物語の主人公は新たな課題に頭を悩ませる。(パン職人を探せ!そして駆け落ちを阻止せよ!㊶)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は4/14(金)投稿予定です。
孫の様子に少し苦笑を漏らしながらも、祖母であるメイサはその時のことを思い出しながら話し出した。
とりあえず質問よりも聞く方が良いと判断したティリエスは黙ったまま祖母の話しに耳を傾けた。
祖母の話しはこうだ。
祖母は私がここへ来る前からよく散策に行くらしい。それは今でも続いていて、時間を見つけては付き人兼護衛としてレッドとブルー、そして今は眠って起きる気配のないホルアクティと共に散策に出かけるのだという。
場所や時間は日によって様々だ。
城内、街、そして偶に都市に屋敷や別邸を構えている友人達に会いに行く。
多忙な祖母のちょっとした息抜き、別になんてことのない事だ。
でも、その祖母の言うちょっと不思議な事というのはその散策の時に突然起こったのだという。
何処かの友人宅から馬車での帰宅途中。
突然レッドとブルーが何かを感じ取ったのだという。
その何かというのは本人達に聞いてもよくわからないのだそうだが、とにかく自分達の近くで何かの存在を感じとり、それが何なのか探ろうとしたのだが直ぐに気配が消えたらしいのだ。
双子が気になるので祖母は翌日以降同じ時間、同じ場所へ行ってみたがその気配を感じることはなかったという。
けれどそれから暫くして、またその気配を感じ始めたのだ。彼女達が行く先々で、しかも場所や時間もバラバラなのだという。
「私やホルちゃんにはその気配は感じないんだけど、でもこう何度もあの子達が感じ取るなんてただの勘違いとは違うと思うし。それでティリーちゃんの考えやアドバイスをもらえたらと思って。」
ほら、ティリーちゃんの機転でこの子達を出逢わせてくれたし・・・と言葉を続けて言う祖母にティリエスは成る程と頷く。
でも、お祖母様。それは私がただ分かっていただけなんですけどね。
それはそうと妙な気配、ねぇ?
ティリエスはうーんと少し考えたあと双子の方を振り向く。
「ねぇブルーにレッド。その気配というのはどんな感じに思えたんですか?」
「「・・・・・・・・。」」
おいコラ、何が不満か知らんが返事しろよ。
こっちを見て不満げな様子の2人にティリエスは思わずため息が出そうになる。
「貴女達、いい加減にしないと私も怒りますわよ?」
見兼ねてかメイサはピシャリとそう言うと、双子は弾かれたようにメイサの膝元へ詰め寄った。
「ごめんなさい!マスターメイサ!だってマスターとられて嫌だったんだ!ねぇレッド?」
「ごめんなさい!マスターメイサ!だってあんなに楽しそうにされると悲しかったの!」
うるうると涙を浮かべて懇願する2人にメイサは小さく苦笑を浮べ左右の手それぞれで彼女達の頭を撫でる。
「そうだとしても、ちゃんと返事はしないと。それに私は貴女達を蔑ろにするはずないじゃないの?」
そう言ったメイサは自分達のテーブルに視線をやる。そこには手のついたカップが2つに手のついていないカップが2つそこにあった。
その事に双子は気まずい様子を見せる。
「孫に何か言うことがあるんじゃなくて?」
「「・・・ごめんなさい。」」
しおらしく謝罪する割にはお祖母様の見えない所で威嚇はしてるんだよね・・・うんまぁ、謝ってもらったから別に良いけど。
2人の謝罪を受けつつ、流石お祖母様と感心していると私のカップにレイが新しいお茶を注いだ。
「ありがとうレイ。・・・それでもう一度聞くけど、その、気配というのはどんなものなの?」
「・・・一瞬だからあんまり掴めていないけど、嫌な感じじゃないよね?レッド。」
「そうね、嫌じゃないわブルー。でも分からない気配をちょくちょく感じるのは嫌だわ。」
ふうむ・・・敵意はないけど知らない人の気配、ということだろうか・・・え、何ストーカー?
ティリエスはある可能性を思ったがすぐにそれを否定する。
「そうですね・・・なんとも言えませんが、この子達は私たちや霊獣とも違う存在なので、何かを感じることができた・・・と思うべきですかね?」
それは私でも今の段階では判断できませんが・・・とお茶を一口のみ2人を見る。
「気配を感じるのは少々気が落ち着かないでしょうが、ここは様子を見るしかありませんわね。」
「・・・・分かったよマスターの孫。」
「そうね、それしかないわよねマスターの孫。」
怒られそうになったのが効いたのかそれとも正体不明の気配に不安になっているのか素直な2人を見てティリエスはあることを思い出し口を開く。
「お祖母様、それとブルーとレッドも。実は今度パン職人を目指している方の試食会を開く予定ですの。気晴らしにもしよければ来ませんか?美味しさは保証しますわ。」
「あら、あの例のパン屋の事ね!えぇ勿論ぜひ行くわ!」
「マスターが行くなら行くよ!ねぇレッド?」
「えぇ!一緒に行くわよブルー!」
色良い3人の返事にティリエスは満足したのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。




