物語の主人公は新たな課題に頭を悩ませる。(パン職人を探せ!そして駆け落ちを阻止せよ!㊴)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は4/10(月)投稿予定です。
「・・・え?」
「え?」
質問した途端、余程何かに驚いたのか男が顔を上げたのでティリエスはその男のターコイズの瞳と目が合う。
うわ・・・・顔を上げたらまさかの顔がイケメンで綺麗な人だった。女の人・・・?いや、男の人だよね?肌白〜・・・。
それくらい綺麗な顔立ちの青年にティリエスは思わず目をぱちくりさせていると、青年はゆっくりと俯く。
「そっかー・・・誰もボクの事知っていると思っていた自分の思い込みが恥ずかしいわー・・・なんか皆さんごめんなさい、うわホントこんなボクでごめんなさい。」
「早口で何か言ってますけど、この方大丈夫何でしょうかねぇ?お嬢様。」
いや、レイ私に振られても困るんだけど?
見るからに落ち込んで何かブツブツと小さな声で呟く青年に対しティリエスはどうしたもんかと頭を悩ませる。
何だか面倒な人みたいだしここはさっさとお暇したほうが良いよね?
「・・・どうせ、そろそろ面倒臭いな何この人変な人とか思い始めて離れていくんだろ?いいよ、何時ものパターン知ってるしもう慣れてるし。」
なんて思ってたらまさかの去りにくい事言いやがったよこの人。
意図してなのかそうでないのか不明だがここから去る退路を断たれたティリエスは内心ギクリと心臓がはねたが、観念してその場に座り直した。
そんなティリエスをちらりと見た青年はまた膝を抱える。
「あんた良い子だね、ボクの部下でさえ面倒臭がってスルーするのに。いつもこうだから気にしなくてもいいよ、なんかどっか行くんでしょ?」
へぇーこの人部下持ちの人なんだ、若いからそんなふうには見えないな・・・なんでか早口で小さい声では話すけど、なんならワンフレーズで話すほどだけど。
何処かの役職ではどうやら部下を持つお偉いさんだと理解し、人は見かけによらないなと思いつつティリエスは首を横に振る。
「確かに向かう予定はありますが少し時間はあります。」
「本当に良い子だねやだ崇めそう黒髪なだけに。」
「あ、崇め??」
何だか前の世界で言うとオタクみたいなノリだな、この人・・・ん?黒髪??
「失礼ですが、貴方も黒髪ですけど・・・黒髪だから崇めたいという「そう、そうなんだよ!黒髪!ボクの髪は本当は眼の色と同じなんだけどね、ボクの尊敬する人が黒髪なんだ!ボクの人生、生き様、何より誰より尊敬するあの人にボクは少しでも近づきたくて毎日己を鍛え髪も染めてみたんだよね!どう?似合うかな?部下には頭おかしいと言われたけどボクはとてもこれには満足しているんだよ!」・・・・はぁ、まぁ似合っているかどうかといえば似合っていると思いま「本当!何この子本当に良い子すぎるんだけど。何?ボクの為に舞い降りた天使なの君?「なんだこいつ。」」レイやめて・・・いや、真顔で言われましても私はただの人ですわ。」
・・・え?何急に。あとレイ、急に何?キレるの辞めてください、・・・・・・この人一体・・・え?
急にマシンガントークを繰り広げる目の前の青年に対しティリエスは戸惑いながらも返事をしていたがなおも彼の暴走は止まらない。
あっけに取られていると不意にトントンと肩を軽く叩かれる気配がして振り向けばレイがそこにいた。
「なんだか危ない人間みたいですし関わる方が危険ですね、そろそろ行きましょうかお嬢様。」
やんわり言ってるけど・・・レイ容赦ないな。
「ーーーーーーあぁ、あの時の拳の振り上げた時のあの肉体美といったら・・・あぁ手合わせしたい。今度いつ会えるかなぁアドルフ様。」
「え?」
ここで自分の父の名前が耳に入りティリエスは青年へ顔を向ける。
「もしかして、北の公爵の?」
「うん、そうだよ。彼ほど素晴らしい人はいないよ。」
「・・・・・・・・・・・。」
うん・・・そろそろお暇しましょうか?
父を絶賛してくれるのは嬉しいが自分の父親だと分かればこの青年の事だ、何が起きるかわからないと判断したティリエスはそろそろと立ち上がる。
「もう行かなくてはいけませんので、ではここで。」
「あ、待って。」
げ、呼び止められた。
「何でしょうか?」
「名前教えてよ、ボクはアレスって言うんだ。」
「・・・ティリエスですわ。」
「ティリエスか・・・。」
ティリエスは名前を言って去り、去った後もアレスはその場に居たまま彼女の名前を口にする。
「良い子だったなぁ・・・しかもなんだかあの人に似てたし。あ、ボクもそろそろ行かないと部下に怒られるな。」
よいしょっと立ち上がると一度伸びをする。
「じゃぁ、行こうか。今日は気分が良いし書類捗りそう。」
そう言ってアレスは鼻歌混じりでティリエスとは逆の道を歩いていった。
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