物語の主人公は新たな課題に頭を悩ませる。(パン職人を探せ!そして駆け落ちを阻止せよ!㊸)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は4/19(水)投稿予定です。
「貴方はあの時の方ですね。またお会いするとは思っていませんでした。それで、離宮へやってきたのはどういう用件?」
ティリエスの滅多に言わない冷たい物言いに、彼女の事を少なからず知っているレイ以外の者達に緊張が走るが、目の前の騎士やその周りの騎士達はその事に気が付かず、形だけの挨拶をする。
「これはこれは公女様、申し訳ありません急なご訪問。それとご挨拶が遅れましたな。私は第4部隊隊長を努めております。ゾル=ドライと言います。私の後ろに控えているのは私の直属の部下達です。」
なるほど・・・彼らはこの人の取り巻きか。嫌な顔してるわー全員。
頼んでもいないのに紹介してきた彼にティリエスは返事をせず黙っていると彼は特に気にせず話し続ける。
「実はここの部隊の事について相談をしに来たのです。」
「相談?」
「えぇ、聞けば少し前。貴女はこの者達の無礼な振る舞いに罰をお与えになったと伺っていましたがねぇ・・・しかし、実際蓋をあけるとどうでしょう?全くこの者らに罰という罰をお与えになっていない!」
なんだか大袈裟に言うな・・・ちゃっちゃと話ししてほしいんだけど。
彼は大袈裟に身振り手振りを加えて話すその様にティリエスが珍しく苛立つ心をなんとか沈める。
「ですのでそいつらにはそれ相応の罰を再度おあたえるべきです!」
「罰を・・・と言われますが、そもそもその基準必要でしょうか?」
気持ちよく話していたゾルに対し水を差す口出しをしたティリエスに対しピクリと眉がほんの少し動く。
「それはどういう意味でしょうか?」
「この方達の件は騎士として違反に反しておらず、私を待たせた件では最初に誠心誠意の謝罪を受けました。加えて、貴方方がどう思われようが私が思う罰をこの方達は甘んじて受けています。これ以上何をさせろと貴方は言うのです?」
ティリエスの言葉の返しにゾルの部下達は怖気づくがゾルだけは苛立ちを見せ、彼女の言葉に納得していない顔をした。
いや、その顔私がしたいわ。なんでそんなにやっかみ?
「公女様、貴女は何もわかっていない。騎士は騎士のルールがあるんですよ。それを失礼ですが貴女は貴女の概念で申されている。ですから・・・そこの隊はまだ罰を受けていないといっても過言ではない。さらに言えば、そこにいる42番隊の奴らは騎士としての実績も大きな成果も上げていない部署だ。だから彼らには雑務が当てられている、それもしていない状態なのに加え公女様が考えた罰は軽いものという事実。そうなるとね他の隊の士気も下がるんですよ騎士全体のね。まぁ、きたの公女様は騎士の内情など知らないでしょうから仕方無いのかもしれませんがね。」
「お前・・・いい加減にしろよ!」
とうとう我慢しきれなかったダイナがドスの効いた声でゾルに食ってかかる。
周りの部下もまた彼と同じ顔をして彼らを睨んでいた。
「何が実績だ!お前達が我々の鍛錬を邪魔をし雑用を押し付けてくるからだろうが!積もうにもその時間をとられその上毎回毎回言われの無いことで騒ぎ立てる!何が貴族だ!階級だ!お前達こそ騎士ではない!ただの名をかざして威張り腐っているごろつき共と一緒だ!」
「・・・なんだと?平民部勢が貴様もう一度言ってみろ!」
ゾルもまた今の言葉で怒りの形相になり言い返す。隊長同士の言い争いに部下達も睨み合いを起こし始め一触即発の雰囲気になった・・・その時だった。
「なんだね?孫がいるのに誰がそんな殺気を出しているんだ?」
「あ、お祖父様!・・・と。」
帰ってきた祖父であるルドルフの姿を見てティリエスが振り返るともう2人いることに気がつく。
1人は物腰優しそうな立派な隊服着ている女性に・・・仮面をつけている隊服の男性がそこにいた。
え・・・誰?
ティリエスは思わず食い入るように仮面の男を見たのだった。
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