ、今度は何?!
ビビッて後ろの方を見ればどういうわけかある一角の森では雨が勢いよく降っていた。
ゲリラ豪雨の様にも思えるけれど、こちらの山と森の間の川を目安にするように降っている場所と降ってない場所の差が激しい。
まるできっちり線引きしているような不思議な光景だ。
そんなことを考えているとまた大きな稲妻が落ちる。
ここからでもはっきり見えるなんて結構大きな稲妻である。
これもまた不思議とその森に集中して何度も稲妻が起こるので私は首を捻る。
・・・・・・・・あ。
そうか、あそこは私が魔法をかけた森だ。
不思議に思っていたが先ほど私が持続時間を言ったからあそこの魔法も継続することになったのだと理解した。
と、いうことはもしかしたらあそこには追手がいるかもしれないのか。
注意しとかないと、でもまぁ最悪私も魔法の方が得意だから遠慮なく撃退してやるけどね。
言葉は言霊って言われてるけどこう見ちゃうと言葉には力があるのねって思っちゃうなぁ・・・・あ、また雷が落ちた。あ、あっちにも・・・・も、森燃えないかな・・・・。
と、そうだ。アドルフさんのケガも診ないと。
思い出した私は彼らの元へ戻ることにした。
先ほどとそんなに状況は変わってないようで、彼女は手を休めることはなく、泣きながら治療をしているところだった。
「うっうっ・・・ごめんなさい・・・アドルフ様、ごめん、なさい。」
いやいや泣かないで、ね?まだ彼生きてるし貴女がケガさせたわけじゃないでしょ?
怪我させたのは追手の人じゃないの。貴女は被害者だよ、だからそんなに落ち込まないで・・・・・。
彼女を励ましなら傷に手をかざす。 ええっと・・・・傷を治すなら・・・あ、でもバレないように低級魔法の方が・・・・・低級・・・・いつも中級ぐらいの魔法から使うからなんて言ったっけ。
何とか魔法の名前を思い出す。
応急処置
と私がいえば、一瞬だけ傷口が光る。
やばっ!この子に気づかれる。
が、彼女は思ったより気が動転しているのか涙で見えてなかったのか気づくことなく彼の処置をし続けていて、私はほっと胸を撫でおろす。
彼女は足りなくなった水を汲みに奥にある水溜まりに走っていくのを見ながら私は彼の傷口を覗き込む。
お、よしよし少しずつ塞がっていっているね~。
少しずつだが傷口が先ほどより塞いでいるのがわかり私は安堵する。
低級魔法ではあるがある程度の回復は見込めるだろう。
本当は体力も回復させるような中級ぐらいの魔法を使いたいところだけど、急に治って驚いて警戒されても嫌だし。
戻ってきた彼女はまた薬草らしきものを袋から取り出してすり鉢で潰し始める。
その間にも彼の傷口はだんだん良くなっているのだがもちろん彼女は知らない。
まぁまだえぐれているから令嬢がじっくり見れるわけないよね?
それより彼女のすり潰しているのって薬草?だよね?どんな効果があるんだろう?
RPGでもアイテムの細かい設定まで見ないと気が済まない私は気になってその薬草らしきものをじっと見ていた。と、私はあることを閃く。
そうだ・・・・・ふふふ。なんと私の瞳に特殊能力が・・・・・それは!!
あらゆるものを見るだけで鑑定が出来る瞳、なおかつ模倣も可能!
なんか、厨2病発言でじわっと恥ずかしくなった。
思ったら負けだ私。
1人恥ずかしくそう思っていると途端に私の目の前にあった薬草の名前が頭の中で浮かび上がり、私はすぐ気にならなくった。
名前:ブレイン草(改)
すごい!!本当に鑑定できるようになった。
言葉には力が!!・・・・如何、また発言をしてしまいそうになった。
気を取り直してまた薬草を見れば更に解説文が現れた。
私はそれに目を向ける。
名前;ブレイン草(改)→傷口に塗る主流薬草。強い殺菌効果があり感染症対策に効果的。だが毒には効果がない。すり潰して出た汁と一緒に使用するのが効果的。食べれるが苦みが強い。
なんと面白い、こんなの色々調べてみたくなるじゃない。
でも、(改)ってなんだろうか?
そう思っているとまた頭で浮かびあがる。
(改)→相乗効果が期待できる技能を持つ者が物質に手を加えたもの。加工・育成に該当する。これにより一般より1.5倍の効果が発揮できる物を指す。
なるほど、彼女は医療系か薬剤に詳しい技能持ちという事だろう。
そういえば前回、あのナイスバディな令嬢が魔力やら技能やらいっていたことを思い出し私は納得する。
すり鉢でつぶしている中を覗き込む。
傷薬(改・中級効果付加)→数種類の薬草をすり潰し練り上げたもの。中級効果付加;化膿止め・解熱効果・感染症抑制の効果が期待できる。
かなりすごいんでないかい?この薬。
出来た薬を大きめのブレイン草の葉に慎重に傷薬をのせて彼の傷に貼るように乗せる。
彼女はそっと彼の手を握る。それ以上の治療は彼女にはできないのだろう、彼女はアドルフの傍から離れず彼を励まし続けた。時折苦しそうにするアドルフの額にジワリと汗がでれば彼女は甲斐甲斐しく破いた布を水に濡らし熱を冷ますようにぬぐっていく。
だが暫くして彼女もとうとう疲れがピークに達したのか次第に彼女の身体もゆっくり船を漕いでいき最初は抗っていたが次第に舟をこぐ回数も増え対にはその場にうつ伏せて眠りはじめた。
けれども彼女はアドルフの手は決して離さずに手を握っている。
そんな彼女に私は頭をなでながら、これで一先ずの危機回避できたので私は大きく息を吐いた。
ひと先ず任務完了である。
ちらりと2人を見る。
そして押し殺していた感情はとうとう爆発した。
もう!女性のこういう健気なところを見ると私キュンキュンするよう!
もうこれは2人結婚しちゃうしかないね!
自分にも余裕が出来、彼女の行動と健気な姿に愛を感じていた私は聞こえない、見えないことをいいことに2人の周りでキャーキャー言いながらくるくると回る。
暫く2人の今後の展開の妄想やら考えてはキャーキャー言っていた私だったが、っつと・・・2人を見てあることに気づいた。
流石に焚き火があるとはいえ地べたじゃ寒いよねぇ・・・・それにお腹もすいちゃうだろうし・・・・・。
着の身着のままで逃げてきた様子の2人には防寒具も食べ物もなさそうで、私はうーんと唸る。
鞄を少々拝借して鞄の中身を鑑定してみるが薬草類がほとんどで塩の小瓶に何日も経ったようなパンしかないという絶望的な所持品だった。
それに馬だって少しは休めたいよねぇ・・・・・・。
と、馬を見ると、こちらを見ているのでドキッとした。って見えてないか・・・・。だけどまぁ・・・聞いてみようか。
ふわふわと馬の顔の前まで飛んで止まる。
魔法がかかってるから追手は大丈夫だけどさ。
食べ物とか何か布の代わりになるようなものとかとってくる間2人を守ってくれるかい?
君の分の食べ物も探してみるからさぁ?いいかな?
「ヒン!」
馬が鳴いたので聞こえてないと思っていた私はびっくりして馬を見る。
馬はじっと私を見ている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
私は試しに右にふわふわ左にふわふわ飛んでみる。
馬は私の動きを追っている。
君。私が見えたり聞こえているの?
「ヒヒン!」
私が言ったことに答えるようにさっきより大きな声で鳴く。しかもちょっと胸を張ってドヤ顔してる・・・・ように見えなくもない。
私はびっくりしたがすぐに笑顔で馬を見つめてそっとその子の鼻を撫でて洞窟を後にした。
じゃぁ、留守番よろしく!!
「ずっと、見えてたんですよね。」(馬)
読んでくださいありがとうございます。次は日曜日に投稿出来るようがんばります。
(・・・・・・誤字脱字あったらごめんなさい、ちょこちょこなおしていきます。)