物語の主人公は新たな課題に頭を悩ませる。(パン職人を探せ!そして駆け落ちを阻止せよ!⑲)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は2/20(月)投稿予定です。すみません、今日は短めです。
「・・・あーくそっ、これで最後だ!」
投げやりに言い放ったニルアルは手に持っていた物を投げ捨てるように目の前の山盛りに盛られた物の上にそれを置いた。
そこには光沢のあるつるりとした白い平べったい丸い代物で、彼が最後に投げ入れたものも同じものだ。
それらの内の一つをティリエスがソファで天を仰いで疲れてへばっている彼そっちのけで摘みしげしげと見た後、控えていたシナウスへと渡し鑑定をしてもらう。
暫く真剣にそれを眺めた後、にっこりと満足そうに微笑みを浮かべた。
「流石ニルアル様です。これも程よく魔力が注ぎ込まれています。」
そう言ってシナウスはそれを両手で摘み左右に引っ張るとまるで餅のようにみょーんと伸びたそれを見てニルアルは疲れ天を仰いだまま右手を上げガッツポーズを上げたがすぐにへなへなと上げたてが降ろされぐったりとしたままだった。
そんな彼にティリエスがレイの方を見ると、レイは彼の机の前にお茶菓子を置いているのが見えた。
「言っとくけど、もうこれ以上何かしろって言われても出来ないからな。」
「えぇ分かっています。けどこれだけあれば十分だと思いますよ。」
「じゃなかったら俺が困るわ!本当どうすんだよこの山盛りのスライムの粘膜!」
そう、彼に頼んだのはスライムの粘膜の加工だった。
魔物であるスライムは殆ど無害でなんなら目も見えていないので子供が平気で近づいて木の棒で叩いても倒せる存在である。
そして魔物も他の動物同様死体になるとこうして素材として扱われるのだが、そのスライムの粘膜は周りの魔素を感知できる、だから目がなくてもスライムは今何処にいるのか自分の居場所を把握てできているらしい。
その物質を通して物をみる。
まさしくその性質はエヴァイスの眼に必要な要素をではないかと資料を見ながら確信していたティリエスは早速このスライムの粘膜を利用することを決めたのだ。
でもこれにも厄介な性質がもう一つあり、粘膜は確かに魔素を問題なく通す代物ではあるが一気に強い魔力を流してしまうと一気に硬い石並みに硬化してしまうのでニルアルにはゆっくり長い時間をかけて魔力を流してもらってある程度の柔らかさは保ちつつ硬度もある代物へ加工してもらった。
しかし、いかんせん根気のいる作業となり今こうしてニルアルはこうして力尽きている、というわけだ。
まぁ、私もできるんだけどね。ほら、まだ魔力操作できないことになってるので私。
などと言い訳をしているとこちらをジト目で見ているニルアルと目が合う。
「お前・・・本当は加工出来たんじゃないのか?」
その言葉にキョトンとする。
「まさか!そんな事できるわけないですよ!」
しれっとそのまま嘘を言ってその場を誤魔化す。
まぁ、誰かが不幸になるわけではないけど、最近こういう嘘ついても罪悪感なくなってきたな・・・慣れって恐ろしいな・・・うん、慣れすぎないようにしないとね。
いつも読んでいただきありがとうございます。