物語の主人公は新たな課題に頭を悩ませる。(パン職人を探せ!そして駆け落ちを阻止せよ!㊻)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は4/26(水)投稿予定です。
ティリエスと同じように、向こうのやり取りを見ていた将軍達は会話のやり取りをしたあとティリエスの方を見やる。
「ティリエス嬢、彼は何故あのように怒りを顕にしている理由が分かりますか?」
「理由ですか・・・うーんと、多分選ばれた相手が気に食わないのでしょうね。」
「?どういう意味でしょうか?」
ネルリは言葉で理解できず聞き返していると将軍が彼女の肩を軽く指で叩く。
なんだ?と彼女が将軍を見れば将軍の手にある書類を渡されたネルリがさっと目を通し、それを見て目を見開く。
「選ばれた42番隊の部下全員が盾役ですって!」
「ほほぅ、彼奴ら皆盾役じゃったのか・・・これは面白い展開じゃの。」
「そんなルドルフ様、これは彼らが負けるに違いありません。人選を見誤ったとしか言いようがないですよ。」
ネルリが呆れて言う言葉にティリエスは彼女の反応が最もだと思いながら彼らを見つめる。
騎士の称号を得た彼らは例え低い階級であったとしても基礎体力も身体能力も高い人達だ。
だがそんな彼らにも得手不得手というものがある。
多種多様な武器の扱い方だ。
故に彼らには更に選抜をされ自分の能力に見合った武器を扱い、そしてそれを己で磨いていくのだ。
だが、どの武器にも適正がないと判断される人々もいる。そう、今選ばれて舞台に立った彼らは秀でた武器扱いが出来ない、盾役として選ばれた者たちだった。
盾役は他の騎士達にとって護りにおいて右に出るものはいない重要な場所でもあるが、騎士達にとっては劣等感に苛まれることもあるらしい。
故に今彼処に立つ彼らの事を異質に見え相手は侮辱と見なされたと思い込んだろう。
まぁ、実際怒り心頭しているのはゾルだけで後ろの部下はなんだか勝ち誇った顔が見えたのできっと彼らにとってラッキーぐらいな気持ちでいるんだろうけど。
そんな気持ちでいたら後で痛い思いをするのにとティリエスが内心思いつつお祖父様の方を見た。
「でもそうか、盾役じゃったか・・・成程のぉ。」
「ルドルフ様は何か気になることでも?」
「気になるということでもないんじゃが、実はの儂も孫娘が任された部隊がどんなものかちょくちょく見学させてもらっていたんじゃがな。何、見学といっても軽く打ち合い程度しかしとらんよ。」
お祖父様、あれが軽く打ち合いなら本気はどんだけ恐ろしいんですか?
祖父のここ最近の思い出話しに相槌を打ちながらティリエスは内心突っ込んでいたが、それを知らないルドルフは話しを進める。
「その時、彼奴らとも打ち合いをしたことがあったんじゃが・・・盾役とは思えんかったのぉ。」
これにはどういうことだとルドルフもティリエスの方を見やる。
その視線に気がついたティリエスは試合の準備が着々と行われているのを見つつ口を開く。
「確かに彼らは盾役でした。正直言いますと最初は他の方達より劣っていましたよ素人目の私でもわかるほど間違いなく。しかし、彼らはずっと努力し続けていました。私に出会うまで訓練を怠らず、必死に。」
仲間内で盾以外の武器が扱いが下手ということを揶揄われながら、騎士を辞めず黙々と鍛錬を行なっていた彼らは他の騎士とよりも鍛えられていた。
「元々、鍛えられていましたから教えたらすぐに彼らは上達しましたよ。それこそ、お祖父様と打ち合えるほどに。」
ティリエスがそう言った次の瞬間、試合の開始合図とともに金属の割れる音が響き渡る。
そこには数メートル飛ばされ地に伏せるゾルの部下と彼に向けて剣を構えているダイナの部下が立っていた。
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