物語の主人公は新たな課題に頭を悩ませる。(パン職人を探せ!そして駆け落ちを阻止せよ!⑯)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は2/13(月)投稿予定です。
や・・・・・。
ヤッバイー!まさかの身内に身バレそうになる案件が浮上するとは!!
ニルアルの言葉にショックを受けたティリエスは難しい顔をして黙ったままこの場をどう切り抜けようか頭をぐるぐる思考を巡らす。
今までの発明してきた物の事を考えると私という存在は変に浮き出る、それは当人である私自身がよく分かっている。
だから、様々な分野で逸材した大人達をカモフラージュにして自分はその影に隠れてきたというのに・・・ヤバい、このままじゃ面倒なことになりかねない、どうしよう・・・いっその事忘却関係の魔法かけてみる?精神魔法って何処まで効いちゃうのか怖くて使うの躊躇ってたけど、ここで躊躇って自分が危うい立場になるのはもっと困るし。
でも大叔父様にも魔法かぁ~・・・跳ね返されそう。
「ディオス様を責めないてくれ。俺が勝手にしたことなんだ。」
ん?
ずっと難しい顔をしたまま黙りこくっていたティリエスの耳に届いた言葉に我に返る。
するとそこには、緊張した面持ちでこちらの様子を伺うニルアルと目が合う。
どうやら、自分が黙ったままの姿が彼にとって大叔父に対し許せない様に見えたようだ。
・・・え?全然そんな風に思ってなかったんだけどな。そんなに怖い顔してたの?・・・怖い顔をしていないと思いたい。
別の事でショックがっているとシナウスが名前を呼ぶ声が聞こえたのでそちらを見る。
彼はそれ以上何も言わずにこちらを意味ありげに見ていた。
分かってますわよ、どうするのか考えてますって。
まぁ、正直大叔父様達のやりとりをみてアイデアはあるといえばあるけど・・・ここで目立つことは避けたいんだよなぁ、その考えに行き着かない時はあとでこっそりそれとなく伝えるだけにしようと思っていたところだったし。
視線で何を言いたいのか汲み取るとニルアルを再度見る。
私に対して脅しではなく下手に出ているこの状況を利用させて頂こう。
「仮にですが、もしその方法を知っていているとしたら、貴方は何を私にしてくださるのでしょうか?慈善事業をしているわけではありませんのでそれ相応の提案をして頂かないと、私は動くことはありませんよ?」
その言葉にグッとニルアルは何かを我慢するように唇を噛み俯く。
・・・なんか、さっきのセリフ悪役っぽかったな。
ティリエスがそう思ったのと同時にシナウスが小さくため息したのが聞こえたが気にしないでおいた。
「・・・・なら、俺はあんたの奴隷になる。」
顔を上げてニルアルは言葉を続ける。
「あんたが何かを欲しいというなら作ってでも差し出す。あんたが誰かを殺したいと望むなら、その人間を俺が代わりに殺す。あんたの命令には絶対に服従する、死ねと言えば死ぬ、だから!・・・頼む、あいつの見えるものがより見える眼を作ってやってほしい。あいつには幸せになって欲しいんだ、いつ死んでもいいという環境の中にいたあの頃、俺を背負って歩いてくれた弟を・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
やばいな・・・悪役っぽいことを言ったせいなのか重い提案してきたぞ・・・マジか。
ティリエスは彼が言った内容に頬が引き攣るのが分かった。
早急に訂正をしようと口を開こうとしたが、パチパチと何処からか拍手が聞こえてきた。
バッとそちらを見ればいつの間にか入ってきたレイがこちらに向かいながら拍手をしていた。
・・・いや、貴方今日用事で来れないって言ってなかった??
「素晴らしいですねぇ。その決意、大丈夫ですよぉ。お嬢様はそんな貴方の決意を無碍にされるお方ではない。」
げ、なんか言い始めたぞ。
「本当か?」
「えぇ、勿論。何も言わないのはきっと今どのようにことを進めるのか算段しているのでしょう。ねぇ?お嬢様。」
レイコラ待て、私そんなことこれっぽっちも考えてないんだが??っていうか訂正できないだろうそんなことを言ったら!ほら!もうこっちを期待の目で見てるじゃんか!断れない感じになってるし!
ティリエスは難しい顔をしながらそんなことを思っているとシナウスの視線を感じそちらを見る。
かわいそうだと言わんばかりの視線にティリエスは思わず唸った。
「・・・・・わかりました。そこまで言うなら、ただし!奴隷は私には必要ありませんわ!」
はっきりと断られたニルアルが焦る。
「では俺は何をすれば。」
「決まっていますわ。」
そんな彼にティリエスはフンッと鼻息を鳴らす。
「それが出来るまで私という存在が霞んでしまうほど貴方には表立って協力してもらう、それだけですわ。シナウス。」
「はい。」
「早速だけど彼と協力して材料の資料を探してください。」
「畏まりました、お嬢様。」
「レイ。」
「なんでしょうお嬢様。」
「大叔父様と今後について話しをしますからついてきてください。それと当分貴方には私と行動してもらいますから。」
「フフ、畏まりました。」
ティリエスはそう言うとレイとともに部屋から出ていく。
そんな2人を見送ったニルアルにシナウスはポツリと漏らした。
「貴方運が良かったですね。」
「え?」
「あんなことを言っていましたけどお嬢様は最終的にはシラを切って断るつもりだったんでしょう・・・けど、レイさんの後押しで断れない状況を作り出したんですから。」
「あの男はどうしてそこまで?」
「・・・まぁ、僕がどう思っていようとかなり嫉妬深い方なのであの人はそうなるよう仕向けただけですよ。」
振り返りざまにご満悦な彼の姿を思い出しシナウスは苦笑いを浮かべた。
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